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    桜餅ごめ子

    @yaminabegai

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    桜餅ごめ子

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    ※名無し、セリフ有のオリキャラを含みます
    ヤンデレごっこしてるマホちゃんがガチのヤンデレに片足突っ込んでるカービィさんにわからせ(意味深)られる話。
    エアスケブリクエストありがとうございました!

    ##全年齢

    叶ってほしくなかった カービィを探しに町の方に赴く。まん丸な桃色のシルエットを見つけるも、友人たちと談笑中だった。盛り上がっていて、ボクが入り込む余地はない。
    「……出直ソ」
     ボクはくるりと背を向けて、その場を後にする。こういうことは、一度や二度ではない。ボクが会いに行くと、カービィはいつも友人たちに囲まれていた。当然だろう。彼は人気者のヒーロー、「星のカービィ」なのだから。
     無理やり割り込んで会話の主導権を握ることも、ボクの話術なら可能ではある。しかし、憩いの場に水を差した邪魔者に向けられるのは、白い目だけだ。
    「……また、渡せなカッタナァ」
     ローアに戻り、ため息をつく。手の中でクッキーの袋がカサカサと軽い音を立てた。

     先日――と言ってもかなり日が経ってしまったが――チャレンジステージを遊びに来たカービィと雑談しているうちに、お互いの睡眠の話題になった。ボク自身の睡眠時間を話すと、カービィは「短すぎるよ!」と驚いた。その日はカービィがロングスリーパー過ぎるのではないか、と笑って終わったのだが――その数日後、カービィはボクに、自身を模したぬいぐるみとアロマオイルを持ってきた。そのアロマオイルは心身をリラックスさせてぐっすり眠れる効果があるらしい。ぬいぐるみに付けて一緒に寝てみて、と勧めてきた。
     ぬいぐるみを抱いて寝るなんて幼子のようで気恥ずかしく、まだ実行に移したことはない。しかし、彼がボクを案じてしてくれたことなのだから、礼をしなくては。そう思って菓子を用意したはいいものの、いつ行ってもカービィは人の輪の中心にいる、というわけだ。
     渡せなかったクッキーを、駄目にするのも何だしと自らの口に放り込む。せっかく贈るなら良いものを、と吟味して選んだ品。美味しいはずなのに、味気なく感じてしまうのはボクの心のせいだ。こうして自らの腹に収めたのは何度目だろう。
     ボクがポップスターに帰還するためにどれほど死に物狂いだったかなんて、カービィには関係のないことだ。彼にとってのボクは所詮、優しさを利用して裏切ったくせに何食わぬ顔で戻ってきた虚言の魔術師にすぎない。そんなボクを、それでもきみは友達だよ、と認め、信頼してくれるカービィ。
     彼に、これ以上の報いを求めてはいけない。これ以上の仲になることを期待するべきではない。
    「……ワカッテル、ワカッテルヨ」
     にじみそうになる涙を、ぐっと目を瞑って押し込めた。

     その日の夜。新作ミニゲームの制作作業を進めようとするが、どうもはかどらない。設計に難航しているのもあるが、満たされない心が叫ぶ雑念のせいでもあった。
    「……今日はヤメヨウ」
     一度寝て、頭をリセットしよう。眼精疲労で痛むこめかみを押さえながら、寝間着に着替えて寝室に向かう。ボフッとベッドに飛び込むと、シーツのサラサラとした感触がボクを包んだ。
    「……」
     しばし逡巡したあと、ベッド脇の棚に置いてある例のぬいぐるみとアロマオイルを手に取った。アロマオイルの蓋を開け、ぬいぐるみに数滴垂らす。すると、ふわりと優しい香りがくすぐるように広がった。
    「この匂イ……」
     それはいつだったか、カービィが抱きついてきた時に嗅いだ匂いによく似ていた。ぬいぐるみを抱き寄せると、まるでカービィ本人と触れ合っているような感覚に陥った。
    「……カービィ」
     トモダチの名を呼ぶ。ただそれだけなのに、焦がれるように切ない声になってしまう。
    「キミは人気者ダネ、カービィ。会いに行っテモ、いっつもヒトに囲まれてテサ」
     ぬいぐるみの頭をそっと撫でる。当然、刺繍の表情は変わらない。きょとんとした顔のぬいぐるみを横たえて、共に布団の中に収まった。
    「話しかけちゃエバ、なんてコトないんダロウケドネ」
     気軽に声をかければ、きっと嫌な顔ひとつせず迎え入れてくれるだろう。この国の住人、そしてカービィがいかにのん気でおおらかなのかはよく知っているつもりだ。それでも二の足を踏んでしまうのは。
    「デモ、ジャマダッテ思われたらヤダカラナァ」
     誰に嫌われようと、疎まれようと、今まで気にもしなかったのに。カービィに冷たい目を向けられるのを想像するだけで、ぞくりと身がすくむ。 
     一歩踏み出したことで壊れてしまうくらいなら、現状を維持する方がマシだ。頭ではそう考えているのに、胸が苦しくて仕方ない。荒廃した約束の地に独りでいたときよりも、愛しい隣人がいるのに手を伸ばせない今の方がつらく感じる。
    「……サミシイ」
     本音が口からぽろりとこぼれた。

