徒花でいーよ ミーンミンミンミン……蝉の音がやかましい。真上で傘のように広がる青葉が、8月の日差しを必死に受け止めている。が、それでも肌にじっとりと纏わりつくような暑さ。
俺は蝉の声に負けないくらいの大声でわははと笑った。特段面白い話を聞かされたわけではない。ただ、隣を歩く田中が、反応が乏しいとみると余計に張り切ってしまうやつだったから。
「な、三井もそう思うだろ!アリサちゃんてスゲー巨乳でよぉ、あの乳に顔埋めたいって──」
ああ、アイスが食べたい。あのとき、あの7月の夕暮れに食べたアイスはすごく美味かった。面と向かっていえやしないけど、多分それは一緒にいたやつのおかげで……あー、バスケ。バスケがしてぇ。今突然、したくてたまらなくなった。
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