Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    miho

    開設ほやほやです。書いたり描いたり。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    miho

    ☆quiet follow

    タイトル未定のヒスファウ。
    成人して間もないヒースがファウスト先生に告ろうとする話。
    絶賛、着地点見失い中です。

    #ヒスファウ
    hisfau

    ヒスファウ進捗 ヒースクリフの様子を盗み見るのが何回目か、ファウスト自信もわからなかった。小さな丸いテーブルの向かい側で、視線をおとして口を噤んでいる。気遣って言葉を投げ掛ければ暫くはぎこちなくも会話が続くが、いつしかまた同じ停滞が戻ってきた。
     ヒースクリフが成人を迎えたのは先月の終わり頃だった。魔法舎での誕生祝いや家での行事を終え、さらには宴会好きな魔法使い達からの誘いをいくつか経た頃、中央の国には夏の気配が少しずつ近づいてきていた。
     そして、ファウストが晩酌に誘われたのだ。"晩酌"等という酷く手慣れた言葉をやや言い辛そうに使ったヒースクリフが印象に残っている。『夜、二人で静かに酒を飲む』という行為を端的に表す言葉として、彼にとって聞き慣れていたのだろう。
     そして夕食後、系統の異なるいくつかの酒と張り切ったネロが用意してくれたつまみを携えてヒースクリフの部屋を訪れたのだった。しかし、ヒースクリフは酷く緊張している様子だったのである。
     なにか相談事でもあったのかと促してみたが、返ってくるのは曖昧な返事だった。何度か試みたが同じだったので、本人から話すまでは待ってみることにした。
     しかし、時間の経過と共にヒースクリフの緊張は和らぐどころか重苦しくなっていった。見ると、重い沈黙を伴い視線を落としているのに加え、白い顔に僅かに赤みがさしていた。
     ファウストは、既に栓の開いているワインの残りを自分のグラスに注ぎきった。
     極力柔らかい声を心がけ、成人したばかりの生徒に語りかける。
    「そろそろお開きにしようか」
    「……え」
     ほんのり染まった顔とようやく向かい合った。ぱちりとまばたきをして口は薄く開き、小さな驚きを浮かべている。
    「口数が少ないよ。眠い?」
    「……違います」
    「身体がぽかぽかしてるんじゃないか?」
    「違います」
     遠回しに体調を気遣うと、意外にも強い否定が返って来た。
    「酔ってません」
     謙虚な生徒が珍しくむきになるポイントを見つけ、驚きと喜びが一つの衝動になって巻き起こる。飲み友達の部屋に寄り道して自慢したいような、真っ直ぐに部屋に戻って大切に抱えて眠りたいような、どっち付かずの衝動だった。
    「それは酔っ払いの常套句だよ。疲れていると自分の思っている以上に酔ってしまうこともある。最近忙しくしていただろう?」
     言いながらコップに水を注ぐ。
    「君はこれ」
    「……すみません」
    「大人にだってあることだ、謝ることじゃない。これはいただくよ」
     言って立ち上がり、彼のグラスのステアに手を掛ける。しかし、それを口許へ持って来ることはできなかった。ヒースクリフの手が阻んでいたのだ。
    「……」
    「ヒースクリフ?」
     北の魔法使いがロックグラスを鷲掴むように、上から抑えつけている。そのまま取り上げて、置かれてしまう。テーブルを挟んだまま、立ち上がってファウストと向かい合っていた。
    「まだ酔わないで」
     ヒースクリフがファウストを見つめている。
    「聞いてくれますか」
     涼やかな青い色なのに、射抜くような眼差しが熱い。その瞳は、いつかの記憶を呼び覚ました。

