迷宮ファンタジー。トカゲ族男性と人間(?)の女の恋愛物語人間は残酷だ。同族でも平気で仲間を裏切る。
ギルドからの依頼の迷宮探索。地下5階への階段の近くで叫び声がした。
「早くポータルへ!逃げろ!」
ガシャガシャする音の中
この階で命からがら逃げるとなれば、中級の冒険者くらいか…。
「そんな…4人しか入れない!」
悲痛な叫び声。人数制限ありの帰還ポータルだったようだ。迷宮の外まで楽に移動できるが、帰還ポータルは人数制限がある。
「お前ら先に行けここはオレとリアが引き受ける」
「そんな!」
「いいから…!リアの障壁があれば次のまでなんとか食い止められる!行け!!」
2人が残るようだ。仲間のために囮になれるほどの実力なんだろう。
実力の様子を見て助太刀するつもりだったが、移動ポータルのある方の角を曲がった俺が目にしたものは…
剣士の男が障壁を発生させた小柄な女をスケルトンの集団に1人の仲間を力任せに引きずり落としているところだった。
女がスケルトンの集団に飲み込まれた瞬間にそいつは大声で叫んだ。
「待て!やめろ!行くなリア!!戻れ!オレも一緒に戦うから!!」
今この場で最もおかしな発言だった。落石呪文を唱えてポータルへ続く道を断ちながら「やめろおおおおお!!!」と大声で叫び声を上げる。
何が起きたのか。吐き気がするほどにわかる。リーダーらしき男は仲間を囮として利用したのだ。しかも逃げ道を絶ってまで。鬼畜の所業とはこういうことをいうのか…酷いことをするものだ。
リアと呼ばれた女の生死はわからないが、とりあえず火の呪文を唱えてスケルトンを散らせば、防御障壁に護られた小柄な女の姿が見えた。
「アンタ、その障壁いつまで持つ?」
「この部屋にいるスケルトンを全滅させるまでは…」
限定魔法。大魔法使いがその命と引換えにこの世界を救ったとされ、魔力や体力の消耗が激しく術者の生命まで削られる諸刃の呪文。
使う時間やレベルにも左右されるし、
火の魔法でほとんど溶かして数体を薙ぎ払い復活しないように殻を粉砕すると障壁が消えて術者がふらりと地面に倒れ込んだところをキャッチした。
おい、大丈夫か?