かけがえのない「ごめん…」
そう言うと、きっと勇気を振り絞って告白してくれたであろう女生徒は小走りで去っていった。
好きです、なんて告白いつ以来だろう?
あの時以来だ。
何度も何度もタイムリープを重ねて行き着いた未来は思い描いたものと少し違った。
それでも助けたかった人達はみんな生きてる。
彼女も、そして彼らも。
それから『彼』も。
一緒に歩んだ軌跡の中で少しずつ変化していった心。
最初はそれに気付かないふりをしていたけれど、優しい彼女の言葉でようやくその気持ちを認めることになった。
マイキー君が好きだ。言葉にすることのない気持ちだと思っていたら、まさかの同じ想いをぶつけられた。
そうして今に至る。
女生徒に告白されてから数分、武道はその場でぼんやりと空を眺めていた。
雲一つなく綺麗な青空だ。
きっとマイキー君ならここで居眠りするだろう、なんて思ったらフッと笑みが溢れた。
「何ニヤついてんだよ?」
「ヒエっ!?ま、マイキーくん!?」
後ろから急に声を掛けられてビクリと反応する。
振り向けばそこには少しだけ頬を膨らませているとても大切な人。
「女の子に告白されたからって鼻の下伸ばしすぎだろタケミっち」
「いや、そんな…って見てたんすか!?」
「見てた…っていうか…お前呼ぼうとしたらあの子と一緒に出てくの見えて…」
なるほど、それで追ってきたのか…
マイキーの目を覗き込むようにして見つめる。
「マイキー君…オレが君を…君以外を選ぶと思います?」
「なん」
「今、この世界で大事に思ってる人はたくさんいるけど、かけがえのない人はマイキーくん、ただ1人です。だから心配しないでよ」
自分のおでこをこつんとマイキーのおでこにくっつける。
「でも、マイキー君に嫉妬されるの、ちょっと嬉しいや…」
「………嫉妬じゃねぇ…し…」
「えー?本当に?」
「…タケミっちがあの子に手出さないか見ようとしただけだし」
「出すと思いました?」
「………思わない………」
「ですよね」
嬉しそうに笑ってそのまま唇にキスを落とした。
柔らかくて気持ちが良い。
「…タケミっち…」
「はい」
「俺もお前のこと…」
耳元で囁かれた温かく真っ直ぐな言葉。
"かけがえのない人"だよ、と。