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    雨音@ししさめ

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    雨音@ししさめ

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    2023.5.16。ふぉろわさん🦁さん⇨雨音☔️先生で書いた話

    あなただけ見つめるーS「獅子神」
    「……ん?」
     呼びかけた私の目の前にあるのは、生クリームといちごを乗せたパンケーキ。
     獅子神が一枚一枚丁寧に焼いた物に、私がトッピングを施した。
     イチゴと生クリーム。ケーキの定番と言えばやはりこれだ。
     時間にすればほんの数秒。見つめ合う獅子神が、私の意図に考えを巡らせているのが分かる。
     そうだな、紅茶ではない。あなたが用意したティーポットには、まだ充分に残っている。ついでに言えば、温めたミルクも足りている。
     敢えて考えたことは言葉にせずに。フォークとナイフを手に取り、改めてパンケーキに目を下ろせば、それを追いかける獅子神の視線を感じる。
     俗に『キツネ色』と称される色に焼き上げられたパンケーキにナイフを刺し入れれば、ふんわりとした感触が指先に伝わる。
     なるほど。
     幼い頃に読んだ、ホットケーキを焼くしろくまの親子の絵本を思い出すな。
     皿の上を全て食べ終えたら次は、シンプルにバターとメイプルシロップにしても良いかもしれない。
     ス……っとナイフを滑らせて、一口大に切り分ける。いや、これでは小さいか? 私の口ではこれが一口だか……どうも、私は口が小さいらしい(と、獅子神に言われることが折にふれてある)。
     ……まぁ、構わんか。小は大を兼ねるだろう、この場合は。
     ちょうどそう結論付けたタイミングで、すぐ近くに気配を感じる。同じく何らかの結論を出したらしきマシなマヌケが、こちらを見下ろしていた。
     切り分けた一切れに、生クリームとイチゴを乗せる。奇跡的なバランスを以てして持ち上げられたそれは……ちょうど、タイミング良く開かれた獅子神の口の中へとおさまった。
    「………うまい」
    「私がトッピングしたのだから当然だろう」
    「パンケーキを焼いたのもそのトッピングを準備したのもオレなんですがね」
     よく味わい飲み込む様を眺め、目を細める。『合格だ』。私がそう思ったことは、さずに伝わったのだろう。
     どこか困ったように、眉を下げて笑ってみせた。
    「礼二くんずるい!  敬一くん!  オレのも味見して!」
    「獅子神さん、ボクのも食べて~!」
    「獅子神くん、愛されし人の子は神からの恩恵を受けられる」
    「お前らオレが食事制限してるの知ってるだろ!?」
     三者三様。彼ららしくデコレーションされたパンケーキの皿を持つ三人が、騒がしく獅子神を取り囲む。
     それに言い返す恋人を三秒ほど見つめてから、パンケーキに視線を戻した。
     今度は、私の為に切り分け私の口へ。
     甘さを堪能しつつ味わいながら……私の『視線』の半分は、獅子神を見ている。おそらく、それは彼自身も気が付いているだろう。
     ああ。そうだな、目を逸らしたことについては……私はそこまで心が狭いわけではないので、怒りはしない。
     ただ……後からその何十倍でも、私だけを見つめさせれば良いだけなのだから。


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