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    リョ三
    テレビで痴話喧嘩しそうなリョ三です。

    #リョ三
    lyoto-3

    痴話喧嘩 目があった時、相手の考えていることが手にとるようにわかった。思っていることと口に出していることが逆であることが常の恋人と長年付き合っていれば、さすがの三井でも多少は鍛えられるらしい。
    ゲストはこの方です!と威勢よく紹介されて、カーテンから出てきた瞬間のことだ。

    『は?????』

     と。
    宮城の目が。何よりも雄弁に物語っていた。
    そこに宿る困惑と、そして怒りを。



     ことの始まりは10年前に遡る。苦い思い出も、輝かしい栄光もあった、紛れもない青春時代、華の高校生。
    バスケ漬けだった上、通常よりも特殊な事情があった俺たちは、気づいたらなぜか付き合っていた。付き合って、同棲までしてしまっている。
     宮城と俺は今や売れっ子バスケ選手。最近はスポーツ選手の私生活にもフォーカスを当てることが流行っているらしい。パートナーが居る、とこぼしたのはどちらが早かったか。流石に相手の名前はまだバレていないが、一度漏らしてしまえばもうタガが外れた。ボロボロと情報をこぼしまくり、ついに『人気スポーツ選手の恋人事情を聞いてみた』などという企画にゲストとしてお呼ばれされるまでになった。
     当初、三井としては番組は断るつもりであった。そも男同士だし、それ以上に俺たちの関係はかなり複雑だ。パートナーの名は明かさなくていいと言われたものの、因縁がありすぎる。どんなことからバレるかはわからないのだし、宮城が別れたくなったときに大事になってしまうのは勘弁だ。
    そんなわけで断りの言葉を発そうとした時、出演者の欄に『宮城リョータ』の文字を見つけてしまった。
    宮城の仕事は、バスケ以外よく知らない。もともとテレビを見る方ではなく、宮城も仕事について逐一報告する方ではなかった。恋愛系の企画は番組として初めてだそうだが、今までいろいろな私生活に関することを聞いていたようだ。
     面白い、と思った。純粋に宮城がどんな顔をしてテレビに出ているのか知りたかったし、そこに俺が現れたらどんな顔をするんだろうと楽しみでもあった。
    三井は番組のスタッフに、出演者には三井が出ることを秘密にすることを条件に、出演を承諾した。三井としては、ほんのサプライズのつもりだったのだ。

     事態が急変したのは前日。
    些細なことで喧嘩になった。よくある話だ。何百回と繰り返してきたことだった。そしてそれが数日間に渡る冷戦の幕開けだということも、何百回と繰り返したお決まりのパターン。
     テレビ局について、いざ撮影が始まったときに、三井はやっと思い出した。
    あ、そういえば俺、宮城と喧嘩してんだった。
     馬鹿である。多分、そういうところが宮城を怒らせている。しかし始まってしまったものはしょうがない。まさか恋人と喧嘩して、しかもその恋人がそこにいる宮城さんなので撮影を止めてくださいとは言うわけにはいかないだろう。
     溜息をついて、 カーテン越しの恋人の声を聞きながら登場の時間を待って。

    「ゲストは、この方です!!」

     MCの元気な声。急いで笑顔を作ったが、内心は裏腹に断頭台に立たされた気持ちだ。なんせ、宮城は怒ると怖い。昨日から怒ってるはずだが、多分俺が出てきたらもっと怒る。それに怒った宮城はめんどくさい。すごく。

     大げさな効果音と演出に包まれて、適当な挨拶をしながら出ていく。拍手、歓声。そして。
    宮城とバッチリ目があってしまった。
     一瞬大きく見開かれ、そして相当の間柄でないとわからないほど小さく眉を歪め、ニコリと笑った。
    それだけで、手にとるようにわかった。アイツが今考えていること。


    『は????何考えてんのこの人??信じらんない、全くわかんない、やっぱ合わないわぁ!』


     ……は??合わないとはなんだ合わないとは!せっかくお前が喜ぶと思ってサプライズしてやろうとしたのに、喧嘩長引かせたのはお前じゃねーか。俺が昨日どんなに謝ろうとしても聞かなかったくせに!

     案内された席は、偶然にも宮城の隣。殊勝な気持ちはすっかり消え失せていた。
    宮城も、喧嘩スイッチが入ったのがわかったのか、さり気なくぎゅむと足を踏んでくる。
     へえ、やってやろうじゃねーか。そっちがその気なら、俺にも考えがある。

     昼の1時放送の人気番組、生放送。
    ここに、戦いの火蓋が切って落とされた。

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