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    くりと

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    くりと

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    ⚠️blood/violence
    探索者GBの小話
    探索者BFが痛覚あんまないから恐怖心とか薄くて自己犠牲を余裕でやっちゃうというアレです

    #FNF_Investigator_AU

    夜の郊外に、獣の唸り声と激しい戦闘音が響き渡る。
    探索者2人ーー探索者BFと探索者GFは、探索途中で出会したクリーチャー〈猟犬〉2匹と交戦していた。
    1匹の〈猟犬〉が一際大きく吠えてBFに踊り掛かる。
    それに対し、BFは待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべつつ咄嗟にlaf〈マイク〉を構え、全身全霊を込めた歌声を放った。
    マイクを通したその歌声は青白い矢となり、向かってきた〈猟犬〉の首を射貫く。
    それはそのまま地面に倒れ伏し、動かなくなった。
    残るは1匹だけ…といったその時。
    目の前で同胞が斃されたことに狼狽したのだろうか、生き残った〈猟犬〉は、BFに向かって伸ばさんとしていた槍状の舌の切先を急にGFに向けた。
    「…っ!?」
    突然の出来事に、人間の身体の扱いに慣れきっていないGFは動くことが出来ず、固まってしまう。
    槍状の舌が目の前まで迫り、GFは俯き目をギュッと瞑った。
    …が、いつまで経っても痛みどころか衝撃すら伝わってこない。
    そろそろと目を開けてみると。
    …まず視界に飛び込んできたのは、ポタポタと滴る液体。
    それは悍ましいほどに赤く、鉄錆のような香りと共に地面に落ちては小さな花のような紋様を刻んでいく。
    それが血であるということに気づくのに、そう時間はかからなかった。
    「…え」
    我に返り、勢いよく顔を上げる。
    槍の舌はGFの文字通り目と鼻の先で止まっており、鋭い切先は血に濡れ、絶え間なく赤い雫が溢れている。
    そしてその血は、GFと〈猟犬〉の間に割り込むようにして伸ばされたBFの右腕から流れていた。
    GFを庇ったことにより、槍の舌の先がBFの利き腕を完全に貫通していたのだ。
    やっと状況を飲み込んだGFはサッと血の気が引くのを感じた。
    「BF!!!」
    しかし、当のBFはそんな彼女の様子を見て、安堵したようなため息を漏らし、そして、

    「セーフ!!危なかったね!」

    と笑顔で言い放った。
    あまりにも明るく、まるで何事もなかったかのような笑顔で。
    「いや、あの、BF…?セーフって、あなた…
    本気で言ってんの…?」
    「?…そうだけど?
    だってGFが怪我しなかったから」
    GFは今までにないほど困惑した。
    今のBFは重傷を負っており、血も止めどなく流れている。かなりの苦痛のはずだ。
    なのになぜこんな状況で笑って、しかも他者の心配をしてられるのか。
    「そんなことより、コイツを仕留め…うわっ!?」
    〈猟犬〉が痺れを切らしてBFの腕に刺さっていた舌を一気に引き抜き、再び襲い掛かろうと構える。まだ諦めていないようだ。
    「しつこいな…いくよGF!」
    「ちょ、ちょっと待って!早く治さなきゃ…」
    GFの制止はBFに届くことはなく、彼は左手でマイクを構えて〈猟犬〉に向かっていった。


    「オレね、昔から痛覚が鈍いらしくってさ。
    小さい怪我だったら全然痛みとかわかんないんだよね。
    まぁ、今のは割と痛かったけどさ、それでも全然平気だよ?」

    数分後、もう1匹の〈猟犬〉を斃した後、GFの治療魔法を受けながらBFはそう語った。
    GFは黙ってそれを聞いている。彼女は穏やかな笑みを湛えていたが、瞳の奥は明らかに怒気を孕んでいた。
    「…なぁ、なんでそんなに怒ってんだよ?」
    不思議そうにBFがそう聞くと、GFは光のない目で彼を見据えた。
    「なんで怒ってるのって…。逆に怒らない要素がどこにあるのよ?
    痛みを感じないから自分は怪我していいなんてこと、絶対ありえないから。
    そんな危険な思考で行動してたら、あなたすぐに死んじゃうわよ。人間は、あなたたちが思っている以上に弱いんだから」
    GFの言葉に、BFは食い下がる。
    「でも、GFの治療魔法があればどんな怪我でも治るだろ?」
    その言葉に対し、GFはふるふると首を振る。
    「私の魔力にも魔術にも限度というものがあるわ。今は魔力を奪われているから尚更よ。
    とにかく、私は…」
    GFは、BFの損傷した右腕にかざしていた手で彼の頬に触れた。
    「恩人で、大切な仲間であるあなたが傷つくのは見たくないの。
    …お願い。もっと自分を大切にして…」
    そう言う彼女の目からは怒りの色が消え、代わりに悲しみと不安で微かに潤んでいた。
    「……………」
    初めて見るGFの表情に、流石のBFもたじろぎ、肯定も否定もできず、右腕に視線を落とす。
    傷はもうすでになくなっていた。
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