サンポ出てこないよ暴力と血と酒みたいなやつ
濁った汚泥を足の裏で踏み潰して、洞窟のような路地を歩く。カツカツ。靴音が鉱区と同じ要領で切り出された壁に反響する。重ねるようにして、びちゃびちゃと水をこぼす音がする。
ベロブルグの下層部では雪は降らない。
そんなことは誰だって知っている。特にここ、スヴェートタウンで上から降ってくるものといえば、よくて血か酒。もしくは胃液と言ったところだ。運が悪いと肉片が降ってくることもままある。おまけで飛び交う唾と汗もつけておこう。そんな場所にろくな人間はいないし、まともな生活だって望めない。鉱夫くずれのクズと、酒浸りのクズ。クスリ漬けのジャンキーに、娼婦……。量産され、無駄に多様化されたクズが地炎のナワバリでは息ができずにこうした掃き溜めへとやってくる。掃き溜めは肥溜めとなり、肥溜めが組織を形作り、やがて金を産むようになった。それが今のスヴェートタウンの姿だ。
人が減っても増えても気にしないような場所だ。何が起きたって不思議じゃない。
「ギャハハ!」
「あっ、ア!!」
「オイ、もっと足上げろや!!」
今日は、女の湿っぽい嬌声をアテにして酒を飲む男たちの耳障りな笑い声が聞こえてくる。外れた道に視線をやれば、暗闇の奥からは男たちの荒い吐息と、女の悲鳴じみた喘ぎ声が空気に滲んで、肌にまとわりつくようだった。
肥溜めに流れ着いたばかりの女だろう。この辺りには娼婦は腐るほどいるというのに。
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