笠松夢豪雨の天気予報だったがまさか電車が止まってしまうとは。
ちょうどここからバスで帰れるから別にいいけど、駅に足止めされてる大人たちを横目で眺めながら電車を降りた。
「うそ…帰れない…?」
耳に入ってきた声はどこかで聞いたことのある声。
ふりむくと隣の席の***さん。
放心している。
「どうしよう…」
すごく困っているのはわかった。もしかして帰れないのか?
勇気を振り絞って声をかけた。
「こっ…ここから、お、お、…っおれの家!ち、ち、近いっ…から…、来る、か?」
弟や母さんはおれが女の子を家に連れてきたと大騒ぎしていたが帰宅難民になって帰れなくなった子を連れてきただけ。家に帰れない知り合いを放っておくのは人として最低だからだ。
「風呂、先に入れよ。風邪ひく」
「兄ちゃん!いつ彼女できたんだ?」
「彼女じゃねえ。同じクラスの子ってだけだ」
「へーえ…。そんなこと言って好きなんじゃないの?家に連れてくるくらいだし」ニマニマしてる弟にうっせえよと睨みつければ、おーこわ!と逃げていく。
金曜日で良かったわねという母さんがニヤ付きながら「明日はデート?」と聞いてくる。
「ちげーよ!あいつはただのクラスメイトだし、困ってたから……」