     差し込む朝日に目を覚まされる。起き上がると、いつもより体が軽い気がした。アロマオイルの効果だろうか。
    「……よく眠れたヨ。アリガトネ」
     傍らで寝転がるぬいぐるみの頭をぽふぽふと撫でる。
     効果を実感したことで、やはりちゃんと礼をしなくてはならないと思った。今日こそは、話しかけよう。カービィが誰とどんな話をしていようとも。

     朝の支度を済ませ、菓子屋に向かう。プププランドの外れにある、小さな店だ。ボクは「お礼のお菓子」を、いつもそこで買い求めていた。
    「あら、マホロアくん! いらっしゃい!」
     店内に入ると、この店の店長の元気な声がボクを迎える。
     この店でお菓子を買ってはカービィに渡せず、自分で消費する――という流れを繰り返していたボクは、いつしか店長に覚えられてしまった。買う店を変えればいいだけの話ではあるが、それは敗北宣言のように思えて、なかば意固地になってこの店に通い続けている。
    「ボク、名乗った覚え無いんダケドナァ」
     レジでニコニコと満面の笑みを浮かべる店長に、じとっと目線を向ける。店長はボクの不躾な態度を気にもせずケラケラと笑った。
    「小さな国だもの! みんな知り合いみたいなもんよ」
     田舎星らしいプライバシーのなさだ。ボクはやれやれと呆れつつ、商品棚に視線を移した。
    「そうそう、新商品があるけど試食してみる? レモンを使ったマドレーヌなんだけど」
    「……ソウダネ」
     彼女はそう言って商品棚からマドレーヌを取り出し、小さく切り分けた。マドレーヌが盛られた皿と楊枝を差し出されたので、楊枝で刺して口に運ぶ。爽やかな酸味が効いていてさっぱりとした口当たりだ。
    「どう? どう?」
    「マァ、オイシイと思うヨ」
     言葉少なに答える。素っ気ないかなとも思うが、彼女への対応としてはこれが正解だと思う。ボクも当初は平常通り愛想よく接していた。しかし彼女は無限に馴れ馴れしくしてくるタイプだったため、ボクは面倒くさくなって途中から猫を被るのを止めたのだった。
    「……ジャア、このレモンのマドレーヌを買おうカナ」
    「はーい! ラッピングしておくわね!」
    「ア、ウン……」
     店長はこちらが頼む前に包装紙を見繕い始めた。贈り物であると決めつけられている。どうにも座りが悪いが、原因は把握されるくらい通いつめた自分にある。
    「今日は渡せるといいわねっ」
    「エ?」
     ボクが財布を開こうとすると、彼女はテキパキと箱を包みながら声をかけた。思いがけない言葉に顔を上げる。
    「あら、違った? 毎日のように二人分のお菓子をラッピングして買っていくから、誰かにあげようとしてるけどあげられてないのかと思ったわ」
    「客を詮索しないノ」
     彼女は困り顔でヘラヘラ笑い、ごめんごめん、と謝った。彼女はアホそうに見えるし実際アホだとは思うのだが、妙に勘が鋭い。接客を生業にしているせいだろうか。
    「お詫びに、あなたのリクエストでケーキを作るってのはどう?」
     彼女はそう言って、オーダーメイドのケーキを提供するプランを検討している、と教えてきた。なんでも、ボクの注文で練習してみたい、とのことだ。お詫びというには随分打算的だが、カービィにお礼の品を渡す際に話しかけるきっかけにできると考えれば、ボク側にも利益があるように思えた。
    「マァ、考えておくヨ」
    「ありがとう! いい返事を期待してるわね」
     店長はラッピングが済んだ箱を差し出して微笑んだ。ボクは箱を受け取り、店を後にする。
    「オーダーメイド、ネ……」
     カービィの旅路にまつわるデザインのケーキをこっそり作って、彼を驚かせようか? カービィと一緒にデザインを考えるのも楽しそうだ。彼の笑顔を思い浮かべると、久々に心が踊った。

