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    syako_kmt

    むざこく30本ノック用です。
    成人向けが多いと思うので、20歳未満の方はご遠慮下さい。

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    むざこく30本ノック④延長戦
    5日目
    平安の病弱ム様と幼兄上(同い年設定)

    #むざこく30本ノック
    random30Knocks
    #むざこく
    unscrupulousCountry

    平安の病弱ム様と幼兄上(同い年設定) 本来であれば貴族の御子息と友達になれるような身分ではない。父が上手く取り入って、親しくなれば中央への登用もあるかもしれないと期待して、歳が同じであった自分を送り込んだが、そんな父の目論見は外れそうだ。
     その貴族の御子息は病弱で、御両親からも見捨てられ、元服して間もない自分と同じ歳でありながら大きな屋敷をひとつ与えられ、数少ない使用人と薬師のみの出入りしかない寂しい暮らしぶりであった。
     どこぞの姫君との縁談もすべて破談になっているのは病弱さが理由ではなく、その気難しさであることは初日で解った。
    「本日より鬼舞辻殿の側仕えをすることに相成りました。継国の長子、巌勝と申します」
     御簾の向こうは横になっている人の姿しか見えない。かなり病状が重いのか、返事は聞こえないのに咳き込む声だけが聞こえるのだ。
    「鬼舞辻殿」
    「入ってくるな!」
     無礼にも御簾を捲って入ろうとしたことを、先程まで咳き込んでいた主に咎められた。
    「申し訳ございません」
     謝った後、何をして良いのか解らず、日が暮れるまで御簾の前で座っていた。
    「これにて今日は失礼致します」
     労いの言葉どころか返事すらくれない主に礼をして、家に帰った。父には「鬼舞辻殿はとても良い御方でした」と嘘を吐いた。

