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    くりと

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    くりと

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    探索者AU小説第2話。
    前回からだいぶ期間空きましたがなんとかできました
    ⚠️今回からホラー、グロテスクな描写が多くなります
    それでも大丈夫な方は暇なときにでも生温かい目で読んでいただけたら幸いです。

    #FNF_Investigator_AU

    ◆多分20秒で分かる前回のあらすじ◆
    なんかよくわからないうちに古びた屋敷に連れてこられたBF、GF、Picoの3人。
    自身の置かれた状況を爆速で飲み込み、とりあえず庭を探索し終え、屋敷に突入しようとしました。
    しかし、最初に足を踏み入れたBFを出迎えたのは、この世のものとは思えないほど名状し難く、悍ましい怪物だったのです……────



    epsode:白の家-week2-

     (ラスボスじゃん…絶対ラスボスじゃんコイツ……)
    BFは余計なことを考えつつ口を真一文字にきゅっと噤み、瞬きをも忘れて、突然視界に飛び込んできたクリーチャーを凝視していた。
    一方のクリーチャーも黒い瞳をギョロリと巡らせ、自身の根城に突然飛び込んできた侵入者BFを睨みつけ、両者の視線が絡み合う。
    正直言って、こういった気色の悪い容貌の怪物──クリーチャーは今まで何度も目の当たりにしてきた。一部のクリーチャーは最早見慣れ始めてるといっても過言ではない。
    だが、探索現場入りした瞬間にクリーチャーが待ち受けているような状況は、今回が初めてだった。
    そのため流石のBFも、かなりびっくりして元々短絡的な思考が一瞬全て無に帰し、その場で凍りついてしまった。
    大体のクリーチャーは、目を合わせなければ大体けるとGFがアバウトに言っていたが、バッチバチに正面で待ち構えられていたために“運命”みたいな目の合い方をしてしまって、もう完全に詰みだ。不可抗力だ。
    「…BF?どうしたのそんな所で固まって」
    そんなラスボス(?)との開幕エンカウントからの睨めっこタイムに洒落込んでしまったBFに、GFがいつもの口調で問いかけてくる。
    BFはクリーチャーと目を合わせたまま口を開く。
    「なぁ…オレらってラスボスエンカRTAでもやってたっけ?」
    「…BF、あなた何言ってるの?何よあーるてぃーえー…?って」
    「え、だって……なんか…なんか目の前になんかいるじゃん…」
    「え?」 「は?」
    素っ頓狂な声をシンクロさせるGFとPico。
    「ゑ?」
    それよりマヌケな声を出すBF。
    思わずクリーチャーから目を逸らし振り返る。
    2人ともどうしたのかと様子を窺うような目でBFを見ているだけで、クリーチャーに対するリアクションはない。
    こんな主張の激しいクリーチャーが目の前に居るのが分かっていれば、普段のGFだったらすぐに警戒するように教えてくれるだろうし、Picoだっていつもなら真っ先に〈銃〉を構えるはずなのに。
    「本当に何言ってるの?ここは私たち以外何も居ないわよ?」
    「嘘ぉ!?だってここに……」
    勢いよく視線を前方に戻す。
    が、そこにはもう何も居ない。
    「あれぇ……????」
    BFは思わず舌足らずな声を出してマヌケ顔で固まった。
    が、すぐに餌を求める雛の如くPi-Pi-と騒ぎ立て始める。
    「クリーチャー居たもん!!!」
    「BF、BF落ち着いて…」
    「オレ嘘ついてない!」
    「わかったから一旦静かにして?おねg」
    「BF嘘つかない!!」
    「黙りなさいって」
    「ウッス」
    笑顔で圧力をかけられてようやっと大人しくなった。
    ため息一つついたのち、GFは再び問い直す。
    「…それで?どんなのが見えたの?」
    BFはついさっきまで目の前に居たはずのクリーチャーの姿を思い返す。
    暫く唸りつつ考えたあと、
    「……アゴ外れててなんか…こう…ゴムっぽいロープぐるぐる巻きのでっかい犬の頭みたいなやつだった」
    と答えた。
    「…!それって…!」
    呆れて細まっていたGFの目が見開かれる。
    「なんか心当たりあるの!?」
    BFの期待を含み弾んだ声を受けたGFの表情は、しかし可愛らしい唸り声と共に名状しがたい神妙な面持ちに歪んでいき、
    「…………新種のクリーチャーかしら……?」
    と辛うじて言葉を捻り出しただけだった。
    「えー、GFでも分からないことってあるんだなぁ」
    「ええ…私の記憶の中には存在しないわ…本当に何なのかしら?」
    顔を見合わせて再度うーんと唸る2人。
    「分からないわねぇ…。 BFあなた幻覚でも見てたんじゃない?」
    「えぇ〜〜〜幻覚かぁ…。あんな気持ち悪いクリーチャーの幻覚見るんだったら、あの1つだけ開いてた窓から入った方がよかったかもな〜」
    「でもマイク作戦ならPicoに真っ向から否定されてたわよね?どうやって入るつもりなの」
    「あーそれな……
    …………Picoに投げ入れてもらうとかかな?」
    「正気か?普通に無理だが??」
    急に焦点が自分に向いたPicoは思わずツッコんだ。
    「マジ!?じゃあその筋肉は一体何のためにあるの!?」
    「少なくともお前を2階の窓へ放り投げるためにあるわけじゃねぇよ」
    「いーや!Picoならできるね!!
    てゆーか、さっきからオレの意見全否定しといてそれはないだろ〜!?責任とれよ〜!」
    「さっきから何言ってんだお前…」
    Picoは謎の会話に頭を抱えそうになった。
    昔からBFの発言は突拍子もなく、どこかネジが飛んでいるような感じだったが、“あれ”から3年経って再会した今も全然変わってなさすぎて逆に感心してしまう。
    それもこれも本人は気づいていないし、覚えてもいないのだろうけど。
    …いや、今はそんなことどうでもいい。
    「…とにかく、とっとと探索進めるぞ」
    「「はーい」」
    3人は自分たちの現在位置から一番近い、左側の扉に入ることにした。

