Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    wk_gsr

    @wk_gsr

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 29

    wk_gsr

    ☆quiet follow

    フェイグレ。香りの話。

    #フェイグレ
    fagre

     ふわり、と甘い香りがして、フェイスは足を止めた。
     くるりと振り返った先には、くるくるの癖毛を揺らしながら歩く後ろ姿があった。
     考える前に、体が動いた。
     一息で駆け寄って、薄い背中に飛びつくようにして顔を埋める。
    「ひゃっ!? な、え、だ、だれ!?」
     狼狽える声には構わず、すうと大きく息を吸い込んだ。
     ああ、これだ。この甘い香り。
    「あ……あの……」
    「んー?」
    「あ、ふぇ、フェイスくん……?」
    「んー……」
     声でわかったのだろう。強張っていた体が少しだけ緩んで、それでも惑う気配は変わらない。
    「ど、どうしたの? あの、僕、何かしちゃった……?」
    「んんー……」
     不安そうな声に、フェイスはようやく少しだけ顔を離して、それでも腕を掴む手はそのまま、気もそぞろな返事をする。
    「いや、グレイは何もしてないけど」
    「け、けど……?」
     声だけでも困惑しているのが伝わってくる。寄り添った体は小さく震えていて、流石に気の毒になって顔を上げた。
     腕を解放して一歩下がると、グレイがおずおずとこちらを振り向いたので、こてりと首を傾げてみせる。眉を下げて不安げなまま、つられるようにして首を横に傾けるグレイに、フェイスはにっこりと笑った。
    「ねえ、グレイ。何か香水とかつけてる?」
    「え? こ、香水……?」
     フェイスの問いかけに、グレイはぱちぱちと瞬いて、不思議そうな顔をする。それに頷いて、離れたせいで薄くなった香りを探るように軽く息を吸う。
    「うん、なんか甘い匂いがしたからさ。好きな感じだなって」
     もっと正直に言えば、かじりついてしまいたくなるくらいおいしそうな匂いだった。
     そんな獰猛な感情には気づかないようで、グレイは少し考えるように目を伏せて、あ、と小さく声を上げる。
    「えっと……香水じゃないんだけど……最近、乾燥してるから、妹に勧められたボディクリームを使ってて……それ、かな?」
     気恥ずかしそうに言うグレイに、なんて種類、と聞くと、元カノの一人が使っていたのと同じものであることがわかった。確かに、覚えがある甘い香りだけれど、ここまでかぐわしくたまらないものだっただろうか。きっと、グレイのもともとの匂いに混ざって、こんな香りになったのだろう。
     そわそわと落ち着かない様子で、考え考え慎重に話すグレイの表情は、いつもよりも柔らかくて。
     好みの甘い香りと相まって、なんだか、可愛らしく見えた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👍💗💗👏👏💗💗💗💗💗💕🙏🙏🙏💕🙏☺😭💖💖💕💗💗💗👏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    さわら

    DOODLE続くかもしれないし続かないかもしれないアシュグレ。
    グに気持ち悪い!って拒絶されてほしい~~
     はじめに、耳を疑った。
     次に目を疑った。
     最後に夢かと疑った。
     しかし、疑おうとも否定をしようとも、胸にせり上がってくるものが現実だと訴えている。
     頭の中では耳鳴りのようにぐわんぐわんと煩く響く音が鳴って、視界が右も左も上も下もわからないほどにぐにゃぐにゃと捻れて。
     自分が果たして立っているのか、それとも座っているのか曖昧になっても、男の声だけははっきりと聞こえた。
     グレイ・リヴァースをそんな状態にした男の声。
     アッシュ・オルブライトの声。
     今でも怒鳴られれば竦み上がってしまう、芯に深く突き刺さって抜けない棘のような、声。それが、今は――。
    「グレイ」
    「……っ」
     やめて、と耳をふさいで叫びたくなった。実際には声にもならない。
     いつもは人を嘲笑するように『ギーク』と呼ぶくせに。
     なんで。
     どうして。
     そう声にしようとしても、音にならない。はくはくと口を開閉させるばかりにしか。
     一歩近づくアッシュに反応するように、緊張に強張った身体が反射的に後退る。アッシュが近づいたぶんだけ自身の身体も動いて、それを繰り返して。とうとう背中がベランダへと続く窓ガラスへと当た 1513

    さわら

    DOODLE貴方はさわらのアシュグレで『ひねくれた告白』をお題にして140文字SSを書いてください。
    #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/375517
    140字を毎回無視するやつ
     口付けるように指先が額に触れる。
     普段は重く長い前髪に隠れたそこを皮膚の硬い指先がかき分けるように暴いて、するりとなぞる。
     驚くように肩を揺らした。けれどそれ以上の抵抗らしい抵抗はできない。ただされるがまま、額をなぞる指の感触に意識を向ける。
     アッシュの指がなぞっているそこには、本来であればなかったはずのものがあった。ある時から消えない傷となって残り続けているそれは、過去のグレイとアッシュを同じ記憶で繋げている。
     アッシュがこちらに触れようと伸ばしてくる腕にはいつも恐怖を覚えた。その手にいつだって脅かされていたから、条件反射で身が竦む。けれど、実際に触れられると違うのだ。
     荒々しいと見せかけて、まるで壊れ物に触れるかのような手付き。それは、本当に口付けられる瞬間と似ていた。唇が触れ合ったときもそれはそれは驚いたものだけれど、最終的にはこの男に身を任せてしまう。今と同じように。
     乱暴なところばかりしか知らないせいか、そんなふうに触れられてしまうと、勘違いをしてしまいそうになるのだ。まるで、あのアッシュが『優しい』と錯覚してしまう。
     そんなはずはないのに、彼からはついぞ受け 2766