ディベート:愛の告白について(仮)ディベート:愛の告白について(仮)
「アルハイゼン」
「セノか」
「急に来てすまない。お前に話したいことがあるんだ」
「ほう?大マハマトラ殿の逆鱗に触れるような行動をした覚えはないのだが」
「俺は仕事でお前のところに来たんじゃない。そういうところが嫌味ったらしいと言われる一因だと思うぞ」
「ああ、すまない。君の珍しい格好に驚いて思ってもいないことが口から出てしまったようだ。気に障ったのであれば謝ろう」
「いや、それはいらない」
「そうか。それで用件はなんだ」
「これから言うことはお前を不快にさせると思うから聞き流して欲しい」
「君の発言は矛盾しているな」
「ああ。自分でも理解している。ただ、この件について議論をするのは俺の主張を全て言い終えてからにしてほしい」
「なるほど。ではどうぞ?」
「好きだ」
「アルハイゼン、俺はお前のことが好きなんだ。きっかけは草神様の救出計画だったと思う。お前は他の学者よりも賢いのにあいつらよりも線引きが上手くて、教令の禁忌の一線は越えない。そういう些細なところから始まったんだが、だんだん書記官や学者としてではなくただのアルハイゼンに好意を持った」
「君はそれを俺に伝えてどうしたい」
「フェアじゃないと思った」
「フェア?」
「俺がこんな感情を持って接しているのをお前は良くは思わないだろう。そのことをお前が知らないのはフェアじゃない。だから俺がお前に好意を抱いていると言うことを知った上でどう接するのかはお前が決めてほしい」
「……」
「返事が欲しいわけでもない。それに、もしかすると俺のこの感情も草神様の救出計画という国の未来がかかった出来事からきた心臓の動悸をお前への感情からきたものだと錯覚しているだけなのかもしれないからな」
「……セノ」
「まあ、お前は俺の弱みを一つ握ったくらいに思ってくれればいい。時間をとらせてすまなかった。ではまた教令院で」
「セノ」
「セノ」
「なんだ」
「君に対する反論を3つあげよう。まず君は急な訪問について謝罪をしてきたが、君の場合毎回アポをとってくれるからさほど「急な」訪問だと思ったことはない。君の仕事柄、1週間以上も前から約束をするのは厳しいだろう?
次に俺が君からの告白を不快に思ったかどうかについてだがこれも違うな。
俺が本を落としてしまったのは君からそんな言葉が聞けると思わなかったからであるし、何も反応しなかったのは想定外の出来事にどう対応していいのか判断に困っただけだ。
もし俺が君を快く思わなかったらこうやって引き止めることもしないし、この場から去るのは俺の方だっただろう。
そして最後に、これが一番重要なことだからきちんと聞いて欲しい。
君が片思いだったことなんて一瞬たりともないよ」
「は」
「セノ」
「セノ」
「セノ」
「セノ」
「……っ、」
「愛しているよ」
「だからこれからの時間は俺の初恋について君の意見を聞かせてくれないか」