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    sika_blue_L

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    sika_blue_L

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    ふーかせつげつパロディです。支援C▶︎B▶︎再会▶︎Aまで。

    ふーかパロディykis支援C
     
     士官学校の教鞭を執ることになって数節が経つ。慣れない教師としての振る舞いにイサギは苦悩していた。誰もいない書庫で様々な文献を片手に唸ってみる。…ダメだ、思考が纏まらない。
     
     傭兵として生きてきた俺は『学校』を知らない。読み書きならばある程度は傭兵団の中に居た学がある奴に授業料を払って教わっていた。
     しかし、ここは各国から魔道で優秀な成績をおさめた者、身分の高い貴族の家の子らが集う場所。
     そんな場所で何処にでもいるような傭兵の俺が「先生」なんて務まるだろうか。
     
    「はぁ…、授業って何すればいいんだ…?」
    「っふ、」
    「!」
     
     笑い声がする。声の方を向くと、男子生徒が座っていた。皆が皆、同じ制服を身にまとっているにも関わらずひと目で『貴族』の生まれなのだとわかる…そんな出で立ちの男。見たことの無い顔だ。うちの学級の生徒ではない。
     
    「失礼しました。教師である貴方の教師らしからぬ言動に思わず、ね」
    「…えーと、」
    「青獅子学級のユキミヤと申します」
    「ああ、隣の学級の。───俺は、」
    「イサギ先生、ですよね。この士官学校の誰もが知ってると思いますよ」
    「そりゃどうも。…ところでユキミヤ、先生って何すればいいと思う?」
    「え」
    「?」
    「…それ、俺に聞くんですか?」
    「自分の学級の生徒に聞いたらダメだろ。お前さ、自分の担任から同じこと言われたらどうよ」
    「……他の学級に編入を考えますね」
    「だろ?」

     ユキミヤは一言、不思議なひとだな、と零す。
     
    「先生…先生ですか。家に居た頃はたくさん家庭教師が居ましたが…うーん、いざ何をすればと聞かれると難しいですね」
    「あ。歳も身分もお前のが上だし楽に話してよ」
     
     堅苦しいのは苦手なんだ、と。お堅い騎士団の連中を思い浮かべて顔を顰める。
     
    「…お言葉に甘えるね。…実は俺も堅苦しいのは苦手なんだ」
    「なんだ、そっちが素?」
    「公私は分けたいタイプ」

     仕草もどことなく先程より砕けたように見受けられる。まともに話をしたのは今日が初めてだと言うのに、ユキミヤは俺の相談をひとつずつ噛み砕いてくれた。
     
    「…なるほど。イサギ先生、ひとついい?」
    「?」
    「この学校の生徒はさ、ここを卒業したら何になると思う」
    「…家を継ぐ?」
    「そうだね、貴族なら家督を、商家なら営んでる商いを。…じゃあそれ以外の人は?」
    「…ここで学んだ剣術や魔道でその道に進む?」
    「志のある者だね、素晴らしいと思う」
    「……ギブ。俺の想像力の負けだ、教えてくれ。他にはどんな道があるんだ?」
    「…イサギ先生は高尚な人だ。そのままでいて欲しい気もするけれど。…そうだな、まずは結婚が挙げられる。ここにコネを作りに入学している者も少なくはないよ」
    「え?学ぶためじゃなくて?」
    「魔導学校からの推薦ならまだしも…ここは士官学校、お金にものを言わせて娘を通わせている商家は幾つも知ってるよ」
    「はえー……」
     
