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    ナナ氏

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    ナナ氏

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    【ととモノ3D】仲の悪いノームとフェアリーがパワー系女子たちに振り回されるお話

    新たなる犬猿 モーディアル学園廊下。窓から見える空は嫉妬するほどの快晴でした。
    「でもって! 飲まれちまった俺は諦めずに魔法と魔法の狂喜乱舞ってワケ!」
    「そーゆー感じの昔話があったわね」
     フェアリーのオズと黒羽セレスティアのリーヤが話しながら歩き、
    「今日の放課後は何して遊っかー?」
    「蝶の観察とかしたいかも」
     ノームのスイミーとバハムーンのことりが子供のような無邪な予定を話しながら歩き、
     廊下のど真ん中でばったりと、出会ってしまいました。
    「……」
    「……」
     お互いを見た途端に固まるオズとスイミーでしたが、
    「あら」
    「やっほう」
     リーヤは軽く声を上げ、ことりはフレンドリーに手を振ってご挨拶。
     そして、精霊と妖精は、互いを睨み、
    「あれぇ〜? なんかデカいショウジョウバエが飛んでるぅ〜? デカすぎて僕こわ〜い!」
    「ん〜? 土くれ土人形が何かほざいてるなぁ〜? 俺ほど賢くても何を言ってるのかゼンゼンワカラナイぞぉ〜?」
     お互いを煽り始めました。なかなか他人に見せない凶悪な顔つきで。
    「あ! 間違えた〜! ショウジョウバエじゃなくってただのコバエだった〜! 粘着テープと砂糖水を仕込んでおいたら勝手に死ぬかなぁ〜? これからの時期は増えてくんだから対策は早めにとっとかないとだしぃ〜?」
    「土くれは土くれらしくさっさと大地に還ればぁ〜? この星の自然サイクルに紛れておく方が幸せでしょぉ〜? あ! もしかして自然に還れないほど肉体も魂も汚れてらっしゃる? あらあら大変ねぇ〜帰る場所がなかったらどこに行ってどうなるのカシラぁ?」
    「あぁ? なんだよトコジラミ」
    「はぁ? なんだよってなんだよ汚泥」
     煽りと睨みがピークを迎え、次の瞬間には手というか魔法が出そうになった刹那、
    「やめなさいみっともない」
    「ぐえ!」
     リーヤはオズの体を掴んで、
    「悪口はダメだよ」
    「痛い痛い痛い!」
     ことりはスイミーの腕を掴んで捻りました。
     パワー系女子たちの力技により口喧嘩は強制終了を遂げ、しっかり制裁された二人は床に膝をついて肩で息を繰り返すのでした。
    「ぜえぜえ……あ、圧死するかと思った……」
    「う、腕が捻じ切られるかと思った……」
     今にも死にそうな顔色の二人。体力と防御がないのは種族的な宿命ですね。
    「自業自得よ」
    「いじわるはダメだよ」
     腕を組んで呆れ顔のリーヤにいつも通りのことり、二人は床に這う犬猿二人をちょっとだけ冷たい目線で眺めていました。
     先に立ち上がったのはスイミーで、
    「ひどいよことりちゃん……ルンルンちゃんとバムくんの喧嘩は止めようとしないのに、僕の時は遠慮容赦手加減ゼロだなんて……」
     捨てられた子犬のような視線を向けますが、ことりは表情筋を一切動かさずに答えます。
    「ルンルンちゃんに“バムとの戦いは幼い頃より続けてきた歴史ある聖戦。長年決着がつかない分、互いの力量は心得ていますし間違えることはありません。なので手出し無用でお願いします”ってお願いされてるから」
    「ルンルンちゃんたちの意志を尊重してるってことね! ことりちゃんは優しいなあ! じゃあ僕とコレの戦いも見守るに徹してほしいんだけどなあ!」
    「やだ」
     即答したことでスイミーは再び項垂れました。
     すると、ふらふらと飛び上がったオズはリーヤの顔の近くまで来ると、疲労困憊した表情を向けます。
    「リーヤの姐御も止めなくてよかったんすよ……? 俺、絶対に勝って帰る自信しかないんで」
    「あんなアホな言い合いの関係者だと思われたくないもの」
     即答されたことでオズはがっくりと項垂れました。
     冷たい視線を送り続けるリーヤは、淡々と尋ねます。
    「オズはどうして彼のことが嫌いなのかしら」
     疑問を投げた刹那、オズもスイミーも顔を上げて互いに嫌いな相手を指し、
    「一目見た時から波長が合わないと確信したから」
     一言一句、声のトーンやイントネーションまでもが一致した見事なハモリでした。リーヤは無言でした。
    「ルンルンちゃんとバムくんと同じだね」
     ことりからは簡単な感想。そちらには興味が惹かれたのかリーヤの視線はことりへ向きます。
    「そうなの? 似た現象が近くにあるなんて驚きね」
    「そうらしいよ。一目会った瞬間からコイツとは分かり合えないと思ったって、二人ともそう言ってた」
    「本能的な直感が鋭いのね……私は破壊神様に初めてお会いした時は何かしらの忠誠や信仰なんて感じなかったものだけど……どこで差がついたのかしら」
    「はかいしん」
     聞き慣れない単語にことりが首を傾げて、
    「姐御の性格を考えたら、信仰とか他者を敬うとかは最初から搭載されてないような気ぃすっけどな〜」