    ◆◆◆

    部屋の中は真っ暗だった。
    窓がカーテンで閉じ切られているのだろうか、一欠片の自然光すら入ってこない、一面黒で塗りつぶしたような闇が広がっている。
    GFがキュロットのポケットを弄ってライトを取り出そうとしている間に、パチ、という音がしたかと思えば、少し間を置いて周りが少し明るくなる。
    Picoが壁に付いていたいくつかのシーリングライトのスイッチの1つを押した音だった。
    「…電気は一応通ってるみたいだな」
    「そうね。調べやすくなって助かるわ〜」
    全てのスイッチをつけると、室内全体が暖色系の明かりで照らされる。
    明かりを得て一番最初に目に入ったのは、空間の大部分を占拠する本棚だった。
    同じようなものが奥にもあと2列並んでおり、文庫本サイズから辞書のように大きなものまで、種類豊富な本が大量に収められていた。
    入り口にいる3人から見て右側には扉が、左側には小さな書物机と椅子がある。
    一通りの部屋の状況を見ると、ここは書斎だということが分かるだろう。
    ただ、普通の書斎…というか、普通の建築物の構造からして不可解なところが一つ。
    「なぁ、この部屋…窓どこ?」
    そう。
    本来の間取り的に書物机側の壁にあるはずの窓が、ない。
    外から見ていた限りでは中の様子こそ分からなかったものの、決して窓自体がないというわけではなかった。
    なのにいざ室内に入ってみると、そこは白塗りの壁で囲まれた閉塞的な空間だ。
    「なんだよこの家、キショい構造してんなぁ…」
    「これキショい構造で片付けていいのかしら…?」
    「……」
    「あー、ダメだ。一部屋目なのに情報量多すぎる…。
    つーかこの本棚、めっちゃ高い所まであるし。
    届かないし本多すぎるって…」
    BFがぐるぐる目で弱音を吐く。
    彼の言う通り、どの本棚も天井に届くほどの高さがあり、Picoが背伸びしてやっと最上列の本の背表紙に触れられるかどうかといったところだった。
    「BF、こういう本とか調べるってなったら途端に元気なくなるわね」
    「だって本読むの苦手なんだもん…。
    ここ調べるの、どこかに台とかないか探してからにしない?」
    「そうね〜。じゃあ、右の部屋見てみる?」

