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    syunenmei

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    syunenmei

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    tsロジャグレ。
    3章始めたばっかの素人が書いてるからもういろいろ許して欲しい。

    一瞬だけモブレ表現あり。
    解釈違いだったら悪いね。
    多方面で許してくれ。













    「好きだよ、グレッグ」

    何でも無い、ただの休憩時間。
    いつもと同じ煙草に火を点けて、いつもと同じように肺に吸い込み、いつもと同じように吐いた時、いつもは聞かない言葉が飛んで来た。

    「……は?」
    「うん、好きだよグレゴール」

    机を挟んで向こう側。ゆるい笑顔とゆるい口調で非日常をぶち込んできた男が笑う。

    「……気でも触れたか?」
    「こんな仕事してたら発狂なんて今更でしょ」
    「まぁそれは……そうじゃない。お前、相手を間違えてないか?」
    「グレゴールって名前の職員が他にいるの?」
    「……」

    少し頭を抱える。
    多分、今、私は告白をされた。

    ……なぜ?

    「お前の、その、好きっていうのは仲間に向けるソレだよな?」
    「ううん、愛情の方。ライクじゃなくてラブ」
    「まじかよ……」

    一層頭を抱える。
    いつから、とか、きっかけとかよりも、どうして私なんだ。

    ——よりにもよって、私なんだ。

    「やめとけ」
    「やだ」
    「……お前は顔も悪くないし、一応はコミュニケーション能力もある。こんなおばさんを見てるよりも、もっと周囲に」
    「グレッグが好きだって、言ったんだよ」

    立ち上がり、こちらに向かってくるロージャ。
    ただでさえ身長差があるのに、こちらは座ったままだから近くに立つと一層巨木のよう。
    そして、片膝をついて見上げて来るのも、こちらが見下ろすなんて貴重だなと、場違いな自分が遠くで思った。

    「貴女が好きだ。年齢を気にしてるなら私もいうほど離れてないよ。顔だって貴女は可愛いし、多分、いつものメンツで一番話ができるのは貴女だ」
    「……」
    「貴女が私の気持ちを否定するんだったら、その度に私は証拠を揃えて言う。そのくらい本気」

    ……きっと、彼は本当に本気。

    本当に私のことが好きで、手の震えを隠せていなくても、私の手を離さないんだろう。
    真っ直ぐに向けられた、強い恋心。

    ——だったら、尚更だろう。

    「……わるい。その気持ちに……私は、応えられない」


    XXX


    ロージャから想いを告げられて、翌日。
    私は何故か壁際に追い込まれていた。

    「ろ、ロージャ?」

    遥か上にある顔を見上げる。
    普段からでかいでかいと思っていたが、こんな事態になって初めて圧を感じる気がする。
    あと、美人の真顔って怖いんだな。

    「グレッグ、貴女が好きだよ」
    「っそれは」
    「昨日は振られたって分かってる。でも、応えられない理由を聞いてない」

    ぐっと顔が近づいてくる。
    青と緑を行き来する瞳に目が離せず、昨日みたいに逃げ出すこともできない。

    「ねえ、もし、応えられない理由が私への嫌悪だったら、私は貴女を諦められる。でも……そうじゃないなら、ちゃんと聞かせて。有耶無耶にしたままは嫌だ」

    切なげに瞳が揺れる。
    そう、彼は本気なんだ。
    本気で私が好きなんだ。

    ——……ほんと、何で私なんだよ。

    「……私、は」
    「うん」
    「私は、戦争の道具だった」
    「……」
    「戦うだけじゃない。民衆を扇動するための、正当性と、注目を集めるための、宣伝材料だった」

    あの、思い出したくない、忌々しい記憶が何度も過る。
    彼の綺麗な色が怖くなって視線を反らし、落ち着かない体を片腕で抱いた。

    「分かる? 知らない人達から期待されて、憧れの目を向けられて……それと同じくらい、憎まれて、恨まれて、この腕のせいで戦争とは無縁な市民からも怖がられる」

    暴言、嘲笑、悲鳴。
    耳の中で反響する音に瞼をきつく閉じる。

    「それに、私は……処女じゃない」

    体を押さえつけて、腕を冷たく固い金属で縛り上げて、見降ろしてくる男たちの視線。
    忘れたくても、私を蝕む——悪夢。

    「この体は綺麗じゃない。知ってるでしょ? 私は今でも恨まれる立場だって。私は汚いよ。ロージャが思うよりずっと。お前が好きになるような人間じゃない……これが、応えられない理由だよ」

    お願いだから、私に綺麗なものを向けないでほしい。
    希望も期待も見せないで。
    全部ハリボテだった時の絶望を、もう味わいたくない。

    「分かったら好きだなんて」
    「グレゴール」

    頬に、体温が触れた。
    はっと瞼を開くと、大きな手が上を向くように促してくる。
    再び見た胆礬色は、怒りとも、悲しみとも取れない複雑な表情をしていた。

    「……頑張って、来たんだね」

    ずっと独りで。矢面に立たされて。
    落ち着いた、不思議なほど耳に溶ける声。

    「お疲れ様。これからは私がいるよ。皆も……ダンテだって、なんだかんだ貴女のことを気にかけてる。……ちょーっとだけ妬けちゃうけどね」

    悔しいから、私とグレッグのアイス買ってくるよう頼んでおいた。と、彼は笑う。
    そして、壁に付いていた手を私の背中に回した。

    「私がそばにいる。貴女の敵なら一緒に倒そ。貴女が辛いなら、私は手を出さない。ねえ……私を振る理由が、自分が醜いからってなら無駄だと思う。だって、それを知った今でも貴女が大好きなんだもん。——大好きなんだ、愛してるよ、グレゴール」

    感情の高ぶりで、腕が、少し動いた。

    私、が。
    この私が、彼からの気持ちを受け取っていいんだろうか。
    背負わされて崩れ落ちた私が。諦めて来た私が。

    私、は。

    「ぅ……」
    「泣いていいよ。私しかいないし」
    「泣いて、なんか」
    「そっか」

    大きな体にすっぽり包まれて、大きな手で撫でられる。
    暖かいのに胸が締め付けられるように痛い。
    ずっと抱えていた、重く苦しいものが溶けて溢れて、顔をどんどん汚していく。
    酷い有様だと思うのに、ロージャは私が落ち着くまで私を抱きしめてくれていた。

    「……ぅ……あー……、それで、返事なんだ、けど」
    「うん」
    「こんな年上で、こんな腕だけど、それで良ければ、まあ……」

    よろしく。

    情けなく泣き腫らしたブス顔で言っても滑稽だろう。
    けれど彼はいつもの美味しいものを見つけた時のように、それと少しだけ頬に色を乗せて。嬉しそうに、ふにゃりと笑った。
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