ケンカ中→仲直り野営地へと帰ってくれば、レンの服が変わっていた。
「なんで服が違うんだよ」
「我呂には関係ない」
「あるだろ」
「ない」
とりつくしまもねえ。やはりまだ怒っている。どうしたものかと思案してると横から声がかかる。
「少し前に舟で釣りしてデカイの引き当ててそのまま川に落ちたんだ」
那貴!レンが抗議の声を上げる。
「それで俺の服を貸したというわけ」
「言わないでって言ったのに」
「そういうわけにもいかないだろう。どうせ後で知るんだし今知った方がいいと思ってね」
気に食わねえ。
「着替えは同性の河了貂のものでよかったんじゃねえか?」
「すぐ近くにいなかったしレンは女だ。身体を冷やしたらいけないだろ」
「こいつを手助けしてくれた礼は言うが、他の男のニオイ着けさせて平気なほど俺の心は広くねえ」
「え?ちょっと我呂なにいってんの?那貴は親切で服を貸してくれたんだよ。責めないでよ」
「いいからちょっとこっち来い」
那貴の味方するレンを抱きかかえると他の男のニオイがして吐き気がした。さっさと天幕に行って着替えさせるか。
「ちょっと我呂おろして!」
「暴れるな落ちるぞ」
「那貴ごめんね。洗って返すね」
「ああ。いつでもいいから」
このやりとりさえ気に食わねえ。
レン、そんな野郎に手を振るな。手が腐るだろうが。
「我呂、わたしの天幕そっちじゃない」
「あほか俺の天幕にいくんだよ」
「なんで?」
「着替え貸してやる」
「別にいらないよ。那貴の着てるから」
だからそれが気に食わねえんだよ。
他の男のモンなんて身につけさせたくねえ。
天幕につくと中に岳雷がいた。それを追い出そうとするとレンにたしなめられる。
「岳雷!出ろ。そして帰ってくんな」
「なんで岳雷追い出すの。自分のところなのに」
「お前が着替えられねえだろが」
「だから那貴から借りてる服で充分だって」
「俺はそれが気に入らねんだよ」
声に出せばレンが反論する。
「なんでよ。これすごくあたたかいよ!…あ、わかった!我呂も着てみたいんでしょう」
「……なんでそうなる。ってかおっさん、肩ぷるぷるさせてんな」
片手を口元にやって笑いをこらえている岳雷はレンに優しく声をかけた。
「ああ…すまん、ついな。レン、俺は今から見回りだからゆっくりしていけ。俺の布団で寝てもかまわないからな」
「だれがおっさんのところで寝かすか!」
岳雷を追い出すとレンに服を脱ぐよう言う。
「レン、それ脱げ」
「え、やだ。あたたかいもん」
「俺の方が絶対にあたたけぇから」
「だって我呂の生地が薄いから暑いときはいいけど今は寒いやつだよそれ」
「寒くねえよ、ほら下も貸してやるから。足元あったかいぞ」
「外で待ってる。着替えたら言えよ」
俺の上下をレンの手に押し付けて外に出た。
半ば強引に連れてきたから怒って出て行くかと思ったがそうでもなかったようだ。
少し経ってからレンが天幕の入り口から顔を出す。
「着替え終わったよ」
どう?
中に入ると俺の服を着た
「ああ、こっちのほうが似合ってる」
「そっ…、そうかな?」
照れている姿もかわいい。
「ああ。俺の服は薄いけど、こうしたら暖かいだろ」
ぎゅう、っとレンを抱きしめて謝罪の言葉を伝えた。
「俺が悪かった」