関常視点夢 半年前、玉鳳隊への異動が決まった。それに伴い若の近況も詳しく知ることになった。
「関常、姉上のことはどう思ってる」
「俺にとって若とおなじくらい大事な方ですよ」
姉といっても若の従姉にあたる方で若の幼少期の頃からそばにいた玲珠様。屋敷に顔を出すうちに顔見知りになり話すうちに仲良くなり、年頃になると縁談を申し入れたが魏国へと嫁いでいってしまった。
今ではさらりと説明できるが当時は、他の男と結婚すると聞いてショックを受けそれどころではなかった。魏へ出立の日、「お幸せに」という言葉をかけたときの表情が今でもずっと瞼の奥に焼き付いていて離れない。微笑んでいるが目が悲しんでいた。玲珠様は結婚に乗り気ではないことをそこで初めて知った。
俺は何もできず、そこから連れ出せもせず、無力な自分に嫌気がさして逃げるようにして戦いに明け暮れた。
玲珠様が嫁いだ家は魏と趙の国境にあり、小競り合いが続く中で嫁ぎ先の夫が戦死。跡継ぎもいないため秦に返されると、すぐに複数の縁談が申し込まれた。若の母君である朱景様ほどではないが、魏に嫁ぐ前から引く手あまたの縁談が舞い込んでいるのは知っていた。
俺は再度縁談を申し入れなかった。あの方を守れもしなかった無力な自分に何ができるというのか。だが自分のくだらない考えを捨ててまでも縁談を申し込み結婚までこぎつけていればと思わずにはいられない。
婚約相手が結婚式当日に病死、その後の縁談後の帰りに事故死、縁談を申しいれた者のひとりが変死体で発見され「魏から呪いを運んできた」「死を呼ぶ者」と噂が立ち、ついには商いをしていた家が破産。玲珠様は「死の姫」と呼ばれるまでになってしまった。
家を勘当され若が呼び寄せたものの、現在は離れの屋敷でひっそり暮らしているがこもりがちであまり外に出てこないという。
「俺が行くと喜んではくれるのだがな…」
寂しそうに笑う若の様子からどんな生活を送っているのか伺えた。
様子を見に行くついでにお前も一緒に来いという若は俺が王翦様からの監視役だと思っているのか念を押してくる。
「俺を監視するのは構わんが姉上を傷つけることは許さんぞ」
「そんなことしませんよ。あの方を傷つけるなんてことは…」二度と。誓って……