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    くるしま

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    くるしま

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    できてる雑土が、思いがけない場所で遭遇する話。
    ゲストは乱太郎。保健委員好き。
    勢い任せの一本なので、そのうち修正するか書き直すか…。雑土のイチャつきが足りない。

    #雑土井
    miscellaneousWells
    #雑土
    miscellaneousSoil

     裏切られた。
     日常茶飯事ではあるが、気分の良いものではない。
     雑渡は森の中を単身で駆けながら、胸の不愉快さを噛み殺す。
     元はといえば、ドクタケの息がかかった商家をこちらに裏切らせたのはタソガレドキの方だ。一度裏切った人間は、また裏切る。配下数名とその家を訪れた時にも、油断はしていなかった。
     思い返せば、少々おかしな所はあった。商家の主人ではなく、その周りの、ほんの一部の人間に。
     寝返った主人は、何も知らなかっただろう。
     裏切りに見せかけて裏切る、という器用な男ではなかった。
     タソガレドキの忍者たちが周りを囲み、タソガレドキの使者と店主の話し合いが持たれようとした時。
     襲撃を受けた。
     乱暴な襲撃は、中にいる人間全てを殺してもいいという命令を受けていたとしか思えない。それほど行動が早かった。
     裏切りを察知したドクタケが、裏切り者とタソガレドキを同時に始末しようとした、という所か。
     爆音と銃声で、タソガレドキは一斉に撤退した。事前の取り決めだ。使者を守りながら散り散りに逃げて、後で集まる場所も決めている。
     想定外だったのは、銃弾が雑渡を襲った事だ。狙われた訳ではない。乱戦状態で誰かが撃った弾が、雑渡の脚をえぐった。
     鋭い痛みは感じたが、走れなくなる程のものではない。雑渡の負傷に気付いていない部下たちを呼び止めるのは、危険すぎる。
     よって、雑渡は手筈通り一人で逃げた。
     乱戦の興奮がある間は、状況の整理で頭を動かしている間は、痛みを忘れる事はできた。
     だが、安全圏まで来ると、そうもいかない。
     ドクタケの動きからして、彼らの目的は裏切り者の粛清であって、雑渡たちはついでに仕留められれば良いといったところか。
     屋敷から逃げた時も、その後も、気配がついて来る気配はなかった。
     追手はいないであろうと推察し、雑渡は立ち止まる。
     傷口を確認しなければ。
     走れはするが、無理をして悪化させるのは得策ではない。
     木の影で傷口を確認しようとした時。
     微かな気配を感じた。
     通りすがりの人間ではない。気配を殺して近付いている。でなければ、接近されるまで雑渡が気付かない訳がない。
     手練れの忍者だと察した雑渡は、懐の手裏剣を握った。
     追手はいないと踏んでいたのだが、早合点だったか。
     こちらを伺う気配の方向へ、手裏剣を投げる。手応えはない。代わりに別の方角から、石が飛んできた。
     身体をずらしてそれを避ける。
     その僅かな間に、気配が上に移動した。雑渡のいる木の上だ。
     ほとんど反射的に、上の気配へ手裏剣を投げつけようとした刹那。
    「あっ」
     どこか緊張感のない声が耳に届く。誰の声かを悟った瞬間に、雑渡の手が止まる。
     木の上にいる男も、同じように動きを止めている。
    「あ……どうも」
    「……どうも」
     互いに懐に手を突っ込み、武器を持ったまま、土井半助と雑渡は間の抜けた挨拶を交わした。
    「土井先生、何でしたかー? って、あーッ!! 雑渡さん!?」
     甲高い少年の声が聞こえて、雑渡は武器から手を離した。土井も懐から手を出して、地面に着地する。