    ◆◆◆

     右側の扉を開くと、鉄錆のような独特の匂いが微かに漂ってきた。
    照明のスイッチを手で探り、パチ、と押すと白熱灯の白々しい光がちゃんと室内を照らしてくれる。
    この部屋は物置のようだ。机や椅子、その他家具類や錆びた工具類などが雑多に散乱している。3人のお目当ての脚立や手頃な台も、向かい側の壁に付けられたもう1枚の扉を塞ぐように都合よく置かれていた。
    これはラッキーと言わんばかりに各々手に取っていく。
    Picoが最後に小さい踏み台を取ろうと少し屈んだその時、ふと床に小さな黒いシミが付いているのを見つけた。
    しかもよく見ると、そのシミは部屋の左奥へ疎らに続いており、奥に行くほどその面積は広くなっている。
    「……」
    一瞬ペンキかとも思ったが、部屋に入ったときから鼻をつく異臭がより濃くなっているという事実が、それを否定する。
    じっと目を凝らしていると、脚立を担いだBFと踏み台を持ったGFが視界の端からひょこっと顔を出してきた。
    「Pico?どした?」
    「何かあったの?」
    「……床」
    「床?…………あ、これって…」
    「ん?……あらぁ……」
    「…………ちょっと見てくる」
    Picoは奥へと歩みを進める。
    2人もその後をついてこようとしてきたので、少し振り返って
    「お前らは来なくていいだろ」
    と言い放つと、
    「いやだって、オレたち運命共同体だし」
    「ねー」
    などと訳の分からないことを言う。
    「……」
    いちいちツッコむ気力もなく、呆れつつシミを辿って進んでいくと。
    「…………」
    「わぁ」
    「…!」
    物が小積み上げられていた部屋の一角が赤黒く染まっており、その中に人間の男性が1人、壁にもたれかかって座りこんでいた。
    だが、その男の身体は既に乾いた赤黒の液体に塗れ、投げ出された足は膝から下がなく、だらりと垂れ下がった両腕は様々な方向に折れ曲がり、首もあらぬ方向に捻れている。
    それは血溜まりの中、惨い状態で絶命した人間の死体であることに違いなかった。
    「あーーーまぁまぁまぁ…。なんていうか…予想はしてた」
    「ここまで酷いとは思わなかったけどまぁ…そうよね…」
    「じゃあ尚更なんでついてきたんだよ…」
    Picoはため息交じりに呟きつつ、死体に目を向ける。よく見ると両足の断面が、食い千切られたようにぐちゃぐちゃになっていた。
    この男が一体どういう状況で死んだのか、そして最期に何を見たのかは分からない。しかし、この家が人間の力では到底敵わないものの住処であるということを、その場の全員が理解するには十分すぎたのであった。

    ◆◆◆

    「オレここぉ〜〜!!」
    「じゃあ私こっち調べる〜〜!!」
    「無駄にテンション高いの本当になんなんだ」
    物置から脚立や台を拝借し、足早に書斎に戻ってきた探索者たちは、(約1名除き)どの本棚を調べるかで盛り上がっていた。
    惨い死体を直視した直後とは思えないテンションだ。
    最初に通った扉側から見て、BFは一番奥、GFは真ん中、Picoは一番手前の本棚の調査に取り掛かることにした。

