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    ssuwwarru

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    gqED後シャリシャア(🟩→🟥)のシャリと🪼チュ
    ※彗星は出てこない
    ※しれっとアム🦢
    ※全部幻想
    ダイ…ン兄妹オタクの自我がこのままじゃ成仏してくれなくて…祈り…この後なんやかんやで兄妹は再会するし、シャリは星を追いかけ続ける

    星の行方 彗星は、青い光となって尾を引きながら私のもとを離れていった。
     その時の気持ちを表す言葉を私は持たない。
    「…?あの」
    「…はい?」
    「すみません、報告が途中になりました。続けてもよろしいでしょうか?」
    「失礼、どうぞ」
    「“地球の星”の件です」
    今なんと?
     続く言葉に、思わず手元の資料から顔を上げ、目の前の部下の顔を見る。半年ほど前から部隊に配属された若者である。特別な興奮や作為は感じられない、淡々とした報告だった。
     地球の星がロストしました。

     そうして私は今、地球の大地を踏んでいる。なんてことはない、女王からの密命である。3年前に掌をすり抜けた彗星に不明な動きがあれば、私が直接動き始末をつける。
    私と女王との間に交わされた唯一の契りであり、あの日死にそこなった私の…
    「…暑いな」
    思わず零れた言葉とともに、ジャケットを脱ぐ。この青い海と盛んな貿易で有名な南の島で、地球の星に関する情報提供者と落ち合う手筈になっていた。
     熱を孕んだ乾いた風と滲む汗の気配、そして海に囲まれた地特有の潮に混ざり合った死んだ生き物の匂いがする。視界の端を掠める緑が信じられないほど濃く映り少し眩暈がした。間違っても宇宙では感じることのない五感を刺激されている。やはり、慣れない。
     目線の先には、遠くに赤い灯台が小さく見えた。ふ、と不思議に思う。なぜ私はこんなところまで来てしまったのか。
    「や、ヒゲマン」
    「…お久しぶりです。マチュくん。お友達はご一緒ではないのですか?」
    「まあね。あんたに会って、なんかあったら嫌だし」
    「はは、警戒されていますか」
    1年振りに会った彼女は少し精悍な顔つきで、確かめるように私の顔を見ている。さらっと羽織った鮮やかなオレンジ色のシャツがとても軽やかで、ジャケットを抱え首元の詰まったシャツを着る私とはまるで身に受ける重力が違うようだった。
     机を挟んだ向かいの席を手で示すと、すとんっと着席する。その間も彼女は少し不思議そうな顔で、私の身振りを観察していた。
    「なにかお飲みになりますか?」
    「テラス席なんて、意外だね」
    「1年振りの地球ですから。たまには悪くないでしょう」
    「前に会ったときにしてた、変なマスクはやめたの?そのバイザーも、あんまり似合ってないけど」
    「これは手厳しいですね」
    ふーん。と聞いているのかいないのか分からない声を上げて、彼女はカフェのメニューに目を落とした。すぐにオーダーは決まったようで、軽く手を挙げて店員を呼んだのち注文を済ませた。遠くから波の音がする。
    「不思議だな」
    「何がです?」
    「まだ空っぽなの?」
    彼女らしからぬ大人びた声音に返答が遅れた。私を観察するその瞳は、私のバイザーを越えて私の内側の洞まで注がれているようだった。
    「人って時間が経てば、色んなものが変わっちゃうものだと思ってたけど、あんたは初めて会ったときのままだね」
    「そうですか」
    「自覚はあるんだ?」
    ふーん。とまた聞いているのかいないのか分からない声を上げて、彼女は私を見ている。思い返す。初めて会ったとき、彼女は我武者羅に自分の行く先を探していた。求め、抗い、光と暗闇の境界でもがきながら逆立ちしているような少女だった。