    「乱太郎! 向こうにいろと言っただろう!?」
    「怪我してるじゃないですか! 手当てしなきゃ!」
     乱太郎は雑渡の怪我を見て、そちらに意識を集中させてしまった。駆け寄る乱太郎を、土井は仕方ないという顔で見ている。
    「手当て、と言ってもなぁ……」
     土井はちらりを雑渡を見た。手を貸してもいいのか?と、目が尋ねている。
     傷を見せる事によって土井に、ひいては忍術学園に知られる情報があってもいいのか、気にしているのだ。
     保険委員とは別の方向性で、彼も甘い男だ。
    「手当てしたらダメなんですか!?」
    「いや、ダメとは言ってないだろう」
    「じゃあいいんですよね!」
    「あのな、雑渡さんにも都合ってものがあるんだから」
    「でも! せっかく薬もたくさんあるのに!」
    「だから、ちょっと待ちなさい」
     押し問答に、思わず口元が緩む。
     雑渡の様子を見て、土井も決めたようだった。
    「わかった。手当はいいが、ここでは落ち着かないから、移動しよう。雑渡さん、肩を貸しますが移動はできますか?」
    「見た目より浅い傷です。お気遣いなく」
     他人行儀に口を利きながらも、土井の手を取る。一人でも歩けはするが、せっかく土井からの申し出だ。
    「追手は?」
     土井は雑渡の腕を自分の肩に乗せながら、雑渡にしか聞こえない小声で尋ねる。雑渡は黙ったまま小さく首を振る。
     土井は少しほっとしたようだ。
     乱太郎を巻き込みたくないのだろう。
     視線を避けられる岩陰に移動した三人は、そこに座った。
     乱太郎が雑渡の怪我を見る。血は出ているが、そこまで深くはない。何しろ、ここまで走って来れたのだ。
     だが、乱太郎は顔を顰める。
    「どうして、こんな怪我……。何かあったんですか?」
    「乱太郎、いつも言ってるだろう。忍者に仕事の話は聞くんじゃない」
     土井が慣れた口調で注意すると、乱太郎も慣れた様子で「そうでした」と返す。
     乱太郎の手当はそれなりに手際が良く、土井が横について口を挟むこともあり、雑渡は何も言わずに手当てを受けるだけで済んだ。
    「そうそう。このくらいの怪我なら、これでいい。これがもう少しこちらにズレると、もっと血が出るからそうしたら……」
     教材扱いされている気はしたが、突っ込むのも野暮だろう。
     手当ての最中に聞いてみれば、土井と乱太郎は二人で保健委員用の薬の仕入れに行った帰りだと言う。
    「前は保健委員だけで行ったんですけどねー。一日で済むところが、不運が重なって、三日かかっちゃって」
    「乱太郎。こっちの事情も話すんじゃない」
     土井が、わかっているのか?という顔をしている。
     雑渡は気にしなかった。
    「それで、先生と一緒にお出かけという訳だね」
    「そうなんですよ」
     よし、と乱太郎が土井を見上げる。
    「土井先生、終わりました」
     土井が確認して、雑渡も頷き、手当てが終わる。
     さてどうしようかな、というのが雑渡の思った事だ。
    「部下の方々と落ち合う場所は?」
     土井が雑渡に尋ねる。彼の顔を見て、同じことを考えているのがわかった。
     このまま一緒にいる訳にはいかないが、怪我人を一人で置いていく事を、乱太郎が納得するかどうか。
    「ここから少し離れているが、行けない程では」
    「駄目ですよ歩いちゃ!」
     案の定、乱太郎が言う。続けて、
    「私が行って、雑渡さんの事を知らせて来ますよ!」
     何とも真っ直ぐな提案に、土井が頭を抱えるのが見えた。土井の立場からすれば、反対する理由しかないだろう。
    「あのな、乱太郎」
    「では、お願いしよう」
    「雑渡さん!?」
     土井からすれば反対でも、雑渡からしたらそこまでの危険は感じない。
     ここまで追手の気配はなかった。むしろ、何かあった時のためのタソガレドキの別動隊が動き出している頃だろう。
