ホストをやりながら趣味の料理をネット配信してる光忠。⑦最低なことをした自覚はある。でも、どうしても抱きたいという衝動には逆らえなかった。彼が欲しい。僕のものにして、一生誰の目にも触れさせないように閉じ込めて、あの紫色の瞳に僕しか映らないようにしたい……それが僕の正直な本音だ。
「……最悪だ」
どろりと溢れ出た己の欲に吐き気がする。長谷部くんはそんなことしていい子じゃない。そもそも僕みたいな奴が彼の人生に関わったらいけないんだ。
『好き……です』
無理やり襲われたのに、どうしてあんなこと言えるんだよ。僕がどんな目で見てるかなんて知らないくせに。
寝室へ戻ると、長谷部くんはすでに寝てしまっていた。いや、ショックで倒れてしまったのかもしれない。どちらにしても意識がないほうが今は好都合だった。
丁寧に身体を拭きながらふと思い立ち、首元に、胸に、腿の内側に吸いつき、赤い痕を残していく。それからナカに注いだ僕のものはあえてそのままにした。夢だったと思われないように、僕に抱かれたんだと分からせるために。
そうして僕を嫌いになればいい。こんな男だったのかと絶望し、最低だと罵り、僕の前から逃げればいい。
翌日、長谷部くんは遅い時間にやっと目覚めた。
「おはよう、ございます」
「……おはよう」
クローゼットでネクタイを選んでいると、後ろのベッドから掠れた声が聞こえた。危うく振り返りそうになり、ぐっと堪えてネクタイを首に巻く。
「すみません遅くまで」
「べつに。僕はもう行くから。適当に出て、鍵はポストに入れてくれればいいよ」
「あ、俺も行きま……ッ!えっ」
起き上がろうとしたらしい長谷部くんの動きが止まり、困惑の声が上がる。おそらく力を入れたせいで僕のが出てきたんだろう。
「シャワー使っていいから」
「あの、光忠さん」
「何?」
「俺たちって、その……」
「ただ一度きりの関係。それだけだよ」
「っ、そう……ですか」
「じゃ、行くから」
ベッドに座る長谷部くんを残し僕は家を出た。昨日とは違い、胸の中はひどく冷たかった。