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    SakuraK_0414

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    SakuraK_0414

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    新婚旅行前日の譲テツ。旅行開始直後のドタバタを添えて。
    レタスサラダ、正確にはレタスアローンサラダ、ですね。Let us aloneあるいはもっと過激にLet us alone without dressing.
    徹夜明けの譲介くんがハワイ行きましょハワイ!っていうところがすべてのつもりでしたがちょっと違う感じになりました。

    #譲テツ

    ハニームーンにレタスサラダ 徹郎さんハワイ行きましょハワイ!
     朝7時、いつもの「ただいま戻りました」とか「今帰りました」の挨拶もなしにクエイド財団所属医師、ドクターJOEこと和久井譲介は元気いっぱいそう言った。
     別に、これがいつもの和久井譲介なら真田徹郎も別に何も思わない。否、大前提として、昨晩は夜勤ではなかったはずだ。
    「どうせ一睡もしてねぇんだろうが」
     ため息をついた真田徹郎がコーヒーカップを机に置いて「とりあえず寝ろ」と声をかけると、同居人はある種の習性としてきちんと洗面所に向かいながらも大笑いして「嫌です!」と言った。
    「明日は朝からハワイに行くんですから荷物積めないと!」
    「いやあきらかに疲労と徹夜でテンションがおかしくなってんだろが」
     元保護者で現伴侶が言ったって聞きやしない。次から次にやってくる急患に対応しっぱなしだった若い医師は「ハワイ~ハワイ~」なんて即席の歌を歌いながら徹郎のいたリビングにやってきて、彼を抱きしめて胸に頭を預けてしまう。人肌の温みか安心感からか、譲介はゆっくりと瞼を閉ざし始める。
    「おい、ここで寝るな。年寄りに重労働させる気か」
     頭を小突いたが目を開ける様子はない。しかし完全に寝てしまったというわけでもなく、もにゃもにゃと返事がある。
    「……重労働?」
    「お前をベッドまで運びきる自信はねぇぞ」
    「うっそだぁ」
     いつものタンクトップの胸元で譲介が子供のような顔をして笑う。これじゃあ子供そのもの、と内心で苦笑しながら寝室まで引きずろうとしたら、すぐそばにあったソファに体が沈み込む。
     なぜ?
     顔を上げて……譲介と目が合った。自分を押し倒して目を細めて、薄いくちびるの合間からかすかに白い歯をのぞかせて、差し込む朝の陽ざしを受けて髪をきらめかせながら蕩けるようにほほ笑む年下の恋人。
     触れ合った手が握りこまれる。眠気からかほとんど力はこもっていないが、徹郎はろくな抵抗もできずに固まってしまう。何せ、恋人があまりに美しかったので。
    「できるでしょ、いつもこんなすごいことしてくれるんだから」
     眠気のせいで言ってることはめちゃくちゃだが。
     譲介が身をかがめ、中途半端にソファに乗っていた脚の膝裏に手が差し込まれてわずかに持ち上げられる。確かに昨夜は譲介が予定通りに帰ってきていたら「そう」しようと思っていたが、何もかもあまりに急で。
    「おい譲介、お前」
     だが、抗議の言葉が最後まで口にされることはなかった。
     膝裏を支える力が抜けて、身をかがめていた徹夜明けの医師はめちゃくちゃな体勢のまま徹郎に体重を預けて寝息を立てている。
    「あー、くそ……運ばねぇからな」
     頭をひっぱたいてやろうかと思ったが出来なかった。
     本当に子供、安心しきった子供の顔をしているのを見て、徹郎は大きくため息をつくとなんとか譲介の下から這い出し、隣の部屋のベッドの上で丸くなっていたブランケットをかけてやる。起きたら着替えさせてコーヒーでも飲ませて食事を取らせて仕事は……。
    (ああ、そうか、全然休んでなかったからまとめて5日間休み貰ったって言ってたか)
     新婚なんだし旅行でも行ってきなよ、と朝倉省吾が笑っていたのを思い出す。ちなみに彼は譲介から徹郎との関係を聞かされた時、二人の年齢差については「ハリウッドセレブみたいだね!」とコメントしたし、関係性については「ロマンス映画みたいでいいね!」とコメントした。
    (それにしてもハワイ……ハワイ? 新婚旅行のつもりか?) 
     そもそも新婚旅行はハワイ!なんてのが流行ったのはそれこそ徹郎が20代だったころの話だ。今でも海外ウエディングは人気があるがハワイにはとどまらないだろう。
     そんなことを思っていると、ゴトン、と重いものが落ちた音がする。何事かと思って音の下あたりに目をやってブランケットを持ち上げると譲介のスマートフォンと青い小さなベルベット地の箱が床の上にあった。
     拾い上げれば、どちらも壊れてはいないらしい。スマートフォンの方は落ちた衝撃でスリープモードが解除されて最後に持ち主が見ていたページが表示される。何とはなしにそれを見て、徹郎は喉を震わせて笑った。
    「ま、熱海って言い出すよか今風か」
     画面には、ホテルと飛行機の予約完了ページ。なるほど確かに明日朝のフライト、昼頃にホノルル空港着。
    「……俺も荷物詰めたら少し寝ないとな」
     落ちたものはテーブルの上にきちんと乗せて、和久井譲介の伴侶は自分の部屋に向かった。
     
