Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji ❤ 🌓 💋 🌹
    POIPOI 185

    syako_kmt

    ☆quiet follow

    むざこく30本ノック④
    19日目
    ただいま

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    ただいま 私は帰る場所を二度捨てた。
     追い縋る妻子を捨て、かつての主の首を持ち、ここに辿り着いた。
     この道を選んだことに後悔はないが、帰る場所がないということは自分の足跡が消えてしまったような一抹の寂しさがあった。
     しかし、幾度も住まいを捨ててきた無惨は、この感情が理解できないようで「馬鹿馬鹿しい」と一蹴された。
    「たとえ帰る場所があったとて、斯様に長く生きていては帰りを待つ者も生きてはいない。いずれにせよ我々には帰る場所などないのだ」
     その通りである。
     今まで潜伏先として世話になったところはいくつかあるが、そこの主は皆、疾うに亡くなっている。
     人間という生き物は自分が食い殺さずとも、時がくれば自然と命が尽きるのだ。
     感心している自分を見ながら、無惨も何やら思い出したようである。
    「確かに私も都を追われた時はつらかったなぁ……」
     千年の昔、京を一歩出れば何も無い田舎であり、雅やかな着物はおろか、雨風を凌げる場所もなく、日除けになる場所を探すだけでも一苦労したと大きな溜息を吐く。
     貴族の出でヤブとはいえ薬師を付けてもらうほどの地位にいた方なので、都落ち同然の出奔はさぞかし堪えただろう。
    「つらかったが、あの頃に戻りたいかと言われれば、二度と戻りたくないと答えるだろう」
     その気持ちも解る。
     過去が恋しいのではなく、自分には帰る場所がないのだと、ふと心細さに似た郷愁を感じたのだ。
     それさえも愚かだと無惨は思うだろうが思いも寄らない言葉が返ってきた。
    「ならば、ここを帰る場所と思えば良い」
    「ここを……」
    「お前より先に私がくたばることはないからな。但し、場所以上のことは求めるな。お前が戻ったと私に言おうが言わまいが、私は別にお前に対して何も言わないからな」
     そんな言葉など不要である。
     ここを「帰る場所」と言ってくれただけで、この道を選んだ自分がどれほど救われたか。
     胸の内を読んでいることは解っている。だから、敢えて感謝の気持ちを口にせず静かに頭を下げた。

    「只今戻りました」
    「おかえりなさい!」
     近くのコンビニに行って戻っただけて、皆が口々に「おかえり」と出迎えてくれる。無惨に頼まれた支払いの為、コンビニに行くから欲しいものはあるか? と皆に呼びかけると口々にコーヒーや何やを頼んできた。なのでいつも以上に出迎えが丁重だったのだ。
     しかし無惨は何も言わず無言でパソコンに向かっている。
    「戻りました」
    「あぁ」
     頼まれていた煙草を机に置きに行くと礼もなく、しれっと受け取った。
     いつものことだ、そう思いながら自分の席に戻ると無惨は小さな声で「おかえり」と呟いた。
     あの時の言葉を覚えていてくれたのか、当時の記憶が無惨にあるのかどうかすらも解らない。だが、幾世を隔てても自分にとっての帰る場所はここなのだ。そう感じて静かに頭を下げた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺✝🅰▶🅰ℹ♏🅰😎😼💖🆗🅰🇪®ℹ❤☺😭😭😭😭😭❤❤💖💖💖☺☺☺👏👏👏💒💗🍆💗😎😎😎💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    15日目
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか
    「ほら見たか!これで恐れるものなぞ何もないわ!」とかつてないほど昂るのか、「案外大したことないわ、つまらんな」と吐き捨てるのか、「太陽の方がやはりお好きで?」「白昼にも月は出ておるわ馬鹿者」みたいな気楽な会話になるのか
    陽光のもとに並んで立てるようになった二人が、それぞれ何を思って何を語らうのか  それは初恋の憧れに似ていた。
     手の届かない遠い存在という意味か、遠い昔の燦爛とした断片的な記憶のせいか、その強い「憧れ」が根底にあるから黒死牟とは意気投合したのかもしれない。
     自分たちにとって太陽とは最も忌むべき存在であり、その反面、強く憧れ、恋い焦がれた存在であった。
     今でも朝日を見ると、今際の際を思い出し身構える。しかし、その光を浴びても肌が焼け落ちることはなく、朝が来た、と当たり前の出来事だと思い出すのだ。

    「今日も雲ひとつない晴天ですね」
     黒死牟が車のドアを開けると、その隙間から日の光が一気に差し込む。こんな時、黒死牟のサングラスが羨ましいと思うのだが、まさかサングラスをしたまま街頭に立ち、演説をするわけにはいかないので日焼け止めクリームを丹念に塗り込む程度の抵抗しか出来ない。
    2129

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    13日目
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう
    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
     朝から晩まで、あの鬼上司2人に扱き使われたのだ。
    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
     初めは鬼舞辻事務所に就職が決まり大喜びした。
     今をときめくイケメン政治家、鬼舞辻無惨の下で働けるなんて……その上、彼は独身。もしかして、もしかする、未来のファーストレディになれるようなルートが待っているかもしれない!? と馬鹿な期待をして入職したのだが、それは夢どころか大きな間違いだった。
     毎日怒鳴り散らされ、何を言っても否定され、無惨だけでも心がバキバキに折れそうなのに、これまたイケメンの秘書、黒死牟が更にエグイ。まず行動原理が「無惨様のため」なので、無惨の怒りを買った時点で、どんな言い訳をしても通用しない。こちらに非が無くても、無惨に怒鳴られ、黒死牟にネチネチと嫌味を言われ、最悪のコンボが待っている。
    3210

    syako_kmt

    TRAININGむざこく30本ノック③
    17日目
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション
    黒死牟が髪をバッサリ切った時の無惨様のリアクション 何か理由があって髪を伸ばしているわけではない。
     長い髪って手入れが大変ですよね、と言われるが、実はそうでもない。短い髪の時は月に一度は散髪に行かないといけなかったが、長い髪は自分で毛先を揃えるくらいでも何とでもなる。女性と違って髪が傷むだの、枝毛がどうだのと気にしたことがないので、手入れもせず、濡れた髪を自然乾燥させることにも抵抗がない。それに短い髪と違って、括っておけば邪魔にならないので意外と便利だし、括っている方が夏場は涼しいのだ。
     つまり、ずぼらの集大成がこの髪型だった。
     特殊部隊に入った時、長髪であることにネチネチと嫌味を言われたこともある。諜報活動をする時に男性のロングヘアは目立ち易く、相手に特徴を覚えられやすいから不向きだと言われ、尤もだなと思ったが、上官の物言いが気に入らなかったので、小規模な隠密班を編成する際の長に選ばれた時、全員、自分と背格好が近く、長髪のメンバーだけで編成し、危なげもなくミッションを成功させたことがある。だが、自分の長髪にそこまでこだわりがあったわけではなく、単なる反発心だけである。
    2382