傷つけたくないモノ桓騎との約束。
俺がしたことを絶対に許すな。これからそれをするということ。何をするの?安心しろ。お前の大事なモンには手出ししねぇよ。
お帰りだ。待って!桓!!話して。
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「桓…!どういうことなの?なんで村人たちを…!」
やはり来たか。
「おい女…」
「別にいい、黙ってろ」
雷土を黙らせてレンの問に答える。
「あ?決まってるだろうが。略奪だ。別に許さなくていいぜ。お前はその権利がある。約束したからな」
「あのとき言ってたのはこれのことだったの?」
ーー約束しろ。今後おれが何をしても俺のことを許すなーー
「ああ、そうだ。俺の飢えや渇きを満たすにはお前じゃ足りねえし、お前は俺と住む世界が違うんだ。当たり前だろ」
自分の言葉で傷ついているのが手に取るようにわかる。
何をしてるんだろうな俺は。狐火。遊びの中での合言葉。こいつが俺を探してるのは以前から知っていた。ずっと正体を隠したままでいいと思っていた。だが…
『桓騎、話がある』秦王との会話にコイツの話が出てきたことで状況は変わった。
桓騎ぃ!
信…?
尾平。
パン。最低。
お頭が頬を打たせた…!?
全然痛くねぇな。
私は痛いよ。この手の痛みよりもここが。胸の奥が傷ついてる。
私の大事なモノの中には桓もいるんだよ。うそつき。自分で自分を傷つけてるじゃない!何か理由があるんじゃないの?誰かから命令されたんじゃ…
お前は甘すぎるんだよ。昔から何もかも。今流してる涙さえもな。俺はその甘さに慣れたくはねえ。
何言って…
最初からこうしておけばよかったな。お前が治療を施す前にな。
そしたら俺は…
か…ん…?
俺が黒狐なんて幻想だ。忘れろ。もうお前は俺に必要ない。黒狐の面を突き返す。
狐、そいつを連れてけ。
お、お頭…
ち、酒がまずくなっちまった。
あいつを傷つけた。バカなことをしている自覚はある。
こんなことをしてまでアイツの記憶に残りたいと思う自分は相当イカレてる。
ーーー私の大事なモノの中には桓もいるんだよーーー
押し付けた黒狐の面。
甘すぎるあいつは太陽の下を歩くのが似合ってる。
「は、重症だな」