     譲介が目を覚ましたのは昼も過ぎた頃だった。時計に目をやってから反射的にローテーブルの上のスマホでフライトの予約完了画面と日付を確認してほっと下のもつかの間、ソファから体を起こすと、部屋の隅に持ち主にそっくりのゴツいキャリーケースが出ていてすわ家出の準備かと心臓が跳ね上がる。深呼吸をして自分を落ち着かせ、そういうのは同居開始した時に3回くらいやって連れ戻して一緒にいると言ってくれたのだから、と自分に言い聞かせる。
    「徹郎さん?」
     リビングを見渡すと、傍の机の上にはコーヒーカップと論文のコピーが乗っていた。彼がそこにいた痕。ついでにその隣には昨日の夕方受け取った青い箱。その中身を確認してほっと息をつく。揃いの環の一つを自分の左手薬指に飾り、もう一つを持って譲介が徹郎の部屋の扉をそっと開くと彼はきちんとベッドの上で眠っていて、ああそうか彼も寝ずに自分が帰ってくるのを待っていたのかと分かる。ベッドの傍に屈みこんで、随分年上の手にそっと触れてから譲介は左手の薬指に銀の環をそっとはめる。別にずっとつけてほしいとかではなくて、それが指に光っているのを一度見られたら良いなぁ、くらいの気持ちだったのだが。
    「首輪みてぇだなぁ」
     寝起きのかすれた声が笑いを滲ませて囁いた。
    「あ、いえ、そういうつもりはなくて」
     そりゃあ起きるか、と驚きながらも弁明しようとするが、ゆっくりと体を起こした徹郎の指先が遊ぶようにくちびるにふれて譲介はすっかり口を閉ざす。昼下がりの光がカーテンから滲むベッドの上で、伴侶が笑う。
    「良いぜ、ああ、おめぇにそうされるなら、存外悪くねぇ」
     ほほ笑んでいるように見えて、挑発のにじむ顔。
     昨日の朝、譲介は出がけに行ったのだ。「今晩抱きますから」なんて。
     ついでに、恋人の最後の家出の後も思い出す。なんとか徹郎を家に連れ戻した後の話し合いは譲介の泣き落としが決め手になった。泣き落としというか本当に泣いたのだが。どこぞで入手した手錠やらなにやら片手に大泣きした。
    「僕を犯罪者にするつもりですか?!」
     なんて言って。
     ついでにそのあとしばらくしてからのセックスでその手の道具を使ったのを思い出して、譲介はさらに頬を熱くする。あのときはめちゃくちゃ盛り上がった。
    「……とりあえずキャリーにゴムとローション入れときまね」
     図らずとも声は唸るような響きだった。
     
     しかし、旅行を目前にそんな色っぽい言い合いをしていたのも一時的に記憶のかなたに。久々のまとまった休み、しかも新婚旅行ということで譲介はめずらしく、そして分かりやすくテンション高く、ニコニコしながら「まさかいつもの格好で行くつもりじゃないですよね」と言って徹郎にラフな服を着せ、空港までの道すがらでは「コナコーヒー買って帰りましょうね」なんて言った。いざ飛行機に乗ると、おおむね問題なかったものの着陸間際になって急病人が出て、揺れる飛行機の中応急処置に追われてそれはもう大変だったのだが。無事ホノルル空港に着いたら着いたであちこちから事情を聞かせてくれ応急処置について教えてくれと熱心な人に囲まれ、それを大真面目に答えて解放されたときにはさすがに2人ともため息をついた。病院まで付き添おうとした2人をとどめたのは救急隊員たちだった。遊びにいらしたんでしょう、お2人の処置が完璧でしたので後はこちらにお任せを、と力強く言った人々は2人の名前を尋ねると握手して早々に病院に向かった。
     良かった、と呟いた譲介はそのあと分かりやすくずっと上機嫌で、空港内のショップでアロハシャツを2枚購入すると片方を問答無用で伴侶に押し付ける。
    「ね、この色絶対似合いますから! あ、あの売店、レモネード売ってるみたいです。喉乾いてませんか? それとも他に何か飲みたいものあります?」
     とはいえこれはちょっと良くないな、と年上の医師は飛行機内でのことを思い出す。元重病人ということを鑑みてか、着陸態勢に入った機内で一番よく動いたのはドクターJOEだった。揺れる機内で少しでも手元がブレれば患者の命を奪いかねない状態でも少ない応急処置道具を用いて凄まじい集中力を発揮して救命にあたった。
     その緊張の反動が、医者の顔をやめたとたんに妙な方向になって出てきている。
    「譲介」
     名前を呼ぶと、ハイ、と元気の良い返事。
    「どこか行きたいとこありますか?」
     苦笑した徹郎は彼の背をポンポンと叩いて抱き寄せ、背をかがめて耳元で言ってやる。
    「せっかくの新婚旅行だろ? 二人っきりになれる静かなとこがいい」
     返事は一言、蚊の鳴くような「ハイ」だった。

