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    Layla_utsusemi

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    Layla_utsusemi

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    一次創作【空蝉日記】のショートストーリー。誰かが捨てた駒を、再利用するお話。

    【空蝉日記 短編】捨てる悪魔あれば拾う悪魔あり───ふと、目が覚めたらそこは見知らぬ部屋の天井だった。

    ……なんて、どこのホラー小説の書き出しかしら。でも、事実なのだから仕方がない。
    なぜこんな所に居るのか考察する前にその身を起こそうとした……が、全身がヒリヒリと痛む。

    ああ、そうだ。私は自殺未遂をしようとしたんだ。ギャンブルに狂った父親と、そんな父親と共に私のことを虐げる母親から逃げる為に。
    確か私は、全身を……もはや傷が付いていない箇所を探す方が難しいほどリストカットをし、そのあと市販薬でオーバードーズをした。

    動けないのは、傷の痛みと薬による麻痺だろうか。

    『死ぬことすら許されないのか』そんなことを思っていると、横から男性の声が聞こえた。


    「ああ、目覚めたかい。」

    寝転ぶ私の視界を覗き込むように、特徴的な容姿の男性が顔を出した。
    髪は銀、灰色?で、黄色のメッシュ……いや、よく見たら黒のメッシュも入っている。
    見た目は若く、恐らく私と同い年くらい。

    「……だ……」

    「ああ、まだ喋らない方がいいよ。麻痺が酷いらしい。相当な数の薬を飲んだみたいだね?」

    「…………。」

    「まず最初に言っておくと、僕は君を下心で保護した訳では無い。ましてや、善意でもない。 」

    私は彼の言葉を聞いて、疑問を覚えた。善意も無くなぜ自殺未遂をした見知らぬ女を匿う必要があるの?というか……この人は、誰?

    「君のお父さんは借金をしているね。そして、ヤクザから追い立てられている。君もその飛び火を食らって襲われかけたことがあるんじゃないのかい?」

    ……図星だった。なぜ知ってるの?

    「それは僕が、君たち家族を追うヤクザと取引をしているから。情報が入ってくるんだよ。」

    私の思考を読んだかように、彼は先回りしてそう答えた。ああそうか、ではこの男性はアイツらに頼まれて私を殺そうと……。
    「残念ながら、そうじゃ無い。いや、別に残念ではないか。むしろ君にとって僕は蜘蛛の糸。」

    また、思考を読まれた。

    「死にかけの君を、まぁ……僕の知り合いに頼んで家に上がり込んでもらってまで回収したのは、君の立場じゃなきゃ頼めないことがあるからだ。」
    一人で喋り続ける彼。ただただ困惑するだけの私に、彼は簡潔に結論を口にした。

    「まぁ要は、助けてあげるから僕に協力して?」


    "貴方はあのヤクザの仲間ではないのか?"
    そんな私の疑問を再び彼が先読みした。

    「実はねぇ……ちょっと今の契約上だとこっちに不都合があるもんで。このまま一方的に利用されるだけの関係性に頼るより、いっそ潰した方が楽なんだ。

    ……っていうのは建前で、都合よく動いてくれていた筈の齢17の子供にいとも容易く手のひら返されて、しかもそれに協力したのが切り落とした筈のトカゲの尻尾だったっていう面白い状況が見たいだけなんだけど。」

    ───私は、自らの意識が少しずつ明瞭になるのと反比例して混乱が加速していき、唯一理解出来たのは『ああ、彼は17歳なんだ。1つ上だ。』ということだけだった。

    それからなんとかして、まくし立てるように浴びせられた彼の言葉を整理する。
    つまり……あのヤクザを裏切ったら面白そうだから、それに協力してほしくて私を助けた?

    最後に、一番の疑問の答えを彼は口にした。

    「そういえば名乗ってなかったね。僕の名前は───悠川 龍希。」
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