     感嘆の声をあげる。すると、彼は可笑しそうに笑った。
     
    「女性に騙されないか心配だな、先生」
    「そ、そんな心配は頼んでないっつーの」
    「口説かれたらまた俺に相談してよ」
    「しない!」
    「ごめんごめん。…俺が言いたかったのは、生徒一人一人に違う思惑があるから、絶対に正しい指導なんてないってこと」
    「…結局解決してないよな?」
    「解決するとは言ってないよ。相談に乗ってるだけ」
    「それもそうか。なあ、ユキミヤはなんでここに来たの? 将来の夢とかあんの」
    「家を継ぐため」
    「そっかお前貴族だもんな…」
    「ユキミヤ家が嫡男、ケンユウと申します」
    「ご丁寧にどうも」
    「先生はどうしてここへ?」
    「……身を任せたらって感じ」
    「一番曖昧な動機でここに居るのは案外先生かもね」
    「そーかも」
    「導いてあげてよ、貴方はわけも分からないうちにここに居たかもしれないけど。学級の生徒にとって先生はイサギ先生しかいないんだから」
    「…いいこと言うね、ユキミヤ。俺の代わりに先生やる?」
    「やらないよ」
    「どうして」
    「…なんだか、先生を見てると領地に居た頃を思い出すな」
    「…なんで?」
    「失礼な意図はないつもり。…子ども相手に読み書き教えてた頃があるんだ。その子らがさ、分からないことがあると『なんで?どうして?』って目を輝かせてたのと先生がどうも重なって───、」
    「喧嘩なら買うってば。早く立てよ」
     
     
     
     
     
     
     


     支援B
     
    「お前んとこの学級、今節の討伐あるだろ」
    「…それが何か」
    「引率、俺が行くことになったからよろしく」
    「担任から聞いてないけど」
    「さっきの会議で決まったから」
     
     食堂で向かい合う男は、少々嫌そうに顔を顰めた。思わずムッとする。なんだ先生に向かってその顔は。お前と俺の仲だろうと肩を組むと更に端正な顔は崩れていく。
     
    「嫌そうにするなよ。…なんか俺お前に嫌われる様なことした?」
    「してない」
    「ならなんでそんな顔するんだよ。ここ座った時も結構嫌そうにしてなかった?」
    「そーゆーの、思っててもズケズケ言わないのが大人じゃないかな」
    「嫌な顔したことは否定しない…!?」
    「ご馳走様でした」
    「おい、もう行くのかよ」
    「俺に構う暇があったらもっと自分の学級の生徒に目をかけたら?」

     そう吐き捨てるとユキミヤは踵を返す。
     
    「イサギせーんせ、今日も振られてんね」
    「バチラ〜! 俺の何が悪いと思う?」
    「うーん、そういう所!」
    「抽象的すぎてびっくりした」
    「…冗談はさて置き。探られたくない腹は人それぞれだし、イサギ先生が気に病むことないと思うよ」
    「そうかなぁ」
    「それにあいつ、ウチの学級じゃないでしょ? 放っておけばいいよ」
    「…。」
    「なんて、金鹿学級から編入してきた俺が言ってもダメか! 気になるならとことんじゃない? それなら十八番でしょ、せーんせ」
    「…ありがとうバチラ」
     
     
     *
     
     
     青獅子学級の引率は滞りなく終えた。今のところ生徒に負傷者はなし。バラついた生徒に指示を仰ぎ順に殿へ返していく。元気が有り余っている者もいれば、俺の顔を見るなりへたり込む者もいた。…三人、二人、…残り一人。まだユキミヤを見ていない。
     最後に見たユキミヤの様子が嫌に気になっていた。普段から訓練所で握っている得物は剣だと記憶していたが、今日は見慣れない槍を携えていたから。あれがユキミヤの家で継承されてきた英雄の遺産と知ったのは討伐の真っ只中だった。
     
    「ユッキー、あんまあの槍好きじゃないって」
    「そうなのか」
    「俺同室だからさ。たまぁにそれ見て思い詰めた顔すんの、見んだよね。俺は貴族様のことはよく分かんねーから」
    「…。」
    「ユッキーのこと見ててあげてな、せーんせ」
     
     オトヤにそう背中を押され、再び荒れた地を踏む。
     
    「ユキミヤ?」
    「────っっ!」
    「ユキミヤ、ここに居たのか。探したんだぞ、」
    「こないで」
    「…は?」
    「見るな、放っておいてくれ、頼む、じゃないと俺、アンタのこと…!!!!」
    「………………ユキミヤ、お前」
    「見るなって言ってるだろ…ッッ!!」
     
     ユキミヤと、視線が合わない。否、焦点があっていない。俺から目を背けているとか、そういう訳ではなさそうだ。…どこまで見えている? その目はいつからそうなんだ? 湧き出てくる問いかけは全て今の彼にとって攻撃に値するだろう。下手に口を開けない。
     