       ・・・◇・・・

    「で、お子ちゃまは俺とぶどうジュースってか」
     ネロは、ワイングラスを適当にくるくる揺らしながら小首をかしげた。対してシノは、濃厚な葡萄ジュースを飲み下した後で相手を睨む。
    「お子ちゃまじゃない。あんたはとっくの昔に忘れただろうが、人は二十歳でいきなり大人になる訳じゃないんだぜ」
    「覚えてるよ。二十歳になったって暫くはお子ちゃまさんだろ?」
    「これだから古臭い魔法使いは……」
    「んー? 誰が古臭いってー?」
     機嫌の良い声がグラスに籠る。それを眺めつつシノは脚を組み直した。
    「ふん、まぁいい。アイツも今頃、目ぇ剥いてるだろうな」
     一口飲み下してこちらを見たネロは、目を丸くしていた。
    「アイツって、誰……だよ……」
    「その顔、誰のことかわかってるんだろ。ヒースは決める男だぜ」
    「マジかよ……。なに、そういう会だったの?」
    「覚えてるだろ、……一昨年の」
     珍しくシノが言葉を濁した。
    「……ああ、覚えてるよ」
     ネロは伏し目がちに呟いて、グラスを置く。
     一昨年、18歳のヒースクリフはファウストに所謂”告白”をして、振られたのだ。明確に拒絶された訳ではなかったが、答えはYesとは程遠いものであった。シノはヒースクリフから、ネロはファウストから話を聞いていたのだ。
    「つまり、そういうことだ。ヒースは決める」
     得意げに言って、シノはサワークリーム乗せクラッカーをほおばった。
    「やめてやれって……。あの人子どもに告白されて、断るのが大人の義務だと思ってるってのに」
    「子どもじゃない。」
     出会った時から変わらない勝気な瞳が、真正面から鋭く見据えた。
    「言葉を返すが、」
     続けて悔しげに眇められる。
    「真剣な心に向き合いもせず茶を濁すのが大人のすることか?」
    「いや、まぁ……ほら……」
     聞き分けの悪い子どものように視線を逸らした先で、いつしか逞しくなっていた指がまた一つクラッカーを摘まみ上げた。
    「『もう一度よく考えて欲しい』だと? 他でもないあんたに愛の告白をするのに、ヒースがどれだけ思い悩んだと思ってる」

       ・・・◇・・・
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    miho

    DONE2023/3/21薔薇は咲いていたでいただいたエアスケブ「シャスマス」です。
    学パロで演劇部もの、エースのシャスポーと脚本担当の名無しマスター。
    シャスポーがマスターを先輩と呼びます。
    転生のようなそうでないようななにか。
    【薔薇咲_エアスケブ】緞帳のあちら「ツバメさん、小さなツバメさん。」
     そう、彼は繰り返した。両の目蓋は下ろされ、薄く開いた唇から悲痛な声を発する。
    「貧しい子供達の、声が聞こえないかい? お腹が空いたと広場の隅で泣いている。彼らは上着を着ているだろうか、靴は履いている? 私にはもう見ることはできない。だからどうか、教えてくれないか?」
    ーー上着も、靴も、靴下すらもありません。幼い子ども達だけで身を寄せ合って、石畳の上で凍えています。ーー
    「……あぁ……この寒空の下、かわいそうに……。」
     悲しみに揺れる声の狭間に、震える息が溢れる。だけどその声は、そして心は、容易く侵されるようなものではない。きっと、届けたい人に届くだろう。
    「ツバメさん、どうか、私の身体から純金を剥がしておくれ。そうして彼らに届けてほしい。広場の子ども達だけではなく、この街に住む貧しい人達へ。どうかお願い。苦しみの底で喘ぐ人達に、私の身体の欠片を分けて。剣のルビーも瞳のサファイアも、もうなくなってしまったから、この身体中の黄金を分けて。どうか、お願い、ツバメさん。」
    3783

    miho

    SPUR ME【23/3/21 薔薇咲展示】Promise You
    ラップ×名前有創作女マスター
    召銃から初めての治療までの物語です。
    親愛ストを補完する形で書いていますが、初治療の描写を捏造しています。

    開催おめでとうございます!
    こちら、今日に向けて執筆していたものですが間に合いませんでしたので抜粋で投稿いたします……!全編完成させたい!

    すげなく治療を断られたマスターの強行突破(できない)の巻です。
    【薔薇咲展示】Promise You -Ⅴ-

    「マスター、この辺りで待ち伏せしようよ。」
    「その茂みがいいと思う。」
    「了解。」
     悪戯慣れしたニコラとノエルの助言で、私は食堂脇の茂みに身を潜める。双子は食堂の外壁に体を沿わせて、窓から中の様子を確認してくれている。そんな姿は、度々基地内で見かける。その後には抜群のチームワークから繰り出される悪戯、悪戯、悪戯。
     でも、今回私達がせんとしていることは悪戯ではない。ターゲットとの真剣勝負なのだ。この肩に担ぐ黒い筒はネットガン、今日の相棒。引き金を引けばターゲット捕獲用のネットが発射される。裏山に居る手負いの馬を捕まえて育てたいとお願いしたら、修理場の職人さんが作ってくれた。作戦立案はターゲットを熟知しているニコラとノエル。そうだ、私はみんなの力を借りているんだ。負ける訳にはいかない……!
    2149

    related works