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    アカツキカナデ

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    アカツキカナデ

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    webオンリー当日企画、貰ったお題で紡ぐSS
    1つめのお題昇化です~

    #白鬼
    whiteGhost

    #お題で紡ぐ白鬼SS 1「さて、紆余曲折あって我々はこう言う関係に落ち着いたわけですが」
    「待て、肝心な所が全部すっ飛んでる」
     これは、とある日、極楽満月でのお話である。
     時刻は夜四つ、店から扉を二枚隔てた白澤の部屋。こんな時刻のこの場所で、この二人の取り合わせは非常に珍しい。ここに至るまでに気の遠くなるような時間と、幾つもの過程を挟んでいたわけだが。
    「私だってここまでの経緯を語れないのは些か心苦しくもあります。ただ、如何せん思った以上にお題が集まらなくてですね」
    「メタ発言やめろ」
    「無駄に書くことが出来ないので、こうして褥からの開始となりました」
    「それじゃあ仕方ないか」
     それで納得するのもどうなのか。と思いつつ細かいこと気にしていたら話も事も進まない。鬼灯は自身を納得させると、貝ノ口に結んだ帯に手を掛ける。
    「ちょっと待った」
     その手を白澤は勢いよく掴み、笑顔を作って首を振った。
    「そこは僕にやらせてよ」
     それはいつも鬼灯に向ける表情とはまるで違う。ここに至るまでの時間が、感情が作り出した柔らかさだった。それが今の鬼灯にとっては甘すぎて、くすぐったいことも知らずに。鬼灯は白澤の手を振り解くと、ゆっくりと息を吐いた。
    「嫌です、貴方にやらせるとしつこそうだ」
    「されたこともない癖に。やらせる前からそう言うこと言うなって」
     その手を改めて引き寄せ、白澤は唇を押し当てる。柔らかな感触が肌を滑り、湿度を持った吐息が指先を擽る感触。
     まさか、コイツとこんな関係になるなんて。
     天地がひっくり返ってもあり得ないと思っていたことが、現実に起きている。
    「ね……僕にやらせて?」
     白澤はとっておきの上目遣いで鬼灯に言葉を向ける。それ以上の抵抗も反論も無駄だろう。それは今まで散々やってきたことなのだから。手を振り解かなかったことを返事と取った白澤は鬼灯の帯を解くと、肩に手のひらを置き、体重を掛ける。押し倒されてやるのは癪だったが、ここは敢えて力を抜いておいた。
     それでも身体には緊張が走っている。当然だ、同性と褥を共にするのは初めてだし、その相手が白澤だと言うのも未だに信じがたい。それをお互いに望んだ結果とは言え、自分がこちら側であることには納得がいっていない。
    「そう硬くなるなって。優しくしてやるから」
    「気色が悪い。いっそ雑に扱われた方がまだマシです」
    「はいはい。うんと優しくね」
     白澤の手のひらが、指先が、長着の表面を撫でる。鬼灯の見上げる天井との間にある顔はいつになく楽しそうで、文句を付ける気分ではなくなった。いっそ、天井の染みでも数えていてやろうかとも思ったが、生憎とこの部屋は染みらしい染みは見当たらない。
    「こら、集中しろって」
     天井へ視線をうろうろさせていることに気付いたらしい。白澤は指先で鬼灯の顎を引き寄せ、自分の顔へと視線を誘導する。真正面から視線を合わせることすら、今の鬼灯は照れ臭かった。
    「そう言われましても。こちとらドえらい緊張してるんですよ」
    「うっわ、マジで? 天下の閻魔大王第一補佐官が?」
    「そこで仕事の肩書き出さないでください。怒るぞ」
    「ごめんごめん」
     そう言いながら、白澤の手のひらは下へと滑っていく。長着の隙間に手を差し入れ、襦袢へと辿り着く。性急すぎるのも困るが、白澤の丁寧すぎる仕草は生温く、もどかしい。それが記念すべき初夜であっても、待ち望んだ瞬間なのだから、もう少し。
    「あれっ」
     鬼灯がねだる寸前。白澤は間抜けな声を上げて動きを止めた。手のひらが大腿を擽っていた瞬間、何かに気付いたようだ。とは言っても鬼灯は風呂に入って準備を整えたぐらいで、特別変わったことをした覚えはない。
    「どうかしました?」
    「お前……これ……」
     白澤の手がおそるおそる布を捲る。緋色の襦袢の下にあるのはなんてことのない、鬼灯にとっては見慣れた大腿である。
     しかし白澤にとっては見慣れぬもの。いや待て、男(他人)の大腿は確かに見慣れないものだろうが、そんなこの世の終わりのような表情になるだろうか。女性のそれと比べたら色気もなく、白澤の目には筋肉の塊にしか映らなかったのかもしれない。いくら惚れた腫れたと口では言っていても、身体に対する反応ばかりはどうしようもない。
     むしろ、これで萎えるようなら形勢が逆転するのでは。鬼灯がうっすらと期待を持った矢先、白澤の震える手のひらが大腿を撫でた。
    「……お前、いつも穿いてるあの無粋なステテコは?」
    「は? 無粋とは失礼な。確かに高級品でもなし無粋と言えば無粋ですが」
     今日はこう言う展開になる予定だったし、布一枚多いだけでもどかしかろう、白澤の言う通り無粋な格好だし、萎える要員にしかならないだろうと思い湯浴みのときに脱いでおいたのだ。鬼灯は良かれと思って取った行動だったが、白澤は思いも寄らない方向へと怒りを向けた。
    「僕がどれだけアレを脱がせるのを楽しみにしてたと思ってんの」
    「はぁ」
     白澤はぱっと起き上がり、鬼灯の大腿に顔を埋める。
    「あーん! お前が恥じらいながら腰を浮かせたところをスマートに脱がせて、色気のないステテコからこの白い足がすっと出てくるのを夢見てたのに!」
    「気持ち悪ッ」
    「返せよ僕の妄想!」
     鬼灯は有無を言わせず白澤の顔面に踵をめり込ませると、捲られた襦袢と長着を整える。敷布の上に広がっていた帯を掴み、適当に巻いて寝台から降りた。
    「そんなにステテコが恋しけりゃ、脱衣所に置いてあるからそれで抜いてください。差し上げます」
     こうして、二人の初夜はステテコ一枚で大失敗に終わったのである。


     お題:無粋なステテコ
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