     今、目の前にいる彼女は真っすぐな目をして、大切なものと自分の進むべき道がはっきりとしているように見える。成長だろうか。まだ年若い彼女も、大人になってゆくのだろうか。
     私たち、老兵を置いて。
    「あ。ありがとう」
    カフェの店員が来て、彼女の前にグラスを置いていった。地球の海と空を溶かしたような鮮やかな色彩のサイダーだ。浮かんだ大きな氷の上には赤いチェリーが乗っていて、艶やかに輝いている。ふいに、鋭い光が目に入ったように感じてバイザーを外した。グラスが纏う水滴に映る私の表情はよく見えなかった。
    「奢り?」
    「もちろん」
    「ふふ、ごちそーさま」
    彼女がサイダーに口をつけるのに釣られて、私も手元のコーヒーに手を伸ばす。黒々としたコーヒーに反射する私の顔は、彼女のグラスの水滴に映る私よりもはっきりとしている気がしたが、やはり表情はよく見えない。
     それから彼女と私は他愛ない話題を2、3提供しあって比較的穏やかな時間を過ごした。彼女の手元のサイダーも残り3割といったところで会話は途切れ、そのタイミングを計ったかのようにカフェの店内から漏れていたラジオから、ジオン公国に関するニュースを知らせる声が流れた。
     サイダーの氷が解けて、小さく鈴のような音がした。
    「あんまり上手くいってなさそうだね」
    「先の戦いで受けた傷を癒し、地盤を固めなければいけません。ジオンは今、狭間にいる」
    「共和国?だっけ。できるの?」
    「古い体制を変えていくのには、時間が必要です」
    「コモリンが辛い思いしないといいな。ヒゲマンが元気なうちにどうにかしてよね」
    「忠告として受け取ります」
    「そんな大したもんじゃないよ。ただそう思っただけ」
    実際、ジオンの共和国を目指す動きには未だ果てが見えず、国力の安定にはほど遠い。楽観視する貴族や側近に対し、女王の瞳にはいつも憂いが見える。まるで、ジオンという国に捧げられたあの日から、そんなことは承知の上であったかのようだった。
     人身御供という言葉が脳裏を過る。先ほどまで熱を孕んでいるように感じた風が、不思議と冷たい。
    「よし」
    前触れなく目の前の彼女からこぼれた少し場違いにも感じる一言に思わず視線を向けると、彼女がグラスに残ったサイダーは勢いよく煽るところだった。
    「本題だね」
    私の手元のカップにも、もうコーヒーは残っていない。
    「“地球の星”の行方をご存じですか?」
    「まだ星なんて呼んでるの?あんたたちが墜としたんじゃないの?」
    「“地球の星”は何をしようとしているのですか?」
    「まあいいけど。先月ララァに会ったよ」
    「知っています。星もそこにいたはずですね?」
    「いたよ。アムロさん…アムロさんのことも知ってるよね?」
    「サイド7から来た技術者ですね。あの地のキャンプへ技術支援にきた若者で、あなたたちとも交流があると聞いています」
    そこまでは把握しているのだ。現地の監視員から報告は受けている。
    「そう。それで、ララァとアムロさんの結婚式の打ち合わせにあの人も来てて」
    少し意図が読み取れないことを言われた気がする。しかし、目の前の彼女はいたって平坦な表情で、当たり前のことを言うように話を続けている。
    「ララァと一緒に計画を立ててた。買い出しとかにも積極的で特に変わった感じはなかったな」
    「薔薇の少女…いえ、ララァ嬢は彼に恋をしていたのでは?」
    「そうだよ」
    「では…」
    「恋と愛って違うみたい」
    やはり当たり前のことを言うように、とても複雑なことを口にするものだから流石に驚きが勝ってしまった。私の表情に出ていたそれを認めてか、彼女は少し口角を上げて得意げな表情になった。
    「驚いてんの?わたしも知ってるんだ」
    「恋と愛を…ですか?」
    「ふふ」