    ◆◆◆

    BFが選んだ本棚には分厚い本がいくつも並んでおり、一冊だけでも千ページは余裕で超えそうなものばかりであった。
    「わァ…」
    一冊一冊手に取って調べるのが億劫すぎてぼんやりと全体を眺めていると、膨大な量の本の中に混じって1つ、明らかに皮や紙などとは違う材質で出来たものを見つけた。
    平生の目線より上に位置するそれを、脚立に登り手を伸ばして何とか掴み、取り出してみる。
    果たして、それは1辺が本棚の奥行き程の長さの木の立方体だった。
    程々の重量があり、分厚い板で構成されているのか、継ぎ目の1つ1つに懇切丁寧に釘付けがしてある。
    (何だこれ、木の…箱…?)
    訝しみつつ上下に振ってみると、何やらカタカタと音がする。どうやら中に何か封印されているようだ。
    だが、釘打ちされたその継ぎ目は寸分の狂いもなく、手でこじ開けられそうな箇所は全然見当たらない。
    ──さて、どうしたものか。
    BFは数秒考えたのち、妙案を思いついた。
    (…これはこいつの出番かな!!)
    そして意気揚々と掌を天に掲げたかと思えば、そこに青い光が顕れる。
    光は瞬く間に棒状のものを形作り、彼が手に取ったその刹那、一際強い光が迸った。
    光が霧散した後にBFの手に握られていたのは、軸に微かな青い光を放つ紋章が刻まれたマイクだった。
    それを構えると、音量を抑えた声で歌い始める。
    すると、目の前に青い閃光が迸り、次の瞬間には矢や槍を思わせる鋭い形状の強い光が2本、前方に放たれた。
    青い光の矢──BFたちは〈歌の矢〉と呼んでいる──は、1つは本棚に、もう1つは木箱狙った所にクリーンヒットした。…そこまではよかった。
    ここは小さな書斎の中で、本棚と木箱はまさにBFの目と鼻の先にあった。
    そして元来〈歌の矢〉は結構遠くまで届くものだ。
    そんな遠距離攻撃技を超至近距離で喰らえば、大ダメージになることは間違いない。
    案の定、轟音と共に本棚は大部分が崩落、木箱は文字通り木っ端微塵になってしまった。
    「アッ…やべ……」
    ──ちょっとやりすぎたかもしれない。
    嫌な予感に一瞬固まったその時。
    「BF?」
    「」
    BFは声ともつかない声を漏らした。
    背後から聞こえてきたその声は人間の少女のものとは思えないほど冷たく、形容し難い威圧感を孕んでいたからだ。
    振り返ると、声の主──GFがニコニコして立っていた。
    しかし、その目は全く笑っていない。
    一方Picoはその後ろで、何やってんだ、というような白い目をBFに向けたまま黙って立っていた。
    笑顔(?)のまま、GFはゆっくりと問いかける。
    「なんで本棚を壊したの?」
    「……」
    「BF。怒らないから正直に話してごらんなさい?」
    「もう怒ってるじゃん(ボソッ)……」
    「なぁに????」
    「ナンデモナイデス」
    かける圧を強くしたところで、GFは質問を変えてもう1回問いかける。
    「なんで室内で〈歌の矢〉を放ったの?」
    腹を括ったBFはやっと口を開く。
    「そ…そこに開かずの木箱があったから……」
    いつもはやかましいくらいに元気な声が、情けなく萎れていく。
    「中に何か入ってたっぽいから、取り出そうと思ってぇ……」
    冷や汗が止まらない。
    しかし、GFによる圧迫面接は続く。
    「あらそう。
    それで?中に入ってたモノは無事なの?」
    「Pi…………」
    引き攣った笑みを顔面に貼り付けたまま、ギギギ…と壊れかけのロボットみたいなぎこちない動きで木箱が置いてあった床を見る。かつて箱の形を成していた木片たちが大量に散乱している中に、今までなかったものが1つ落ちているのに気づく。何やら雰囲気のある古めかしい本だった。
    表紙には“Diary and Grimoire日記及び魔導書”とある。
    裏返してみれば、「のど」の丁度真ん中から背表紙にかけて抉れ、後半のページが完全に消滅していた。
    そっと開くと、破れたページがパラパラと零れ落ちてくる。
    「あー…、はは…。ちょっと何ページか読めなくなっちゃったみたい…」
    「BF…………」
    GFは呆れに満ちたため息をついた。呆れが怒りを通り越してしまったらしく、さっきまで痛いほど感じていた圧は一応消えていた。
    「ご、ごめんて…。でも木箱開ける方法これしか思い浮かばなかったし…」
    「物置に工具あったじゃない」
    「」
    BFは再び声ともつかない声を漏らす。彼に工具で壊すという頭はなかったのだ。
    「……まぁ、読めなくなったところは仕方ないわ…」
    GFは再び呆れてため息をつき、
    「lafをこんな狭い空間で無闇矢鱈に使わないこと。あなたのは特に破壊力高いんだから。分かった?」と、おいたをした子供にかけるような言葉と口調でBFに言い聞かせる。
    「ふぁい…」
    肝心のBFはというと、未だ失意の中にいるようで、いつも以上に腑抜けた顔で力のないへにょっへにょな返事しか返すことができなかった。
    そんな彼の様子にちょっと圧かけすぎたかしら、と苦笑いを浮かべていたGFだったが、それも束の間、真剣な眼差しを古めかしい本に向けた。
    「…それ、表紙に魔導書って書いてあるのよね」
    「…そうらしいな」
    心ここに在らずなBFに代わり、Picoが返答する。
    GFは少し考え込んだ後、BFから本を取り上げ、数ページ繰ってみた。
    軽く目を通しながら、もしかしたら何か分かるかもしれないと呟くと、2人に向き直る。
    「この魔導書、私に解読を任せてくれないかしら。
    その間、2人で他の部屋を見て回ってもらえると有難いんだけど」
    「…おっけぇ…………」
    「……(頷く)」