     軽い口ぶりでオズが言い終わった刹那、リーヤは両手でオズの両羽を掴むと左右に引っ張り始めました。
    「あだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!」
     自分の体から生えているモノが引っ張られるのですから激痛に決まっています。悲鳴を上げるオズをスイミーはニヤニヤしながら眺めるだけ。
    「ザマァ〜♪ いいもの見れたし、さっさと行こっかことりちゃん」
     上機嫌で促すものの、ことりの視線は友達のスイミーではなく、妖精に暴力を与え続けているリーヤに向きっぱなしで。
    「リーヤちゃんがよく言っている“はかいしん”ってなに?」
     純粋な疑問を投げると、リーヤはオズの羽を引っ張ったまま、彼の悲鳴を効果音にして答えてくれます。
    「私が崇拝する素晴らしい神のことよ。何かを壊すこと汚すこと消滅させること……破壊に纏わる全ての物事に関して右に出る神なんて存在しないの。地上で這う生き物なんてあの方の力の前には、風に煽られて飛んでいくような綿埃も同然なんだから」
    「すごい」
     ことり即答。心なしかその目は宝石のように輝いており彼女の興味関心がぐんぐん急上昇していることを物語っていました。
     一人の少女に関心を持たれたことに気付いたのか、リーヤは少しだけ微笑みを浮かべて、
    「アナタ、破壊神様に興味があるなんて見どころがあるわね」
    「そうかな?」
    「勿論よ。愚かなことに世の中のほとんどの生き物は破壊ではなく創造の力に惹かれて崇拝するの。生み出すことを悪とは断言しないけど、産み出すことだけを求め続けるなんて世界のバランスってものがわかってない無知を丸出しにしているようなものよ。破壊があってこそ世界というものは形を保っているというのに、誰もそれを理解しようとしないの。思考の放棄もいいところだわ」
    「壮大なスケールのお話なんだね」
    「アナタたちにとっては壮大なのかもね」
     と、楽しげに語らっていますが完全に放置されているスイミーがひとり。
    「え、えっと、ことりちゃん? もう行こうよ? 蝶の観察するんでしょ? ね?」
     顔を引き攣らせながら腕を引っ張りますがことりは聞いちゃいません。
    「リーヤちゃんは私の知らない世界を知っているんだね」
    「ええ……そうだわ、ことり。アナタはなかなか話が分かる人と見たわ。今から時間あるかしら? 私は今機嫌がいいから、破壊神様の素晴らしさについて余すことなく語ってあげてもいいわよ」
     丁寧かつ若干上から目線のお誘いですがことりは気にせず首を縦に振りました。
    「じゃあ、行こっかな」
    「ことりちゃん?」
    「スイミーくんはお留守番ね」
    「ことりちゃん!?」
     スイミー絶叫。ことりは振り向きざまに彼に言います。
    「だって、スイミーくんは神様キライでしょ?」
    「クソ喰らえだと思ってるよ!」
    「じゃあダメだね」
     縋る隙もなく断言されてしまいスイミー愕然。石化してしまったかのように固まってしまいました。
     嫌いな相手の無様な姿を見て楽しまないオズではなく、クスクスと笑いながら、
    「うぷぷ……フラれてやーんの」
     なんて調子よく言った矢先、
    「オズ邪魔」
     リーヤにぽいっと投げ捨てられてしまいました。
     空を飛べる妖精なので地面に落ちることはなく空中で止まりましたが、オズは恐る恐る振り返ってリーヤを見ます。顔を引き攣らせながら。
    「……え? あ、姐御? なんで」
    「だってアナタ、破壊神様の話は基本聞き流すじゃないの」
    「何度も同じ話を繰り返し聞かされてたらそりゃあ」
    「じゃあいらない」
     弁解の余地もなく断言されてしまいオズ唖然。口をあんぐり開けたまま固まってしまいました。
     二人の男を切り捨てたパワー系女子二人は、さっさと背を向けて進み始めます。
    「じゃあ行こっかリーヤちゃん、どこで話そっか」
    「購買部がいいわ。焼きそばパンでも食べながら語りましょう」
    「リーヤちゃんは本当に焼きそばパンが好きだね」
    「あれは至高の食べ物よ。いつか破壊神様にも食べてもらいたいわ」
    「そっか」
    「常々気になっていたけど、なんで“ことり”って名前なのよアナタ。大鳥じゃない」
    「産まれた時は未熟児だったんだって。それでおじいちゃんが名付けたってお父さんが言ってた」
    「私も人のことは言えないけど、アナタの祖父も大概なネーミングセンスをしてるわね」
    「そうかも」
     なんて話しながら立ち去っていく二人を、スイミーもオズも止めることができません。ただ、立ち尽くしたまま見守ることしか、できませんでした。
    「…………」
    「…………」
     脱力し切った顔で互いを見合わせた二人は罵り合いを起こす気にもなれず、いつの間にか二人並んで壁に背を預けて座り込んでしまいます。
    「あれ、何なのです?」
    「女に捨てられた男共」
     一部始終を見ていたネネイとバムにも見捨てられ。
     やがて、夕方になって空が赤く染まってもぴくりとも動かない二人は、消灯時間寸前になるまでそこで一緒に落ち込んでいたのでした。
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