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    DB vs ???

    この街に簡単な仕事なんてない vol.2「随分と急ぎの仕事だな」

    「頼む、あんたらじゃないとできないことだ」

    「ありがたいお言葉だが、他にも依頼先はあるんじゃないか?」

    「路地裏でイキってる奴らなんかじゃ役に立たない、バカが多すぎる」

    「そうかい。アンタが賢いなら、俺達が首を縦に振らないことくらいわかるだろ」

    「わかってる!!だからこれだけの額を出すんだ!半数以上がやられたんだ、現場慣れしてる腕がほしい」

    「悪いが、落とし物探しは専門外でね」

    「ケイなんかよりも向こうに渡る方がよっぽど困る。あんたらのことも割れる可能性だってある」

    「…そいつは困ったなぁ、もう少し情報管理は徹底してくれよ」

    「だからだ、こんな風にぐだぐだ話している時間の方が無駄と思わないか?最悪回収はこちらで行う」

    「最悪、ではなく前提として、だ」

    「……現場での回収はこちらで行う。その代わりに周辺の監視に人員が足りなくなる、それでどうだ」

    「今回限りだ、報酬は先にもらう。アンタが生きて帰ってこれる保証はないからな」

    「…ちっ……場所はすぐに送る」

    依頼主が部屋から出ていくのを見送ってから、大きなため息がもれた。それを合図に部下は動き出す。今夜は仕事だ。




    「今日くらいゆっくり過ごすつもりだったんだけどなぁ」

    「監視だけなら楽に終わりそうですけど」

    「この街に簡単な仕事なんてない、だろ?」


    仕方なく首を縦に降った仕事は、現場近くの廃ビル内での待機からスタートした。

    とある組織同士の交戦があった現場で、組織に関するデータが入っていた電子機器の回収。それだけを聞けば楽な仕事かもしれないが、今回は対立組織と合わせてケイが絡むリスクもある。周辺の監視と、最悪の事態に備えての保険が今回の仕事。

    依頼人から送られてきたメールには、住所と共に近くの監視カメラを一部止めて現場に接近すると書かれていた。

    「そこまで手が回るなら、俺達を雇わなくても問題ないだろうに」

    その場所を確認しながら、素早く周りに仲間を配置する。依頼されたからには多少働かないと、後がうるさい。

    古いアパートの下にでもアジトを隠していたのか、街の外れよりは多少建物がある。交戦により、周囲の人間は一時的に離れているのか明かりがついているところはほとんどなかった。

    裏通りにも人影はなく、数台車が残っているくらい。こんな物騒な街の路地で駐車しようもんなら、タイヤどころか跡形もなく奪われるだろう。
    明日までにどれくらい残ってるだろうか、つい口元に笑みが浮かんだ。

    『すでにケイがいる、数名だが捜索を始めてる』

    「そりゃそうだ、アイツらはやけに鼻が良いからな。すぐ嗅ぎ付けてくるさ」

    『…今のところ別組織の人間はいない、そっちは?』

    「こっちも人の出入りはない。車が3台ほど停車しているが、アンタらのか?」

    『そっちにうちの人間はいない、その辺の民間人のだろ』

    「そうかい、それなら荒らしにくるドロが出る前に回収してほしいところだが」

    『…やけに機械周りを漁ってるケイがいる…くそっ、一通り壊したはずだが』

    機械に詳しい人間。その手の役割をもつ人間はどの組織にもいるだろうが、わざわざ現場に顔を出すことは少ない。戦場でも身を潜め、なるべく生き残ることを優先するからだ。

    破壊したはずの精密機器を確認する辺り、手当たり次第なのか。念には念をいれておくか。

    「あの車を確認しておけ、廃車ならほっといていい。そのうちドロがバラすだろ」

    2人だけ車に移動させ、引き続き監視と待機を続ける。周辺に人通りはほとんどなく、遠くで信号機が青になっても車すら通らない。

    「こっちは特に異常はない、そっちの状況は」

    そう切り出したとき、ノイズまじりの破裂音が聞こえた。乱れた音声が一瞬聞こえた後、イヤホンの向こうが騒がしくなる。

    「…これだからせっかちは困るなぁ」

    交戦は避けたかったが、どうやら依頼主の部下たちが焦った結果だ。すでに現場はケイと戦闘が始まり、次第に応援が呼ばれるだろう。

    他所が絡むと一番悪い結果に陥ることが多い。周りの部下に目配せをすれば、音を立てることなく動き始めた。自分達の役目をさっさと果たす、生き残るために。

    『ケイに先を越された、髪を結った女がそっちに逃げたぞ!』

    再び聞こえた声は騒がしく、それと同時に近くでも聞き覚えのない声が聞こえた。

    「武装者2名!現場にも複数名確認、至急応援を!」

    すぐに裏通りが見える場所に移動すると、数台止められている車付近で誰かが取っ組み合っている。遠くでもわかることは、長い髪を結った後ろ姿と、声からして女であること。

    ターゲットが自らやってきてくれるとは、珍しく運がいい。すぐに応戦に向かうよう部下を動かそうとした時、車から人がでてくるのが見えた。

    わざわざ助手席のドアを開け、一瞬車の後ろに目線をやってから反対方向に走り出した。民間人のリアクションにしては随分と静かだ。こういったトラブルに慣れてるのか、それとも。

    「…通信兵ってところか」

    『なに呑気にしゃべってんだ!早く女を捕まえろ!ヴァルチャー!』

    騒がしい無線は次第にノイズ混じりとなり、耳障りな音を静かにオフにした。

    「車周辺の女を捕らえろ。女とはいえケイだ、油断するな。車から逃げた人間はケイの可能性が高い、追跡するが機器の回収が最優先だ。それ以外の事態はすぐに撤収しろ」

    この街に簡単な仕事なんてない。
    手に取った銃を握りしめ、走り出した。
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