    「わあっ! このマドレーヌ美味しい! レモンのマドレーヌなんだね!」
     町に赴くと、弾けるような明るい声が聞こえた。咄嗟に建物の後ろに身を隠し、様子を伺う。
     カービィはいつものように友人たちに囲まれている。彼の手には、つい先程ボクが買った物と同じ、レモンのマドレーヌがあった。
     カービィにマドレーヌを渡したと思しき者が嬉しそうに笑う。
    「近所のお菓子屋さんで売ってたんだ! 新商品なんだって! 試食したら美味しかったから、カービィにも食べてほしかったんだ」
     ボクは、箱が入った袋をぐっと握りしめた。
     ――こんなの予想できたことじゃないか。新商品なら他の客も買っていてもおかしくない。店長が勧めてくるならなおさらだ。気にすることはない。食いしんぼうのカービィなら、マドレーヌがもう数個増えたところで、ぺろりとたいらげてしまうだろう。ボクも買ったんだ、それ美味しいよね。ボクのもあげるよ――そう話しかければいいだけのことだ。
     それができないのは、打ちのめされてしまったから。カービィにとってボクはいてもいなくても変わらない存在だと、突き付けられたような気がして。
    「……モウ、イイヤ」
     ボクは無い肩をがっくりと落として、すごすごとその場を後にした。
     
     ローアに帰ってすぐ寝室に向かい、菓子の箱を床に放り捨ててベッドに潜り込んだ。要はふて寝である。
    「アーア……」
     大げさにため息をついて、寝返りを打つ。すると、顔に柔らかいものが当たった。昨夜共寝した、カービィのぬいぐるみだった。今朝起きたとき、棚に戻すのを忘れていたようだ。刺繍の表情は、憎らしいほどに変わらず、きょとんとしている。
     春のそよ風のようにあたたかく、一等星のように皆を照らす彼。そのぬくもりを、その明るさを。
    「……キミを、ヒトリジメできたらイイノニ」
     ぽつりとつぶやきながら、いつかどこかで聞いた「ヤンデレ」という言葉を思い出した。意中の相手への愛情が高まりすぎて病的な精神状態になっていることを指すそうだ。自分だけを見てほしい。自分だけを愛してほしい。そういった、自己中心的な愛の形。
     お菓子の箱を拾い上げ、リボンを外す。そして、ぬいぐるみの足に結びつけた。
    「コレは、足枷ダヨ。キミはもう、ボクから逃げられナイ……」
     ぬいぐるみの口元に、ふに、と唇を寄せる。ぎゅうっと抱きしめて、逃げ出そうともがくカービィを想像した。
    「暴れなイデ……カービィ……。キミはもう、ボクのモノなんだカラ……」
     ふわり。甘やかな匂いにくすぐられる。昨夜ぬいぐるみに垂らしたアロマオイルの香りがまだ残っていたようだ。
    「カービィ、ダイスキダヨ。……ダカラ、オネガイ。ズットそばにいて。ズゥット、ボクだけをアイしてホシイノ……」
     ぬいぐるみを抱きながら、ぼんやりと愛の言葉を口にする。優しい香りに誘われて、ボクは眠りに落ちていった。
     