     今、雑渡を探しているのは味方だけだ。
     それに、雑渡の部下には乱太郎の顔を見知っている者も多い。土井では警戒する者も、乱太郎ならば警戒は薄いだろう。
     部下たちは、良く言えば彼の性質を知っている。悪く言えば、乱太郎に彼らを騙せるはずがないと侮られている。
     土井は乱太郎に危険性を並び立てているが、聞くはずもない。
    「危険なんだぞ。私が行くから、乱太郎はここに残れ」
    「でも、向こうに尊奈門さんがいたら、絶対こじれるでしょう?」
    「いやそれは……」
    「なるほど」
    「雑渡さん、納得しないで下さい! そもそも、向こうに尊奈門くんがいるかどうか分からないだろう」
    「恐らくおりますな」
    「そうですか……」
     雑渡の横槍で、土井が肩を落とす。もう決まりだ。
     雑渡は口頭で場所を説明する。場所そのものではなく、そこに向かう者を見張る場所の辺りを。
    「それから、誰かに会ったら、これを渡してもらえるかな」
     雑渡は、乱太郎の腕に懐から出した布を縛った。雑渡の側にいる面々ならば、雑渡のものだと気付く。こうしておけば、乱太郎を無視する事もないだろう。
     土井が、言いにくそうに雑渡に声をかける。
    「あの、もし大事な物でしたら、乱太郎には預けない方が良いかと……」
    「何でですか土井先生!」
    「今まで散々汚したり燃やしたりしただろうが!」
    「そうでしたー」
    「大事な物ではないよ。うちは乱太郎くんを知っている者も多いから、無くしてもまあ大丈夫だろう」
    「だそうだ。が、失くすなよ?」
    「はい!」
     それから土井は、乱太郎の前にしゃがんで、言い聞かせるように言った。
    「いいか、道は覚えたな?」
    「はい」
    「寄り道はするなよ」
    「はい」
    「少しでも危険を感じたら、ここに戻って来なさい」
    「はい」
    「戻れないほど迷ったら、もしくはタソガレドキの誰かに雑渡さんの事を伝えられたら、行きに見かけた茶屋で待っているんだ。覚えているな? 私も日暮までには行くから」
    「はい」
     土井の言葉のすべてに頷き、
    「では、いってきます!」
    「気をつけろよ」
    「はーい!」
     大きな返事をして、元気に乱太郎が駆けていく。
    「いい返事だ」
    「そうですね。さっき私が向こうで待っていろと言った時も、いいお返事でしたよ」
     座ったままの雑渡が、土井を見上げる。乱太郎が行った方向を心配そうに見ていたが、追いかけるつもりはなさそうだ。
    「ところで、土井先生」
    「何ですか」
    「日暮れまでに部下たちが来なかったら、私はここに置いていかれるという事かな?」
    「だって雑渡さん、動けるでしょう?」
    「ほう」
    「出血はそれなりでしたが、傷はそこまで深くもない。見ればわかりますよ」
     土井は、ふぅと息をつく。
    「とはいえ、怪我人ですからね。誰か来るまでは、お付き合いします」
    「生徒の心配はいいのかな?」
    「危険はないのでしょう? でなければ、あなたの居場所を知っている子供を、一人で行かせる訳がない」
     その通り。
     ここに来るまで、怪しい気配はひとつもなかった。乱太郎も、集合場所に行くまでもなく、配下の誰かに見つかるだろう。
    「それにしても、珍しくヘマをしたものですね」
    「言葉もない」
     雑渡が降参すると、土井は初めて笑った。
     土井は雑渡に会う時は常に緊張の糸を張っていて、隙を見せる事はあっても、無防備になる事はほとんどない。
     今も、辺りに気を配っている。癖のようなものだ。雑渡でもそうする。
    「ありがとうございました」
     急に礼を言われて、雑渡は少し驚いた。
    「あのまま去る事もできたでしょうに、乱太郎の手当を受けてくれて感謝します」
    「礼を言うのは、こちらでは?」
