僕のお人形私は所詮、ローべ伯の愛人の子供だった。
帝国で歌姫だった母が父の目に留まり、愛し合った結果が私だとよく父が私に言っていた。父の愛した金糸の髪と琥珀色の瞳を受け継いだ私は寵愛を一心に受けていた。
父の正妻やその子供達である義理姉達はその事をよく思っていなかった。
「お父様はあの淫売りの子供を寵愛しているだなんて、きっといつか痛い目を見ますよ。」
それが、義理の母の姉達への躾の言葉だった。私は傷つく暇もなくまたか、と思った。
私はどうして見た目も声も母親にばかり似てしまったのだろう。父に似ればもっと義理の母親や姉達も私を大事にしてくれたのだろうか。私のお父様である人だって私がそんな扱いを受けているのを知っていて、この屋敷に置くなんて酷いな、何て思った事もあったけれど、何も生き甲斐がない虚無な父を私が救っているのですよ、と躾役のコルネリアは言っていたっけ。
ある時、母と姉達に淫売りの子供と言われるのが嫌になって、父に秘密で屋敷に出入りしている、ローべ領を回る行商人に馬車に乗ってガスパールに行った。
その時だった。あの時、私がガスパールになんて行かなければ、帝国が負けて正式に王国領になったローべ家に無理やり繋ぎ止められることなんて無かったのに!
銀色の髪にペリドット色の瞳をした少年にあった。彼は私を一目見て綺麗だと言った。その目が私の父と同じ、私をお人形だと言って屋敷の部屋に閉じ込めるお父様と同じ種類の人間だと、その時に気付けなかった。
十数年後、ガルグ=マク修道院でまた会う事なんで知らずに。