     翌日も、その翌日も、季節が変わっても、一日御簾の前に座っていた。
     ここに送り込まれた時、父は期待していただろうが、自分は何と無く、この先がないと悟っていた。
     武芸に秀で、学問の習得も早かった。その為に周囲より妬まれ、自分より位の高い家柄の若君たちから悪く言われることが多かった。
     弓矢もわざと的を外すように言われたり、身内に危害を加えると脅されたこともあった。もっと言えば、大学寮に入れるだけの家柄のはずが何かと理由をつけて許されなかった。
     自分がどの家の御子息の元に行くか、知らずに来たわけではない。鬼舞辻家は名門中の名門だが、そこの御子息については良い噂を聞いたことがなく、中には「死人のように白い顔をして、満足に立てない男だ」と聞かされていた。
     長くは生きられない。つまり、この御子息が死ねば自分も失職する。あまりにも無体な仕打ちである。御簾の向こうの死の気配は自分にも迫っている気がした。
     話し掛けては叱られる。来る日も来る日も黙って御簾の前で座り続けていた。
    「そう毎日、何もせず座っていては体が鈍るだろう」
     突然声を掛けられ、頭を深く下げた。
    「顔を上げよ」
    「はい」
     ゆっくりと顔を上げると、直衣で冠を着用した御子息の姿があった。
    「今日は気分が良い。少しばかり相手をしてやろう」
    「有難き幸せに存じます」
     気分が良いと言う割に顔の色は白く、少し話しただけで息が上がりそうなほど弱い呼吸だった。
     立ち上がり、体を支えようとすると、その手を振り払われた。
    「病人扱いするな。今日は気分が良いと言うておるであろう」
    「失礼致しました」
     なんと細い指と腕か。自分と同じ歳の男とは思えないほど華奢だった。
     これ以上、機嫌を損ねない為に指示を待つ。美しい庭に面した寝殿の御簾が上げられ、中に入るよう促された。
    「歳は私と同じか」
    「はい。光栄にも鬼舞辻殿のお側仕えにと選ばれました」
    「光栄なものか。私の側仕えなど運が悪かったな」
     この御方も自分の状況が解っているのだろう。この空間には死と終わりしかない。だが、そんな空気を砕きたいという想いもあった。
    「鬼舞辻殿も私のような無作法な武家の男が側仕えで御不満でしょうが、腕っぷしには自信がございますので身命を賭してお守り致します」
     そう言い返すと、気の短い主は怒るかと思いきや、気持ちが良いくらい声をあげて笑っていた。
    「言うではないか! 気に入った。巌勝、囲碁は出来るか?」
    「はい」
     それから、主の調子の良い日は囲碁を指しながら話をし、臥せっている時は周辺の警護、中央へ行く時の供も務めた。
    「お前が来てから調子が良い」
     小気味良い碁石の音を鳴らしながら主は話す。屋敷の自分と話す者などおらず、ひとり臥せて過ごしていたので、気持ちが晴れやかだと話す。
    「私が中央での役職を取り戻したら、お前にそれなりの官位を与えてやる。何なら私の妹をお前に嫁がせても良い」
    「有難うございます」
     活き活きと話す主の顔はとても輝いていた。とても病の人間には見えなかったのだが、それから間もなく、再び御簾は下げられたままとなった。
    「薬師殿」
    「これは継国殿」
     主の部屋から出てきた薬師を捕まえ病状を聞くが、あまり思わしい状態ではなく、いつ、その命が尽きてもおかしくないと話す。
    「どうか我が主をお救い下さい」
    「勿論でございます」
     しかし御簾は上がることはなく、「巌勝」と呼ぶ声も聞けなかった。その上、自分を採用した主の父より暇を出されたのだ。これは鬼舞辻家からのせめてもの情けだったのかもしれない。父には「次の仕事先も良かったら紹介する」と言ってくれたようで、もう長くないと誰もが思っているのだろう。薬師も姿を消し、屋敷からもひとり、ひとりと姿が消えていき、最後に残ったのは自分ひとりであった。
    「鬼舞辻殿」
     いつものように日暮れまでいて、初めて声をかけた。返事はないが、御簾の向こうできっと聞いてくれている。
    「申し訳ございません。私の働きが悪いので、この度、御暇を頂戴することと相成りました。この数年、鬼舞辻殿の御側に仕えることができて、巌勝は幸せでございました」
     咳き込む声すら聞こえず、本当にそこにいるのかどうかも解らない。
    「私は無学なれど史記くらいは心得ております。そこにある言葉で『忠臣は二君に仕えず』とございます。私には誇れるものは何もありませんが、鬼舞辻殿の忠臣であることが誇りでございました。生まれ変わったら、また鬼舞辻殿の側仕えをしとうございます」
    「巌勝!」
     腹に刺した刀を抜いたのは他でもない病床の主であった。そんな力があったのかと痛みで遠退く意識の中で思っていた。
    「愚かな真似を……」
     ぽたりぽたりと主の瞳から溢れ出た涙が頬に落ちる。自分の為に主が泣いてくれている。こんな幸せなことがあるかと思っていたが、突然、口を吸われ、口内に鉄の味がする液体が流れ込む。それが血だとは気付かず、その甘さに酔ったような気分になり無心で貪った。
     すると全身が焼けるように熱くなり、気付くと腹の傷は塞がっていた。
    「一体何が……」
     起き上がり見た主の姿はよく見ると溌剌としており、健康そうに見えたが、瞳が血のように赤かった。
    「お前をこのような目に遭わせとうはなかった……」
     手を握り泣く主の姿の向こう側にある御簾の内側を見て全てを悟った。
    「永遠に御側におります……鬼舞辻殿」
     そこから長き夜を共に生きることになるが、少しも後悔はなかった。
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    13日目
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    零余子、上司共へのストレス発散にBL同人誌にしてしまう 今日もやっと1日が終わった。
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    「おい、零余子!」
    「はい!」
    「零余子!」
    「はいー!!!!」
     多分、この数年で確実に親より名前を呼ばれている。これまで割と要領良く生きてきたので、こんなに怒鳴り散らされることはなかった。
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