     身体を支えるのは彼が忌々しくてたまらない一本槍。これに意思があるのか、英雄の遺産を深く知らない俺にとって想像でしかないが、この槍はユキミヤに縋られて────嬉しそうにカタカタと震えていた。

     先程のオトヤの話、眼前の光景掛け合わせれば自ずと答えは導き出される。遺産に蝕まれている、それがきっと彼の探られたくない腹で。今、対峙してることになるのだろうか。
     
    「殺す、」
    「っは?」
    「墓まで持っていくはずだったのに、」
    「…それを知った俺は生かしておけないって?」
    「先生、死んでくれよ。頼むよ、俺、こんなところでっ、終わるわけにはいかない」
     
     貴族でない俺にとって、英雄の遺産や紋章の重さがどれだけのものか推し量れない。
     
    「ユキミヤ…」
    「俺と先生の仲でしょ」
    「………………話をしよう」
    「嫌だ」
    「何も見えてないクセに、」
     
     俺は、キスでもするような距離でそう詰った。こんなに近付いても、お前は気が付けない。
    ユキミヤは抵抗のひとつも出来ないまま俺にされるがまま意識を落とされた。
     
     *
     
    「顔も見たくない」
    「そんな事言うなよ」
     
     しばらくすれば症状が治まるというユキミヤの言い分を信じて医務室は避けた。同室の彼がいる部屋に返すわけにもいかず、仕方なく連れてきた俺の部屋、寝台の上でユキミヤは弱々しく悪態を続行する。
     
    「お前には分からないよ、俺の背負ってるもの」
    「知りたくもないね、貴族様のゴタゴタなんて」
    「知ってる? 俺、由緒正しいユキミヤの家の長子ってことになってるんだ」
    「……。」
    「紋章を持って生まれて来れなかった顔もしらない、分家に養子に出されたキョウダイがたくさんいるよ」
    「だから、俺を殺す?」
    「そう。不良品の俺が廃嫡されて、同じことを繰り返すくらいならね」
    「そっか」
    「……嫌いだよ、その目。なんでも見透かしてくるような気がして、悪寒がする」
    「俺は…結構好きだぜ、意思の強い、お前の目」
     
     
     
     


     編入

    「へいユキミヤ、うちの子にならないか」
    「…。」
    「ついに会話すらやめたか? デカい声で言うぞお前の──、」
    「黙れ。殺す」
    「無理だろお前には。俺に訓練所で勝てたことある?」
    「………………はぁ、俺もう行くから」
    「あー、待って待って。勧誘は最後まで聞いてくれ」
    「聞いたら二度と話しかけてこない?」
    「お前の返答次第」
    「……手短に」
    「ありがとう!」
    「早くして」
     
     すっかり俺の前で笑わなくなったユキミヤの尻を追いかけ回す日々も今日で終わりだ。
     
    「黒鷲学級への編入特典その1、俺に隙があったらいつでも殺していい」
    「…。」
    「その2、お前の事情を知る俺を常に視界の端に置いておける。どこで何してるか分からないよりは安心できるだろ」
    「…。」
    「その3、俺を殺せるくらい強くしてやる。…どう?」
     
     一瞥するような見下ろす視線。以前のように屈む仕草をしないせいかよりユキミヤとの体格差を感じる。
     
    「はぁ」
    「!」
    「……条件その1、俺に必要以上話しかけてこない」
    「! …必要以上は、な」
    「条件その2、アレに関しては他言無用。絶対にだ」
    「二人の時は聞いてもいいか?」
    「誰に聞かれてるか分からないからダメ」
    「分かった!」
    「……なんでそんなに嬉しそうなの、先生。殺されることにも前向きだし」
    「別に殺されるつもりはないよ。殺されないように俺も日々強くなる、これで万事解決ってね」
     
     



     
     
     再会

     五年間も谷の底で眠っていたなんて。自分でも信じられない事実を受け止め戦争の火蓋が切られた戦地の土を踏みしめた。
     
    「……いやぁ、流石に五年は凄まじいな。みんな大人になってたよ」
    「でしょでしょー、俺も立派な大人の男ってわけ」
    「バチラは相変わらずだよ」
    「見た目年齢変わってないヒトに言われたくな〜い」