    「いえ。我々の手出しが余計なお世話なのは、分かっていますから」
     実際には土井の言う通りではあるが、余計なお世話をされたとまでは思っていない。
     怪我をした脚に無理はさせたくない。本当に通りすがりの他人なら、それでも無視していた。手当を受けたのは、彼らであったからだ。
    「あのまま通り過ぎれば、あの子は、しばらく気にしていたでしょう」
    「保健委員は相変わらずだ」
    「本当に、困ったものです」
     言葉とは裏葉の優しい口調が、雑渡の耳をくすぐる。
    「土井先生。手を貸してもらえるかな」
    「いいですけど……」
     土井の腕に掴まって、立ち上がる。そう痛みはない。
    「大丈夫ですか?」
     脚を気にする土井の肩に手を回して、土井の身体に巻き付くように抱き締める。
    「ちょっと……!」
     体重をかけて、土井の肩を抱き込んだ。土井は抗議の声を上げたが、怪我人を突き飛ばす様な男ではない。
    「まったく……」
     不満そうな声は漏らしつつも、雑渡の腕の中に収まった。
    「……痛みはありますか?」
    「あるが、酷くはないね」
    「そうですか」
     それきり、土井は口を開かない。周囲の気配に気を配っているのはわかるが、それにしても静かだった。
     いつも土井と会うのは、人気のない夜だった。
     時には互いの顔さえよく見えない闇の中に紛れて、束の間だけ抱き合う。
     岩陰とはいえ、これほど明るい場所で土居を抱いているのが、何とも不思議な気持ちだった。
    「……考え事ですか?」
    「考え事をしているのは、土井殿では?」
     土井は答えなかった。ただ片手で、雑渡の腕に触れる。
     しばらく待つと、土井はようやく口を開いた。
    「少し、考えていました」
    「何を?」
    「私が、雑渡さんにできる事は、何もないと」
     いつもより低く、小さな囁きだった。
    「傷ついたあなたを手当して看病するのは、私ではない」
     淡々とした、
    「あなたが命を失ったとして、仇を取るのも弔うのも私ではない」
     抑揚のない、平坦な声。
    「あなたに何があったとしても、私は悲しむ事しかできない」
     雑渡に何かあれば、土井が、この情の深い男が、人知れず悲しむ。誰とも分け合えない悲しみを一人で抱える。恐らく、生きている間、ずっと。
     彼の心に、消せない傷が残る。
     無意識に口元がゆるむ。
     それは、悪くない想像だった。
     いつかの死に際に今日の土井を思い出して、きっと自分は笑うだろう。
    「……笑っていません?」
     土井の鋭い声に、雑渡は今笑っている自分に気付いた。
     土井が離れようとするのを、力を込めて押し留める。
     抵抗しようとした土井は、雑渡の脚を見て、動かなくなった。
     息を吐いて、雑渡の肩に額を乗せる。
    「……忘れて下さい」
     ぽつりと土井が言う。
    「何故?」
    「意味のない事を言いました」
    「私にはそうでもないよ。私に何かあれば土井先生が泣いてくれるというのは、悪くない」
    「悲しむとは言いましたが、泣くとは言っていませんよ」
     ふてくされたような声になっている。照れているのか、怒っているのか。
    「残念だ。生徒の点数が良かっただけで涙を流す土井先生が、私のためには泣いてくれないとは」
    「それ誰から聞いて……ッ」
     土井が不自然に言葉を切って離れるのと、雑渡の腕から力が抜けるのは同時だった。
     この時間の終わりを、軽く残念に感じる。駆けつけてきた部下たちには申し訳ないが。
     距離を取った二人の前に、次々とタソガレドキ忍者が集まってくる。
     最後に着いた尊奈門は、土井の顔を見るなり、
    「おのれ土井半助!」
     と怒鳴って、横にいた高坂の一撃を頭にくらった。
    「やめろ。組頭を助けて頂いたのだぞ」
    「う……」
