(燭へし)きみといきたい「ごめんね。好きな子がいるんだ」
喫煙室に向かう途中、休憩ブースから聞こえた聞きなれた声と、その声が紡いだ言葉に長谷部の足は止まった。
すっと気配を消して声に集中する。
「どんなひとなんですか」
長谷部のバディである光忠にそう問いかける声は、たぶん庶務担当の女性。
「……そうだね。とても綺麗で可愛い人だよ」
大切なのだと言葉にしなくてもわかる声に嘘だろと声が漏れそうになる。
いつのまにそんな相手が。
知らなかった。
「長谷部くんは特別だよ」
「君だけなんだ」
そう言ってたくせに。
わかってる。それはただのバディに対する評価だってことはわかっていたけれど、けれそその言葉を耳にするたびに誰にも懐かない光忠の唯一になれたようで顔が緩むのを止められない。
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