     アドラスティアの街を回っていると、派手な音が町中に轟く。遊撃部隊の帰還を知らせるものらしい。
     
    「せーんせ、お迎え行ってきなよ。昔の学級仲間もいるぜ」
    「そーなんだ。…俺の事覚えてるかな」
    「はいはい、行っといで!」
    「わかった、わかったから押すなって」
    「…………覚えてるもなにも、誰一人としてあんたの死を肯定しなかったよ、俺たちは」
     
     *
     
     解錠、そして開門。仰々しい扉がゆっくり、ゆっくりと開かれていく。
     
    「え、」
     
     圧倒的の軍勢、その整った隊列の先頭、その中心。見覚えのある顔に戦慄する。
     
    「なんで、」
     
     迷わずこちらを向かってくる将に戸惑う。五年前の面影と今が少しずつ重なってゆく。
     
    「ユキミヤ、お前なんで、家は? どうして、」
    「何で?どうして? 昔と変わらないね、イサギ。そんなのは俺が聞きたいっつーの」
    「お前、本当に何してんの…?」
    「何してるんだろうな、本当に。……………おかえりなさい、先生」

     男は、膝をついて俺の手を掬いあげる。まるで恋愛を描いた読み物に出てくる主人公さながら、手の甲にキスをした。
     
    「お前そんなことするっけ…? 俺ユキミヤにめちゃくちゃ嫌われてた気がするんだけど…」
    「嫌いだったらこんな所にいるわけないだろ」
    「もしかして顔のよく似たそっくりさんだったりしない?」
    「忘れたなんて言わせないよ。…ね、先生。俺、あんたのせいで祖国人間いっぱい殺したよ」
    「…覚悟、決まってんね?」
    「許嫁も家も領地も紋章も、ぜーんぶ置いてきた」
    「ガンギマリじゃん」
    「責任取ってくれてもいいぜ」
    「ひっ」
    「あーあ。あの日、あの時。先生が必要以上に俺に踏み込んで来なければこんな事にならなかったのに」

     
     
     
     


     支援A

    「お前、紋章使えなくしたんだってな」
    「我らアドラスティアが誇る紋章学の権威様にお願いしたんだ」
     
     庭先の奥まったところにあるテーブルとチェア。淹れたての紅茶と焼きたてのスコーンを抱えてやってきた男に連れられ訪れた。こんな所もあるんだ、感心していると目の前の彼は思い出し笑いをする。
     
    「とんでもないことだ! ってデカい声で罵られたよ。あー、今思い出しても笑える」

     憑き物が落ちたようだ。出会ったばかりの頃より気安くて、最後に見た姿よりも心の底から今を前向きに生きている。

    「よくあの皇帝が殺さずに生かしてくれたな」
    「少しでも反乱の兆しがあれば殺すとか色々言われた気がするけど……ファーガスの兵を殺せるか、」
    「…。」
    「あの人は俺にそれしか問わなかったよ。…多分、お前の帰りを待つっていう同じ志があったから」
    「…俺に感謝しなよ」
    「お前の存在がなかったらまずここに居ることもないんだけど」
    「それもそうか」
    「責任取る気になった?」
    「あ! このスコーンおいひい」
    「俺、先生が他の女と結婚したら何するか分からないな…」
    「ユキミヤも食べな。はい、クリームたっぷり」
    「んぐ、」
    「美味しいね」
    「…………………………うん、美味しい」
     
     ユキミヤは、ちゃんと口からスコーンがなくなってから口を開く。よし、お茶を濁すことに成功した。香りのいい紅茶を手に取る。
     
    「そういえば聞いてよ先生。俺、将来の夢が出来たよ。聞いてくれる?」
    「!? なになに、先生に話してごらんよ」
    「狭い箱庭でしか息が出来なかった、決められた道以外を選ぼうともしていなかった俺が、何にも囚われず、自分で決めた初めての夢」
    「ちょ、勿体ぶるなよ〜」
    「笑わないって約束して」
    「笑わない笑わない」
    「先生が目を離せないような男になること」
    「…………どういうこと?」
    「───五年前みたいに、これからもちゃんと俺のこと見ててろって言ってるの!!!!」
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