獣と人間戦場となった禁区奥地には、血と硝煙の匂いだけがある。ジェパードは、そこに独り立っていた。既に左手の感覚は無く、伝わってくるのは鈍い痛みだけだ。足元に転がる硬い外殻は粉々になって、静かに風化していた。
危険を孕む敵はもう居ない。しかし、ジェパードの脳は燃えんばかりに熱を持っていた。つま先がむず痒さに震える。自身の中にいる獣が、獲物を求めて牙を剥き出しにしている。
だが、勝ったのだ。敵はもう居ない。
何度目の勝利かを数えるのは、もうやめていた。それをするだけ無駄だと、ジェパードは知っているからだ。
最前線で、護るべきベロブルグを脅かす化け物と戦い屠る日々に終わりなんてないのだろう。この星が本来、穏やかな気候で住みやすい所だったなんて、本当は夢物語だったのではと思う時があった。
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