    ◆◆◆

    「今回はいい感じに出力調整できたと思ったんだけどなぁ…」
    「……」
    GFを書斎に残し、BFとPicoはエントランスホールに戻ってきた。
    BFはさっきのことをまだ引きずっているらしく、不貞腐れた表情でぼやいている。
    それに対して、Picoはさしたる反応もせずただただ聞き流していた。
    「それにさ、なんでこうも、狙いから外れたり余計なところにまで打ち込まれちゃうんだろうな〜、オレの〈歌の矢〉って…」
    「……」
    「やっぱPicoみたいに狙ったところに百発百中できたらかっこいいよな、マジであれどうやってんの?」
    「……今はそんなことどうでもいいだろ」
    「えぇ〜つれないなぁ…。確かにそうだけどさぁ」
    冷たくあしらわれてさらにむくれるBF。
    が、すぐにいつものアホ面に戻り、
    「まーいいや。次あの部屋いこーよ」
    と言って目の前にある──丁度書斎の反対側に位置する──扉を指差しつつPicoをせっつく。
    「…いや、その前にちょっといいか」
    「?どしたの?トイレ行きたくなった?」
    「違う。
    ……さっき、物置に入って正面に扉あったろ。
    まずそっちを調べないか」
    Picoの言葉を受け、BFはさっき入った物置の全容を思い浮かべる。
    書斎の件で完全に忘れてたが、彼の言う通り、脚立や踏み台が立て掛けてあったその壁には扉があった。
    また、両階段の方を見れば、2階の廊下の下にも空間が続いている。物置部屋の向こうに空間があるのは確かだ。
    「でもさ、それってまた書斎に戻るか結構回り込むかしないとじゃんか。
    近い方から行った方がよくね?
    それにあの死体があった物置の向こう側行くってなんかヤじゃない?今更だけど」
    少し頭を捻った後、珍しく割と明確な理論を立てて話すBF。
    それが意外だったのか、Picoは若干目を見開いて彼を見下ろした。
    「…お前、たまにはまともなこと言うんだな」
    「えぇ〜〜?おいおいPico〜、オレを褒めてもアメぐらいしか出ないぜ〜?」
    「……」
    褒めてないのにすごいドヤ顔でニヤけつつ、いつの間に取り出したのかアメやらクッキーやらが入ったビニール袋をチラつかせてくる。
    本当に何なんだこいつは…とため息を吐いて、Picoは半ばBFを無視するように扉へと早足で歩みを進めていった。
    「ってちょッ待ってよ!歩くのはえーし歩幅でけーよおま、ちょっと本当に待ってってば!!アメやるからさ!!」
    慌ててその背中を追うBFの喧しい声と、歩調の違う2人分の足音が、異形の住まう屋敷のエントランスホールに反響していた。
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