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    アカツキカナデ

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    アカツキカナデ

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    webオンリー当日企画
    貰ったお題で紡ぐSSの第3話です
    ここまで全年齢~

    #白鬼
    whiteGhost

    #お題で紡ぐ白鬼SS 3 時は流れて初夜から一週間ほどが経ったある日。ようやく時間が取れた鬼灯は改めて極楽満月を訪れ、出会い頭に金棒で白澤の頭を潰した。突然の猟奇的場面に遭遇した客は一目散に現場から散り、修羅場を察した桃太郎は兎達を連れて急ぎ非難した。
     つまり、あっさりと店内に二人きりになったわけだ。
     鬼灯は血塗れになった金棒を振って壁に立てかけると、息を吐きながら椅子に座った。
    「先日は酷い目に遭いました」
    「酷い目に遭ったのは今まさに僕だが?」
     自身の頭部から噴き出した血が作った溜まりから首を持ち上げ、白澤は文字通り会わせる顔のない表情で鬼灯を眺めてきた。いくら死の概念から外れた存在とはいえ、殴られれば痛いし怪我もする。ただ今回は出会い頭に殴られるだけの理由が白澤にはあるわけで。聞き分けが良いのか、少しは自分が悪いと思っているのか、白澤は鬼灯が殴ったことに怒りを返してこなかった。白澤の対応に甘えている感触も否めないことに、鬼灯は自分に対しても腹が立っていた。
    「この店は常連客にお茶の一杯も出さないんですか?」
    「お茶を出すタイミングがどこにあった?」
     白澤は立ち上がって三角巾を外し、血塗れになった顔を拭いた。その仕草を挟むだけで、怪我は治りいつもの表情が顔を出す。神というものは何ともいい加減な存在である。それが余計に癪に障った。機嫌の直らない鬼灯を置いておいて、白澤は赤く染まった白衣を脱ぎ、奥の部屋へと消える。鬼灯が来て客が去ったとは言え、まだ極楽満月は営業中である。新しい白衣に着替えて三角巾を結ぶと、ご機嫌取りとして鬼灯に冷茶と茶菓子を持ってくる。
    「そんなこと言ってるけどさ、いい思いをした、の間違いじゃない? ちゃんとお前の好きだって言ってたこともしたわけだし」
     初夜の二週間前、嫌よ嫌よも好き、な話をしたおかげで、白澤は鬼灯の要望に従って満足する奉仕を目一杯してくれたわけで。初めての夜にしては大層盛り上がったし、それに関しては文句を付けようがないし、その前に白澤が騙し討ちをしたことも元はと言えば鬼灯が嫌がらせをしてやろうとそんな格好で挑んだのが悪いわけで。鬼灯は出された冷茶を口に運び、菓子に手を伸ばした。
    「この話題は脳天を割ったのとこの茶請けで手打ちにします」
    「素直じゃないなぁ」
     そう言って白澤は緩く笑うと、自分の杯子にも冷茶を注いで向かいに座る。
    「で? 今日は気晴らしに来たわけ?」
    「まあそれもありますが、時間が空いたので」
     鬼灯が休憩時間を兼ねて極楽満月を訪れるのは珍しいことではない。閻魔殿や個人的な注文をしょっちゅうしているし、閻魔大王や仕事に対しての愚痴を溢したり、知識の神に対して相談事を持ち込んだり、桃太郎にお供三人の近況を話したりと用件はいろいろある。しかし、今日はそのどれでもない。
    「なに、わざわざ会いに来てくれたの?」
    「そうですけど?」
     にやけた顔の白澤に、鬼灯は間髪を入れず真顔で返してやった。途端に白澤は表情を変え、目元を手で覆うと長く息を吐き出す。おかしなことを言ったつもりはなく、そんな反応をされるとは思っていなかった。
    「……どうかしました?」
     鬼灯が尋ねると、白澤はゆっくりと顔から手を外す。自身を落ち着けるかのような深呼吸を一つして、天井を仰いでいた。釣られて鬼灯も上を向くが、天井には干した薬草がぶら下がっているだけで、蜘蛛の巣一つ無い。
    「私に見えない何かが見えてたりしませんよね?」
     問い掛けるも、白澤は全くこちらを見ようともせず、ただ一言。
    「そっちかーい……!」
    「は? どっちです?」
     困惑する鬼灯を余所に、白澤は立ち上がる。机をぐるりと回り込んで鬼灯の手を取り、椅子から立ち上がらせた。なんだなんだと困惑する鬼灯を余所に、白澤は手を引いて部屋の奥へと連れて行く。そこは一週間前に大層楽しんだ場所で、寝台に押し倒されてもなお、鬼灯は困惑していた。
    「え、それってそう言うことでしょ?」
     白澤は鬼灯の言葉の何をどう受け取ったのだろう。否定する前に降り注ぐ唇、熱の入った指先、鬼灯はあれよあれよという間に流されてしまったのだった。

    お題:「そっちかーい!」
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