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    なつさ

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    なつさ

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    水の都のラストに夢を見てるんですが、あれを最近のanpkでやったらと考えるのが楽しくてつい書いたやつ。思い付きのままに書いたので、この場に誰がいるのかとか、続きとかあんまり考えてないです。出すとこなかったのでここにて供養。まあ、この後を考えるとしたら、sts狙ってるのは人間だけじゃないぞ、てか他にもいっぱいいるんだぞって分かって遠い目になるsrnとかかな。

    無垢な少女「あ、ちょっと!」

    戸惑うようなゴウの声に、バーベキューセットを用意していたアランは顔をあげた。
    見れば、少女がひとり駆け寄ってきていた。少女の視線の先にいるのはサトシだ。
    ランチタイムの準備をしていた周囲の仲間たちも気づいたのか、駆け寄ってくる少女に首を傾げいている。今日はマスターズトーナメントで再会した友人たちと、屋外でのバーベキューだった。

    「誰だろう?」

    マノンの問いに、しかしアランも知り得ないため無言で見つめるしかない。
    明るい表情で駆け寄ってくる少女の様子からサトシの知り合いなのだろうと彼を振り返れば、サトシは数回瞬きしたあと、その表情を喜びへと変えていた。
    彼の交友関係はその年齢に似合わず広い。やはり知り合いのようだ。
    そして、少女がサトシ目の前に辿り着くと、サトシは喜色を滲ませた声で問いかけた。

    「久しぶり!こんな所でどうしたんだ? カノ……」

    しかし、問いかけるサトシの言葉を待たず、少女が踵を上げて背伸びした。
    微かなリップ音の次に、一瞬の静寂。
    これにはアランも驚きを隠せず硬直した。からんっと誰かの手から落ちた食器が音を立てる。
    アランの目が狂っていなければ、今確かに少女の唇とサトシのそれが重なったような気がするのだが。
    唖然とする周囲を他所に踵を下ろして背伸びをやめた少女は、きょとんっとした表情で己を見下ろすサトシへにっこりと花が咲くように笑った。

    (えっと……)

    周囲の異様な雰囲気に気づいていない様子の少女とサトシに、アランはマノンと視線を交わしながら困惑した。
    カロスの男として男女間の情熱的なやり取りは理解しているが、今しがた目の前で起こったことは、はたしてどう解釈すればいいだろうか。まるで挨拶のような軽さだったが、カロスならいざ知らず、カントーには挨拶でそれをする風習はあっただろうか。

    「サ、サトッ……今、キ、キ……」
    「セ、セレナ大丈夫っ⁉」

    ガラガラと食器が崩れる音がした。
    反射的に視線を向けると、ゼンマイの切れた人形のように動作不良を起こしたセレナを慌ててユリーカとマノンが支える。
    セレナがサトシを慕っていることは、本人以外のこの場の全員がなんとなく察していることだ。それが突然現れた少女に、目の前であんなものを見せられては正気ではいられないだろう。

    「ええっと……あなた誰?」

    ユリーカの問いに、少女の肩が怯えた様にびくりと震える。
    ぱっとサトシの背に隠れるようにくっついた少女に、ユリーカは目を丸くする。大勢の前で大胆な行為をしておいて、随分と警戒心の強い少女だ。サトシ以外目に入っていなかったのか。
    全員の視線がサトシとその背に隠れた少女に向かう。しかし、当のサトシが少女をなだめるようにその頭を撫でたことで、少し落ち着いたようだった。その分、セレナは更にショックを受けたようだったが。

    「サトシの知り合い?」
    「ああ、名前は……えっと……」
    「名前知らないの?」
    「そういう訳じゃないんだけど……」

    口ごもるサトシに、周囲は首を捻った。
    困ったなという顔で辺りを見渡すサトシは、再度少女に向き合うと、一人で来たのかと聞いた。

    「ボンゴレさんたちは?」

    少女はサトシの問いに首を左右に振ると、自分がやって来た丘の方を指さした。
    すると、ちょど丘の向こうから知っている顔がやって来た。

    「ちょっとー!! 勝手に一人で行かないでよって言ったじゃなーい!」

    慌てたように駆けてくる少女に、サトシが名前を呼ぶ。

    「アイリス!」

    どうやらアイリスと一緒に来たらしい。しかし少女はサトシに気が付いてアイリスを置いて先行してしまったらしい。丘を一息に駆け下りてきたアイリスは、サトシの背に隠れる少女を見ると、きっと目を吊り上げた。

    「こら、危ないからひとりで行かないって約束だったでしょ!」
    「アイリス、まあまあ」

    アイリスに叱られて眉を下げる少女はますますサトシの背にくっついた。
    宥めてくるサトシに、甘やかさないの、と怒りの矛先を変えたアイリスが詰め寄る。

    「アイリスも知り合い?」
    「え? ええ、ジョウト地方に行ったときにちょっと知り合ったの。友達よ」
    「じゃあこの子、ジョウトから来たの?」

    アイリスの言葉にユリーカは目を丸くする。ここカロスからすれば、ジョウト地方は遠い。なかなかの長旅を超えてきたらしい。

    「取り敢えず、食事の用意を終わらせてしまおう。話は落ち着いてからでいいんじゃないか?」

    全員が作業を中断してしまっている現状に、最年長であるアランがひとまずの提案をした。作業を落ち着けてからの方がじっくり話せるだろうと思ってのことだが、セレナはそれ以上にいったん心を落ち着かせる必要がありそうだった。

    「そうだね。じゃあ、私達はセレナとあっちで食材を切って来るから、アランたちはその他の準備を終わらせておいてね」

    アランの意図を組んだマノンがセレナを引っ張って水場まで歩いていく。その後ろをユリーカがついて行くのを見送った後、アランは残った男性陣をまとめて食事のテーブルとバーベキューセットの設置を進めた。
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