「はッ、…ッ…ハッハッ…!」
ただ走っていた。必死に。息が上がって苦しいなんてこと無視して。
このまま弾けてしまうのではないという程に逸る鼓動は、走っているからなのか焦りからなのか。
伝達士から王都に敵軍が攻め込んできたという知らせを受けたのが数十分前。
俺たちは敵国から宣戦布告を受け、指定された場所へと赴いていた。しかし、それは嘘だった。敵軍は卑劣にも我が国の軍を騙し、指定した戦地には現れず、主戦力が居なくなった王都に攻め入ったのだ。もちろん、騎士団員が全員出ていたわけじゃない。王都に残ってる者もいた。だが、一つの国家規模の戦力を残った者たちで対処するなんて到底無理だ。
知らせをを聞いた俺たちはすぐに馬を走らせ、急いで王都に戻った。でも、遅すぎた。俺たちが着いた時には、既に王都は惨状と化していた。血の匂いと人やものが焼ける匂い、視界に飛び込んでくるのは変わり果てた姿の街並み。国で一番高い場所ではためいていた国旗は姿を消していた。
13064