最近ラッキースケベに遭いやすい手を振りながら駆け寄ってきたデンジを見てぎょっとした。
「服なんでそんなに破けてんだよ」
デンジはその身で悪魔と戦っているため服が破れることは日常茶飯事だが、今日は着ているのが馬鹿馬鹿しいほど破けていた。
「分かんねえ。そんなことよりもう帰ろうぜえ〰」
俺の小言をよそに、デンジが腕に絡んできた。
絡めてくるな、上目遣いでこっちを見るな!!!
デンジは俺へのスキンシップが多い。本人は世間一般で行われていることをしているつもりのようだが、デンジを好きな俺からしたらラッキースケベに遭っているとしか思えない。しかも服が破けて肌けた状態で密着されては変な気にならない方がおかしい。
「まだ報告が終わってねえだろ。これ貸してやるから着てろ」
ジャケットを着せてどうにかデンジを健全な方向に持っていこうと考えた。
しかし、これが大きな間違いだった。
俺とデンジは身長差がある。それは服にもサイズ差があるということだ。つまり俺の服をデンジが着るとぶかぶかで、さらに可愛くなってしまった…!
焦る俺を他所にデンジは甘えん坊袖を口元にもっていってにっこり笑う。
「へへっ、アキありがと!」
敵に塩を送ってしまったことに今更気がついた。
その後なんとか耐えた俺は報告を終え、帰宅した。
「デンジ、パワー、どちらか先に風呂入れよ」
「ワシは今日は入らん!」
「じゃあ先に入らせてもらうぜ」
デンジが風呂に入ってる間に夕飯を作る。
今日は疲れたから買ってきた鶏肉を焼いて、サラダ出せばいいだろう。
「ふ〰さっぱりした!」
少ししたらデンジが風呂から出てきたようだ。次パワー入れよと言おうとリビングを見たらまたぎょっとした。
「なんで俺の服着てんだよ」
「俺の服もうないから借りた」
最近仕事が忙しくて洗濯ができていない。服をあまり持っていないデンジに影響がでるのは確かに分かる。だが…。
「なんで下履かねえんだよ!」
デンジは上半身だけスウェットを着ており、綺麗な脚が惜しげもなく晒されていた。
「アキの服はでかいから下は脱げんだよ。家の中だからいいだろ」
良くねえよ。むしろ家の中の方があぶねえよ。世間の目に晒されていない分、俺の理性のタガが外れればだれも止められなくなってしまう。
デンジの服だけでも早急に洗濯しようかと考えていると、袖が引っ張られた。
「なぁ、アキなんで怒ってんの?」
デンジは俺が急に無言になり不安になったようだが、それどころではなかった。
それ世間一般で普通に行われてると本当に思ってんのか?!女が狙った男をひっかけるためにしか行われてねえよ!
よく表面上は冷静さを保てているなと自分に感心しながら、デンジに怒ってないことを伝えつつ台所を任せ、洗濯に勤しむことにした。
夕飯を食べ、食器を片付け、風呂に入り、あとは寝るだけだ。
寝室の電気を消して横になっているとデンジが部屋に入ってきた。
「アキ、寝てる?」
なんだか嫌な予感がする。狸寝入りすることにした。
「おっ!寝てるな。お邪魔します〰」
またしても選択ミスをしてしまった。デンジが布団に入ってきてしまった。
「あったけ〰」
どうやって追い出すか考えていたが、デンジは寒いらしく、震えながら俺にひっついていた。
…寒いなら仕方ないか。今日のところは一緒に値上げでやることにした。明日絶対電気敷布か湯たんぽ買ってこよう。
翌朝、デンジは俺に覆い被さるように寝ていた。
「もう勘弁してくれ…」