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    hl_928

    @hl_928

    ↑20/幻覚しか見てない。
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    まろ marshmallow-qa.com/hl_928

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    hl_928

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    お題で「今日も人間のふりをしている。」で始めて「今日も人間のふりをしている。」で閉めろって言われたのに閉めなかったダメなやつ

    書いてるうちにサイコパシーも生えたけど主訴は離人症&現実感消失症。あとゲーム画面のカメラって誰の視点なんだろうとか

    #HL
    #自転

    今日も人間のふりをしている。今日も人間のふりをしている。
    魔法生物たちはいつもそう言いたげな目でこちらを見てくる。
    ご飯をあげれば食べてくれる。ブラッシングをすればちゃんと甘えてくれる。
    でもそれはその時だけ。いつも少し遠巻きに、警戒しているみたいに僕を見る。
    ナティやセバスチャン、ポピー。他のみんなにも先生たちにもシローナにもピピンさんにも、人間じゃないディークだってそんな目で見ないのに。
    僕に向き合う魔法生物たちだけは、いつでも僕の頭の1ヤード後ろを見る。
    ああ、そうだね、僕はいつもここから見てる。
    恐ろしく疲れているときには偶にあったことだったけれど、ホグワーツに来てからそれはほとんど四六時中になった。
    何もかもが自分の頭越しのように見えて、現実感がまるでない。ふわふわと浮わついた心地で、色鮮やかな景色もすべて作り物のよう。何をしていても操り人形を繰っているようで自分の体が動いている気がしないし、何かを感じてもそれはそのように感じているという情報だけで、胸の奥には手が届かない。
    でも僕はここにいる。それはわかっている。
    まるでゴーストみたいだ。ここに居るのにここに居ない。何かを持てばちゃんと持てる。触れればちゃんと感触がする。僕はみんなに触れられるし、皆も僕に触れられる。
    だから僕はジャックドウやニックとは違うはずなのに。
    たまに自分の頭がおかしくなったのかもと心配になる。魔法界なんて本当は無くて、僕は全くイカれてしまっていて、すべては幻覚。僕はその中で人形遊びをしているだけ。そんなはずはないと否定するけれど、やっぱり何もかもがふわふわしていて、動揺する。そうして、その動揺にすら実感がない。
    ときどき耐えきれなくなって、禁じられた森やフェルドクロフトの端に足を運ぶ。そこにはたくさんの密猟者やランロクの信奉者たちがいて、いつでも相手に困らなかった。
    グレイシア、コンフリンゴ、基礎魔法、基礎魔法、アクシオで引き寄せてまた基礎魔法、基礎魔法、基礎魔法、とどめにディセンド。たまにわざと際どいタイミングでプロテゴを唱えて、紙一重のスリルを味わう。そしてまた、アクシオ、ディセンド、コンフリゴ。
    「僕に遭ったのが運の尽きだね」
    そんな風に4、5人ほど相手にすると、ようやく自分の体が自分のものだと感じられるようになってくる。
    体と頬がぽかぽか火照って、そこに夜風が当たるのが気持ち良い。
    この感じ、久しぶりだ。
    ああ大丈夫。僕は大丈夫。ちゃんとここに居る。ちゃんと生きてる。
    もうちょっと。まだ足りない。近くに仲間がいるはずだ。探そう。今行くよ。
    基礎魔法、基礎魔法、エクスペリアームス、ディセンド、アレスト・モメンタム、基礎魔法、ボンバーダ。
    ああ気持ちがいい。楽しい。ワクワクする。心が弾む。そうだ、僕には心がある。
    「悪いのはランロクだからね!」
    動かなくなったゴブリンにそう吐き捨てる。我ながら最悪な言い訳。別にランロクのせいでもないし、仮にそうだったとしてもただ屯していたゴブリンたちにはここまでされる罪はないかもしれない。
    でも仕方がない。僕のために我慢して。
    こうやっている間、僕は体と世界と元通りに繋がれて、またしばらくはふわふわが続いても耐えられる。
    「それにしても」
    生きた実感を得られるのが、こんな時しかないなんて。
    ランロクやルックウッド、密猟者たちがいなくなったらどうしよう。皆のためにも彼らには居なくなってほしいけれど、僕は彼らが居なくなったら困る。
    最近思い浮かぶ、とんでもない心配ごと。
    友だちや先生、ホグズミードの人たちにこういうことをする訳にはいかない。さすがにしたくない。僕はなかなかその感じを味わえないけれど、あの人達が好きだ。
    今はまだ大丈夫。でもいつかのために、何かを見つけておかないといけない。
    べつになんでも良いんだ。なにかピリピリするようなこと。
    「ああそうか」
    彼らがいなくなったら、僕がなるって手もあるのか。そしたら僕のような誰かが来てくれるかも。
    「それもいいかも」
    戦闘の熱狂が引くと、また僕はズレ始める。じわじわと遠ざかる感覚がする。自分を操り人形にして、自分の頭越しに世界を見るようになる。
    乱戦の余波で大きな焚き火さえかき消されたボロボロのキャンプの真ん中で、確かめるようにひとり笑い声を上げてみた。
    もう、自分が笑っているのか、この子が笑ってるのかわからない。
    でも僕は戻ってくる。何度でも、何度でも。
    夜風が感じられなくなってきた。指の隙間を通る空気の感覚が遠い。名残惜しむように僕は何百という星の輝く空の下、両手を広げて呟く。
    「待ってて皆」
    また、ちゃんとした僕でこの世界に会いにくるから。

    今日も人間のふりをしている。
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    hl_928

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    書いてるうちにサイコパシーも生えたけど主訴は離人症&現実感消失症。あとゲーム画面のカメラって誰の視点なんだろうとか
    今日も人間のふりをしている。今日も人間のふりをしている。
    魔法生物たちはいつもそう言いたげな目でこちらを見てくる。
    ご飯をあげれば食べてくれる。ブラッシングをすればちゃんと甘えてくれる。
    でもそれはその時だけ。いつも少し遠巻きに、警戒しているみたいに僕を見る。
    ナティやセバスチャン、ポピー。他のみんなにも先生たちにもシローナにもピピンさんにも、人間じゃないディークだってそんな目で見ないのに。
    僕に向き合う魔法生物たちだけは、いつでも僕の頭の1ヤード後ろを見る。
    ああ、そうだね、僕はいつもここから見てる。
    恐ろしく疲れているときには偶にあったことだったけれど、ホグワーツに来てからそれはほとんど四六時中になった。
    何もかもが自分の頭越しのように見えて、現実感がまるでない。ふわふわと浮わついた心地で、色鮮やかな景色もすべて作り物のよう。何をしていても操り人形を繰っているようで自分の体が動いている気がしないし、何かを感じてもそれはそのように感じているという情報だけで、胸の奥には手が届かない。
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