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    naru381231

    @naru381231

    成人済/腐/月鯉/幻覚と妄想がひどい
    リアクションとても嬉しいです。Twitterもポイピクも使いこなせる気がしません。ぐんそーの筋肉とおむすびで感謝の意を伝えさせていただいております💪💪💪🍙🍙

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    naru381231

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    父の墓を見に佐渡へやってきた月鯉
    (何でも大丈夫な方向け)
    (ショタ之進)
    (墓地でイチャついてる)
    ※赤子のオトノシンをコイト家から攫って前世の🎏に仕上げようと育ててるイカれた月さんがいます。

    #月鯉
    Tsukishima/Koito

    !注意!
    ※現パロ、転生。🌙記憶あり🎏記憶なし
    ※歳の差二十歳以上の月鯉
    ※倫理観薄めの二人の世界です。既に普通に手を出して恋人同士になってます。

    ※※※※※




     酒瓶片手に暴力を振るい、人を人とも思わぬ非道な父が、数年前に他界した。
    十代のうちに実家を飛び出し、縁を切った月島にとって、それは一切関係のないことで、役所からの電話をその場で乱暴に切り捨てたことを、今でも後悔はしていない。
     畜生は、生まれ変わっても畜生のままだった。

     その畜生の墓を、今年は何故だか訪れてみたくなった。
     死んだことを確認する為。成れの果てを嘲笑う為。積もり積もった恨み言をぶつける為。今世は己の手で殺さずに済んだのだと安堵する為。理由なら、きっと全部だ。
     墓は、山の麓に近い小さな寺にあった。
    盆で訪れた人々が、綺麗に飾った仏花で華やぐ霊園の中。ひとつだけ、周囲からぽつりと浮いた墓があった。お供えの菓子も、新鮮な花も、炊いた線香の跡すらない、赤いカビが表面に点々と付着したままの放置された墓。
     それが父の墓だった。
    ……ざまぁみろ
     心中で悪態をつき、月島はその場を後にした。
     痛いほどの陽射しと、蝉の雑音だけがただただ不快な、そんな盆の暮れだった。