     触られている、と思った。柔らかく丸い手で、ふにふにと。まるでカービィに撫でられているみたいだ――そう思ったところで目を開いた。夢を見ていたのだろう。ここにカービィがいるはずはない。身体を起こそうとすると、大きな人影に阻まれた。
    「エ、ナニ!?」
     逃れようとして身じろいだ拍子に、カーテンの隙間から漏れた夕陽が人影を照らした。それは、よく見知ったトモダチである、カービィだった。
    「ア、ナンダ……カービィカァ……エッ、ナンデカービィがここにイルノ!?」
     ホッとして身体の力を抜くが、すぐに思い直して大きな声を上げる。これまで、寝室にカービィを入れたことなどない。そもそも、カービィがローアに入ってきたことにすら気づかなかった。
    「マホロアに会いたかったんだ」
     ボクに? 反射的に喜びの感情が湧き上がるが、状況の異常さがボクを冷静にさせた。
    「ソレは嬉しいケド、寝室に入ってくるコトないんジャナイ?」
     カービィを押しのけて起き上がろうとするが、全く動かない。どうやらボクはカービィに押し倒されているようだった。
    「マホロアの方から話しかけようとしてくれてたみたいだったから待ってたんだけど……ごめんね。話しかけづらかったんだね。大丈夫、マホロアのことジャマだなんて思ったりしないよ」
     どきり、と胸が高鳴る。昨夜ぬいぐるみに語ったことを、カービィはそのまま見透かしているかのように喋っている。
    「だから、もうあの子のところにはいかないでほしいなあ。あんなこと言って、マホロアと仲良くなろうとしてるんだよ」
    「アノ子?」
     カービィが言う「あの子」に心当たりがなくて、ついオウム返しをしてしまう。すると、カービィは苛立ったように顔を歪めた。
    「とぼけないで。お菓子屋さんの女の子だよ。分かるでしょ? ケーキのオーダーメイドだっけ? きっと、きみともっとお話したいんだよ」
    「……ナニ言ってるノ?」
     カービィが何を思ってそんなことを言っているのか、全く理解できない。
    「鈍いなあ、マホロアは。まあ、ぼくの気持ちにも気づいてくれないくらいだもんね。無理ないか」
     彼がボクの手を掴む力が、ぐっと強まる。
    「い、イタイヨ、カービィッ」
    「ぼく、マホロアが好きだよ」
     突拍子もない言葉に耳を疑う。
    「きみともっと仲良くなりたい。深い仲になりたいって思ってた。……それなのに、きみはぼくと、近づきすぎないようにしてるよね」
    「ソレ、は」
     これ以上の仲になることを期待するべきではない、そう戒めていたから。そうしないと、欲張りなボクはきっと際限なく求めてしまうから。
    「どうして一線を引こうとするのかな、って思ってたんだけど……他のやつらが邪魔だったんだね。ごめんね、気づいてあげられなくて」
     冷たい汗が流れる。声色はいつもの優しいカービィのそれなのに、どこか空恐ろしいものを感じた。
    「でも、他の奴で埋め合わせしようとするのは感心しないな。大好きなのはぼくでしょ? そばにいてほしいのも、愛してほしいのもぼくなんでしょ? 自分のものにしたいのは、ぼくなんでしょ? ねえ、マホロア」
     ぞわり。鳥肌が立った。もはや、見透かされているというレベルの話ではない。カービィが言及しているのは、ボクが先程ぬいぐるみにかけた言葉そのものだった。
    「な、ナンデソレ、知ってるノ」
     震える声で指摘すると、カービィはニンマリと笑った。そして、アロマオイルの香りが残るぬいぐるみを手繰り寄せ、股をぐっと開かせた。
    「触ってごらん?」
     ボクが答える前に、カービィはボクの手を掴んでぬいぐるみの下腹部に導いた。すると、奥の方に綿に紛れてゴツゴツとしたモノがあることに気がついた。
    「ココにね、入れてたんだ。……盗聴器♡」
     カービィがぺろりと舌なめずりをした。まるで獲物の動きを観察する肉食動物のようだ。
    「ようやくマホロアの本当の気持ちが聞けて嬉しいな。今度は本物のぼくに言って? ぬいぐるみじゃなくてさ」
     妖しく光る彼の瞳に恐怖を覚え、じたばたともがいて逃げようとする。しかし、カービィの力には勝てず、あっさり抱きすくめられてしまう。
    「なんで逃げるの?」
     脅すような低い声に、身体が強ばる。こらえきれず、涙が頬を伝った。
    「……ああ、そっか。さみしかったんだよね。もういいんだよ。もうぼくに話しかけるの諦めなくていいし、他の子で我慢しなくていいんだよ。ぼくが好きなのはきみだけだから」
     違う、違う。ボクの浅ましい願いなんて、聞き入れてほしくなかった。叶ってほしくなんかなかった。その叫びは声にならず、はくはくと小さく息が漏れるだけだった。
    「ぼくを独り占めしていいってこと、たっぷり教えてあげるね」
     カービィはそう囁いて、ボクの唇に深く口づけた。
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