「たまには、グレッグからキスして」
ぼんやりとした頭と気だるい体。
やっと激しい熱が引いたところで、そんなお願いが届いた。
「私から?」
「うん」
少し汗ばんでいる髪をさらさらといじりながらロージャが頷いた。
キスして欲しい……と、言われても。
普段は他の目があるからできないし、そもそもこの身長差だ。立ってキスするだけで首は真上に向くし、背伸びしたところで届かないから意味が無い。……この歳で、背伸びしてまでキスしたいと思われるのも、少し恥ずかしい。
だからこうして二人の時に出来なかった分を埋めるようなキスをする。座って、寝そべっていれば身長なんて関係ない。ロージャとのキスはす、好きだから。
「さっき散々したのに」
「私からね。グレッグからもしてほしい」
本気か冗談か分からない瞳でのお願い。
少し考えて、今は彼しかいないからいいか、と。
素肌を寄せて、高鳴ってしまう心臓の音を知らないフリをして。
ちぅ。
「……これでいい?」
急に恥ずかしくなって顔が見れない代わりに高い体温へ額を当てた。
なんだこれ、顔が熱い。
人が気合い入れてしたキスに、彼は果たして無反応。
どうしたのかと顔を上げれば、ロージャの顔も真っ赤っか。
「ロージャ?」
「……グレッグ可愛い!」
「ぅぐえ!」
急に強く抱きしめられて肺から空気が出て行った。
可愛い可愛いと呻きながらぎゅうぎゅう絞めて来る腕。
苦しいし、急すぎて何がなんだか。
けれど。
「愛してる」
耳元で囁かれた言葉が、多分、一番正直。
素直に返すのはまだ照れ臭いけど、私も——。