運命って二度もあると思う?「運命って、二度もあると思う?」
エグザべはその問いに少しだけ驚いて、目を見開いた。
静かな部屋の中、ふたりきりの時間がゆっくりと流れていく。
「運命が、二度も? なんて⋯⋯」
彼の目をじっと見つめながら、エグザべは考えた。
そう、ふたりはそっくりだ。顔も名前も、同じように感じる。
でも、どうしてだろう。何かが違う。心が響き合うような感覚。
「でも、もし二度目があるなら、君に会えてよかった」
ぽん、と軽く笑ったその顔が、ますます自分と似ているように感じた。
エグザべはふわりと息を吐くと、心が温かくなる。
「僕も、君に会えてよかった。だって、君がいないと、こうして一緒にいる意味もわからないし⋯⋯」
言いながら、エグザべはそっと手を差し出した。
彼の手は少し躊躇ったけれど、やがてゆっくりと重なった。
「こうして、君の手を握っていると、まるでずっと前から一緒だったみたいな気がして」
「そうだね……」
その手が絡むと、もう一人のエグザべも心地よさそうに目を閉じる。
手のひらを重ね、指を絡ませると、どこか懐かしささえ感じる。
「ねえ、君の手、すごく温かい。僕も、君の温もりを感じていると、安心するんだ」
エグザべは、静かに微笑んだ。
そして、手を握ったまま、彼の顔に少しずつ顔を近づけた。
「運命があるなら、今こうしている時間こそが、その一部だと思う。君とこうして、触れ合って、分かり合えることが……すごく幸せだよ」
ふたりの目が合ったまま、ほんの一瞬、時間が止まったかのようだった。
「運命が二度もあってよかったって、心から思う」
それを聞いたエグザべは、そっと彼の額にキスをした。
その優しいキスが、ふたりの心を繋いだ瞬間のようだった。
「……ありがとう、君に会えて」
「僕も、君に出会えて本当に嬉しい」
その言葉を信じるように、エグザべは再び顔を近づけ、今度はじっくりと唇を重ねた。
優しく、そして長く。お互いの存在を確かめるように。まるで、何度でも繰り返したくなるようなキスだった。
唇が離れると、エグザべは恥ずかしそうに頬を赤らめながらも、しっかりと彼の手を握り直した。
「これからも、ずっと一緒にいようね」
「もちろん、ずっとだよ」
ふたりはただ、手を繋いだまま、目を見つめ合い、穏やかな時間を共有した。
運命が二度もあるなら、それがこの瞬間だと信じて。
-END-