     渋々と言った様子で、頭を下げる。不満です、と顔に書いたままで。
     土井が行かなくて正解だった、と雑渡も土井も思った。
    「尊奈門が相変わらずで、申し訳ない」
    「いえ……」
     土井は引き気味の笑みで答えると、部下たちを見回した。
    「乱太郎はどうしました?」
    「待合場所の茶屋まで送らせました。既に着いているかと」
    「ありがとうございます。私はそちらに向かいますので」
     土井は身支度をして、タソガレドキの忍者たち、それに雑渡に一礼した。
    「それでは。雑渡さん、お大事に」
    「お手数をかけました。保健委員にもよろしく」
     土井の気配が完全に消えてから、更に数名が姿を現す。
     雑渡は、怪我はしたが大した事はないと部下を安心させてから、一通り報告を聞いた。
     雑渡の予想に皆も異論はない様子で、見張と情報収集を残してまずはタソガレドキに戻る事になった。
    「組頭。薬がありますが、入用ですか」
     山本が雑渡に近付く。
    「いや、忍術学園からの薬で行けそうだ」
    「偶然ですか?」
     潜めた声に、小さく「ああ」と答える。
    「面白い偶然もあったものだ」
    「楽しそうで何よりです」
     それから、山本は更に小声で付け加える。
    「我らの到着は、早すぎましたかな」
     少しだけ揶揄う色の混ざった言葉に、雑渡は小さく笑った。
    「わかっているなら、もっとゆっくり来てくれても良いだろう」
    「組頭が心配のあまり急いでしまいました」
     しれっと言う。いい部下を持ったものだ。
     雑渡は長めの瞬きをして、表情を切り替えた。
    「行くぞ」
    「はっ」
     あっという間に人影は消え、人のいた痕跡も同時に消された。




    「あっ、土井先生ー」
     茶屋の店先に座っていた乱太郎が、土井を見つけて、手を振る。
    「乱太郎。よくやったな。怪我はないか?」
    「はいっ」
     もうタソガレドキの者はおらず、乱太郎の腕に巻かれた布もない。
     土井と乱太郎は、並んで歩き出す。予定よりもだいぶ遅くなるが、門限には何とか間に合うだろう。
    「乱太郎。今日の事は、学園に戻ったら誰にも言うんじゃないぞ」
    「秘密なんですか?」
    「忍者の仕事絡みだぞ。秘密に決まってるだろう」
    「でも、手当に使っちゃった薬の分、数が合わなくなっちゃいますよ」
     乱太郎が背負った籠を見ながら言う。消耗品の辻褄を合わせなければ、と気が回ったのは合格だ。
    「そうだなぁ。途中で、知らない人の怪我を手当てをした事にしておくか」
    「知らない人の手当ですか?」
    「するだろう、お前なら」
     否定できない乱太郎は、うーんと少し考えた。この子は、嘘が苦手なのだ。
    「わかりました。そう言っておきますね!」
    「ああ」
     歩きながら口裏を合わせていく。味方にも言えない事を抱えるのが忍者あるのだから、これもいい経験だろう。
     事実は、学園長にだけ報告すればいい。もちろん、雑渡に抱き締められた辺りは省いて。
     土井は嘘が苦手ではない。学園には土井よりも上手の教師たちがいるから、すべて隠しきれるものではないが、幸いにも、暴かれすぎはしない。無言のまま流してもらえる。今の所は。
     このお目溢しが続くか否かは、土井次第だろう。
     それにしても。
     土井は内心で溜息をついた。今日の出来事を振り返ってみても、大きな判断ミスはしていないと思う。
     ただ、一つだけ。
     雑渡の怪我を見た動揺で、穏やかな抱擁に安心しすぎて、口を滑らせた。
     忘れてくれないかな。くれないだろうな。
     軽い後悔と気恥ずかしさを抱えながら、土井は乱太郎と一緒に学園への道を歩いた。
     次に雑渡と出会った時、彼がせめて忘れたふりをしてくれるように願いながら。
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