仄暗く薄明かりの落ちる部屋で目が覚めた。
いつの間にか軍衣袴が取り払われ、下着と下履きのみの心もとない姿で後ろ手に縛られているようだった。
(捕らえられたか…)
亜港の病院を抜け出した後のことを思い返しながら尾形は己の不運を呪っていた。すんでのところで何も手に入らなかった。自分で捨てたものとそうではないものの区別がもはや曖昧になっている。
(やはり、俺では駄目か)
どれくらいの時間が経っただろう。音もなく、冷えた空気と共に入ってきた人影がある。
「…目が覚めたか、尾形上等兵」
「……どこです、ここは」
「お前には関係ない」
居丈高にこちらを見やるのはよく知った貌…褐色の手におさまる何やら物騒な、よく撓る革紐の付いた棒には見覚えがないが。
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