まだ認めてないからな「私がこの位置でいいのでしょうか……」
「普段ならこの位置だろう」
「それはそうですが」
「私のことなら気にしないでくれ。今日はただの観客だ」
カーンルイアグループに所属した頃に記憶を受け継いでから早うん十年。長官と再会してからは自分がやるべきことは芝居ではないとマネージャーに転向し、こうして専属になれたのは喜ばしい。だが本日初回公演の焔國戦記に連れて来られるとは思っていなかった。端とはいえ前方の席、通路側の左隣に長官、右隣にマーヴィカが座っていることで、恐らく長年の焔國戦記ファンだろう、視線が後頭部に突き刺さって仕方がない。悪辣な週刊誌共から長官を守るためには当然この配置になるのだが、俺を超えて交わされる会話は果たして聞いていて良いものか判断しかねる。
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