    軽やかに笑った彼女に思わず目を奪われる。こんな風に、彼も笑っていたのだろうか。
    「多分、ララァとアムロさんならもっと詳しくあの人のことを知ってると思うけど、あんたは会わないほうがいいと思う」
    「それは何故?」
    「うーん、ジークアックス乗りの勘?」
    あまり冗談に聞こえないそれに思わず言葉が詰まる。
    「ヒゲマンはあの人に平穏に暮らしてほしかったの?」
    「どういう意味ですか?」
    「多分、あの人は自由に、普通には生きられないよ」
    「彼の目的を知っているのですか?」
    「そういうわけじゃなくて…」
    少し目を伏せた彼女は、なにか思案するように少し眉を寄せている。
    「あの人、シュウジと似た匂いがする」
    「シュウジ・イトウですか?」
    薔薇の少女を追って、刻を超えてやって来たニュータイプ。そして忘れられるはずもないあの日、薔薇の少女とともに帰っていった。目の前の彼女の大切な人物だったと記憶している。彼女の大きな瞳が瞬き、青い光が過ったように見えた。
    「それに、何度も会って話をして、一緒に過ごしたから分かるんだ。あの人は例え空っぽだとしても、根はやさしい人だよね?」
    「…」
    「純粋すぎるから背負う。願われれば応えようとする。人に好かれるし、才能があるから求められる」
    「それは」
    「そんな人だよね。だから、平穏には暮らせないよ。あんたにも分かってたかもしれないけど」
    そう、言われて気が付く。軍を去り身分を捨て使命感めいた志に蓋をして、其れでもなお星のような輝きを失わない。今後も彼を求めるものは後を絶たないだろう。平穏に暮らせると私は本心から思えていただろうか。いや、平穏に暮らすべきだと思っていたのだ。そうでなければ、彼も世界も破滅するのだから。そう、0079の私は理解したのだ。彼は、宇宙を降りて、平穏に暮らさなければならない。
     そうでなければ?
     テラスに降り注ぐ太陽の光が少し陰ってきたように感じた。
    「雨が降るかも。この辺の天気は変わりやすいんだよね」
    「そうですね」
    彼女は来た時と同じ軽やかさで、すとんっと立ち上がった。グラスは空だ。
    「行くんですか?」
    「うん」
    「…彼に繋がる情報があれば、連絡してください」
    「うん、じゃ、元気でね」
    身を翻し、数歩進んだところで彼女は振り返った。
    「多分、あの人は悪いことは考えてないよ!」
    「…ジークアックス乗りの勘ですか?」
    「ううん。あの人は妹のことを大切に想っているから」
    暗に、責められているように感じる。
    「あの人は言ってた、妹を担ぎ出されているって知ったとき、めちゃめちゃに暴れてやれば良かったのかなって」
    「…十分暴れていたでしょう」
    「後悔させないでね」
    誰を?疑問は言葉にならず、思わず彼女の考えを読もうとしたが少し距離があるせいか上手く読めなかった。
    「それもヒゲマンの悪い癖だよね」
    「わかりますか」
    「わかるよ。でも、ニュータイプ同士でも言葉にしなきゃいけないことがあるよ。都合のいいカミサマでも便利なエスパーでもなくて、人間同士なんだからさ」
    今度こそ前を向いて去ろうとする彼女の背を見て、思わず立ち上がる。テラスの板はこんなに柔らかかっただろうか?足元を取られるような感覚に思わずたたらを踏む。勢いで椅子が軋み、また少し眩暈がした。疑問があった。
    「あなたはシュウジ・イトウに恋しているのですか?愛しているのですか?」
    もう一度振り返った彼女とは先ほどより距離が開き、表情が分かりにくかったが、不思議と離れていても強く感じる瞳の色が印象的だった。遠くに見える赤い灯台と重なって、視界がぶれる。
    「探し物が見つかるといいね」
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