     後日、和久井譲介の同期と言うべき黒須一也や宮坂詩織、二人目の師匠のKこと神代一人、あるいは現在の上司である朝倉省吾の元には譲介とその31年上の伴侶がワイキキビーチ背景にアロハシャツで指輪を見せびらかす写真が送られてきたり、朝倉経由で彼らのことを知った件の救急隊員たちから新婚祝いの品が送られてきたりするのだが、それはまた別の話。
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    SakuraK_0414

    DOODLE365日いつでもバニーを書いてよろしい、と神は仰せになった。なってない。でも今年はウサギ年だし9月はお月見だしそうじゃなくてもバニーを書いて良い。ということで、以前書いたバニーの譲テツ也宮添えの続きです。バニー衣装着るのが恥ずかしくてへにゃへにゃになってる自分の魅力に無自覚な闇医者。
    ちなみにバニースーツ餅つき、というのも二次イラスト的には可愛らしさと色気とポップさがあって良いなと思う。
    You're Bunny.「いや……これは、キツいだろ」
     さすがに、とドクターTETSUこと真田徹郎は独り言ちてそこらへんに置いていたカーディガンを羽織った。誰も見てないとはいえ、さすがにいたたまれない。特注品のバカみたいに大きな衣装一式が自分の体にぴったり沿うように作られているのもいたたまれない。衣装一式の入っていた箱に同封されたパンフレットの中で凄艶に笑うバニースーツを纏った美青年の姿が目に入って、もっといたたまれなくなる。
    (今より30若ければ、とは思いはしねぇが……)
     海千山千、天下の闇医者ドクターテツは危ない橋を渡りもしたし、死にかけたこともある。人生における大概の苦難と規格外の苦難を大方乗り越え、もう並大抵のことでは動じることも無い。
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    SakuraK_0414

    DOODLE譲→テツで、譲介くんがクエイドに行くぞ!となる話。細かいところはもう色々捏造してます。時間とか季節のこととかめちゃくちゃです。朝倉先生が診療所に来た頃のイメージで、遅れてきた七夕ネタでもあります。
    コンビニ店内でかかってる曲はモー娘。22の「Chu Chu Chu 僕らの未来」、譲介君がこの歌詞僕のことだ…ってなってるのはモー娘。19の「青春Night」です。参考しながら読むと楽しいかもしれない
    青春Nightに僕らの未来「……モー娘の新曲だな」
     コンビニの店内、隣に立つ譲介が、あの和久井譲介が呟いたので黒須一也はぎょっとして彼を見つめた。店内には確かに女子グループアイドルの楽曲が流れているが、こんな難しそうな曲、しかもワンフレーズを聞いただけでそれが分かったのか、と一也はますます目を見開く。
    「……なんだよ」
     じろりと譲介が睨んだ。あのハマー乗りの闇医者そっくりの長い前髪の合間から覗く左目の迫力に気圧されて一也は黙り込む。
    「お前だってモー娘。くらい知ってるだろ、僕らは世代だし、どこ行ったって流れてたし、ラブマシーンとか」
    「あ、いや、その、譲介はアイドルとか興味ない、というか好きじゃないと思ってたから」
    「別に興味はないし好きでもないぞ」
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    SakuraK_0414

    DONE譲テツのなんかポエミーな話です。
    譲テツと芸術と27階時代からアメリカ寛解同居ラブラブ時空の話になりました。
    最初のジャズは You’d Be Nice to Come Home Toです。裸婦画はルネサンス期の任意の裸婦画、文学は遠藤周作「海と毒薬」のイメージです。引き取ったなりの責任として旅行とか連れて行ってたテツセンセの話です。
    ムーサ、あるいは裸のマハ。副題:神の不在と実在について。ムーサ:音楽、韻律の女神。ブルーノート東京にて。

     いつだったかの夏。
     学校から帰ってくるなり来週の診察は譲介、お前も付いて来い、と言われた。家を出るのは夕方からだと聞かされてちょっと安心したものの熱帯夜の続く8月の上旬のこと、内心うんざりしたが拒否権は無かった。この間の期末テストで学年1位だったご褒美だ、と言われたからだ。
     成績トップのご褒美が患者の診察についていく権利って何だよ、と思いはしたがこのドクターTETSUという様々な武勇伝を引っ提げた色々とんでもない身元引受人が医学を教えるという約束を反故にしないでいてくれたのが嬉しかったのもある。
     当日の夕方の移動中ドクターTETSUは僕に患者の状態などを説明してくれたが、内心落ち着かず、どこに連れていかれるのか気になって話はあまり聞けていなかった。これを着ていけ、と上から下まで真新しい服一式を渡されたからだ。サックスブルーと白のボーダーシャツにネイビーの麻のサマージャケットをメインに、靴は通学に使うのとは違うウィングチップの革靴まで差し出されたのだ。普段は政界・財界に影響力を持つ患者の対応をいつもの制服で対応させるこの人がこんな服を持ってくるなんてよっぽどの患者なのか、と身構えてしまった。多分それは横にいる大人にはバレていたのだけれど、彼は指摘して叱るようなことはしなかった。
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