    「鯉登さーん」
     寺の休憩所に戻ると、大きな麦わら帽子を被った鯉登が木の傍で蹲っていた。月島の呼び声にも気付かず、何やら鋭い剣幕で地面と睨めっこをしている。
    「鯉登さん、建物の中に入って涼んでいろって言ったのに」
     すぐ傍まで歩み寄り、頭上から声をかければ、ようやく鯉登が顔を持ち上げた。
    「あ、月島」
    「お待たせしました。暑かったでしょう」
    「うんにゃ、大丈夫」
    「地面なんか見て何をしているんですか?」
    「蟻にアイス食べさせてた」
     玉の汗を褐色の鼻頭にくっつけて、鯉登が砂利を指でつつく。
     中腰になって覗いてみると、溶けたバニラクリームに群がって蟻が輪を成していた。甘い匂いに誘われたのか、木の根元辺りから続々と這い出てきては真っ白なアイスクリームに体を滑らせている。
     鯉登の手には、コーンだけになったものが握られていた。
    「……食べ物を粗末にしちゃ駄目ですよ」
    「違う。溶けて勝手に落っこちた」
    「早く食べてしまわないからでしょう」
     八月の日光は容赦なく厳しく、ぼんやりとただ突っ立っているだけで脳が蒸発してしまいそうだ。ふっくらとした鯉登の頬もトマトのように赤らんでいる。
    「ここは暑いです。宿に戻りますよ」
     ねぇ鯉登さん、と、麦わら帽子の天辺に向かって呼び掛ければ、零れ落ちそうな紫色の瞳が不思議そうに月島を見上げた。
    「用事は?もう終わったのか?」
    「え?……はい、もう大丈夫です」
    「誰のお墓?月島の友達?」
    「いえ、遠い親戚です。ほとんど会った記憶もない、他人みたいな人ですよ」
    「ふーん」
     つまらなそうに呟いて、鯉登が立ち上がる。掌に残ったままのコーンにがぶりと齧り付き、不意に「月島の家族なら挨拶しておきたかった」なんて口にする。
     十代のうちに実家を捨て、死に物狂いで働き続けて約十年。今世で出逢った鯉登は百年前よりも随分歳下で、つい最近五歳を迎えたばかりだった。物心つく以前より家族から奪い取り、可能な限り『鯉登少尉』として扱いここまで育て上げたのは月島本人だ。
     話し方から態度、果ては薩摩弁と標準語を身に覚えさせ、月島が生涯寄り添い尽くした、かつての男に限りなく近付くように。
    「家族じゃありませんってば。遠い遠ーい親戚です」
     腰を下ろして目線を合わせ、鯉登の唇の端についたコーンの屑を取り払う。
    「と言うか、何で鯉登さんが挨拶を?」
    「月島が世話になったんじゃでおいが挨拶せんと」
    「俺の家族は鯉登さんだけですよ」
    「だからおいが挨拶せんな。おいだけが月島の家族なら親代わりにもならないけん」
     至極真面目に鯉登が言った。
    「ははっ、何ですかそれ」
     子供のくせに、と言葉にはせず、どこか可笑しい鯉登の物言いに、月島は久しぶりに笑い声をあげた。
    「じゃあ、俺が間違ったことをしようとしたら怒って止めてくれますか?」
    「うん。縋りついて止めてやる」
    「はははっ」
     小さな口から放たれる大人ぶった口ぶりに、息苦しい程の愛しさが込み上げてくるのは何故だろうか。
     突拍子もなく、鯉登が月島の首に腕を回してぎゅうっと抱き付いてきた。炎天の下にも関わらず、汗だくの身体が不思議と心地良い。
    「おっ、流石に疲れましたか?」
    「違う」
    「旅館まで歩けます?泊まりで来て正解でしたね」
    「なぁ、月島ぁ」
    「はい?」
    「家族にも親にも友達にもなってやれるけど……一番は恋人がいい」
     不機嫌そうな顔をして、鯉登が小さく囁いた。囁いて、月島の頬に控えめなキスを落とすものだから、今度は呆気にとられる。
    「月島はおいん恋人!一生!死ぬまで!」
    「痛たたたっ!首、鯉登さん!締まってる!」
     柔くて短い腕が懸命に縋ってくる。それをやんわりと解いて身体ごと抱え込み、月島は立ち上がった。
     地面のアイスクリームに興味を失くした蟻たちが、いつの間にやら蝉の死骸に群がり始めている。
    「じゃあ、今日は二人で初めての旅行記念日ですね。佐渡で申し訳ないけど」
    「新婚旅行?」
    「……それは、ちょっと早いです。もっと良い所に連れて行きたいし。あと、そうだな……指輪でも買いますか。お揃いのやつ」
    「指輪ぁ?」
    「五歳児の指のサイズに合うもの売っていれば良いですけど」
     餅のように滑らかで小ぶりな手を取り、薬指を眺めながら、月島は墓地に背を向け歩き始めた。
     蝉の雑音は、もう聴こえなかった。

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    ぎねまる

    MOURNING初登場前の、苛烈な時代の鯉登の話。わりと殺伐愛。
    過去話とはいえもういろいろ時期を逸した感がありますし、物語の肝心要の部分が思いつかず没にしてしまったのですが、色々調べて結構思い入れがあったし、書き始めてから一年近く熟成させてしまったので、供養です。「#####」で囲んであるところが、ネタが思いつかず飛ばした部分です。
    月下の獣「鯉登は人を殺したことがあるぞ」

     それは鯉登が任官してほどない頃であった。
     鶴見は金平糖を茶うけに煎茶をすすり、鯉登の様子はどうだ馴染んだか、と部下を気にするふつうの・・・・上官のような風情で月島に尋ねていたが、月島が二言三言返すと、そうそう、と思い出したように、不穏な言葉を口にした。
    「は、」
     月島は一瞬言葉を失い、記憶をめぐらせる。かれの十六歳のときにはそんな話は聞かなかった。陸士入学で鶴見を訪ねてきたときも。であれば、陸士入学からのちになるが。
    「……それは……いつのことでしょうか」
    「地元でな──」
     鶴見は語る。
     士官学校が夏の休みの折、母の言いつけで鯉登は一人で地元鹿児島に帰省した。函館に赴任している間、主の居ない鯉登の家は昵懇じっこんの者が管理を任されているが、手紙だけでは解決できない問題が起こり、かつ鯉登少将は任務を離れられなかった。ちょうど休みの時期とも合ったため、未来の当主たる鯉登が東京から赴いたのだ。
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