別にそういう気があった訳じゃなくて。
ただ、横顔を見つめていたら、視線に気づかれて。 どーしたよ?って、照れくさそうに笑う顔が、愛おしくて。
「……」
「…めるめる、」
そのまま重なってきた影に、抗わずに瞼を下ろす。優しく触れる唇が好きだ。髪を撫でながらされるキス。優しくてくすぐったい。
「ふふ、……ものたんねぇ?」
「……」
いつもなら何も言わずに、このまま深く混じり合うのに。数時間ぶりに触れ合わせた唇が、野暮な質問を投げかけてくるから。
強く抱き寄せて、耳元に頬を寄せる。絶対に顔を見られないように。
「 」
彼に、…燐音にしか聞こえない声で囁いて、ちゅ、とリップ音を立てれば、そのまま乱暴に唇に噛みつかれた。苦しいけれど、この激しさも、のしかかられる重さも気持ちがいい。
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