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    SakuraK_0414

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    SakuraK_0414

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    他人の子ほど早く成長するシリーズ?の2つ目です。ティガワールの学習本と一也くん。
    新書本は中公新書のイメージです。最終的に譲テツになるやつです。

    #譲テツ

    他人の子がいつまでも子供に見える 妙な風体の客が来た。いや、妙というのはおかしいか。別に普通だ。なんというか……そう、杖を突いているのに背筋がピンと伸びて眼光は鋭く髪は苛烈なまでに黒く、妙なアンバランスさがある男だ。大人の年齢などまだ20代になったばかりの新人バイトの俺には分からないが、50代くらいだろうか。何やら只者ではないことだけは分かる。そんな人が何を買うのだろうかと彼を注視していると、カツカツと杖を鳴らしながら本棚の間を歩き少し迷ってから学習書の本棚に向かいざっとラインナップを見回してから一冊手に取り、そのまま次は新書本のコーナーに向かう。既に目当ての本は決まっているようで、見つけ出した一冊を引き抜くとさっさとこちらに向かって「頼む」と商品を差し出した。
    「お預かりいたします」
     よくわかる学習シリーズ31番のティガワール王国と、新書本の「物語 ティガワール王国の歴史」。ティガワールに興味があるのだろうが子供向けの本と一般向けの本の奇妙な組み合わせがよく分からないな、と思いながら金額を表示すると、真黒いクレジットカードが差し出されて手が震えた。
    「一括で頼む」
     やや掠れた声ではい、と返事すると隣に立っていた先輩が助けてくれて、なんとかお会計を終えたところでブックカバーをかけるか否か聞き忘れたことに気づく。
    「あ、あの、すみません、ブックカバーおかけしますか?」
     声は露骨に震えていた。妙な風体の男は鋭い眼光で「そのままでいい」と返事して、獰猛な顔で笑って言った。
    「別に取って食やしねぇよ」
     その後ろ姿をみつめて一瞬ぽかんとした俺は、気恥ずかしさを感じながら「ありがとうございました!」と大きな声で客を見送った。

    ***

     それから数日後、乱雑に手渡された本を見て黒須一也はやや戸惑った。これから受け持つ患者について知っておけと本を渡す、そこまでは分かる。しかしそれがなぜ児童用学習本なのか。まだ学生の身分とはいえ、一也は医学部5回生で23歳。小学校を卒業して久しいのに。
     独り身で一匹狼の闇医者がわざわざ書店でこれを購入したのは明らかだ。中には短冊状のアレこと売上スリップが挟まったままの新品。わからない、と一也はハマーの窓からコーヒーを買いに行ったドクターTETSUの姿を探すがはしゃいで回る小さな子供連れが目に留まってそれは叶わなかった。母親の手を引いて駆けて行く少年を見つめわずかにため息をついたところでふと視界に深緑の本が入りこむ。なんだろう、と引き寄せたそれは新書本で、表紙には「物語 ティガワール王国の歴史」と印字されていた。中にはいくらかのふせんが貼られ、メモが添えられている。その字がかなり読みやすいだとか、そんなことより。
    「あるんじゃないか、一般向けの本」
     一也はつぶやいて、新書本を閉じて元あった場所に戻す。まさか本当にまだ小さな子供だと思われているのでは。いやまさか、だって自分と同い年の譲介と一緒に暮らしていたのだから、彼と同い年の自分を小さな子供だと思っているなんてことは……。
     あれこれ考えても余計にわからなくなるばかりで、結局一也は諦めて読みかけの学習本を開いた。短いページで重要なことを的確に伝える、という意味でスピード学習にはこれ以上ないくらいに適切だったのだ。
    「……まさかそれを見越して?」
     妙に段取りが良いんだもんなドクターTETSUは、なんて呟いてふと譲介のことを思い出す。彼らがあの頃どんなふうに過ごしていて譲介が何を感じていたのか知りたいと、一也はいま初めて強く思った。
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    SakuraK_0414

    DOODLE365日いつでもバニーを書いてよろしい、と神は仰せになった。なってない。でも今年はウサギ年だし9月はお月見だしそうじゃなくてもバニーを書いて良い。ということで、以前書いたバニーの譲テツ也宮添えの続きです。バニー衣装着るのが恥ずかしくてへにゃへにゃになってる自分の魅力に無自覚な闇医者。
    ちなみにバニースーツ餅つき、というのも二次イラスト的には可愛らしさと色気とポップさがあって良いなと思う。
    You're Bunny.「いや……これは、キツいだろ」
     さすがに、とドクターTETSUこと真田徹郎は独り言ちてそこらへんに置いていたカーディガンを羽織った。誰も見てないとはいえ、さすがにいたたまれない。特注品のバカみたいに大きな衣装一式が自分の体にぴったり沿うように作られているのもいたたまれない。衣装一式の入っていた箱に同封されたパンフレットの中で凄艶に笑うバニースーツを纏った美青年の姿が目に入って、もっといたたまれなくなる。
    (今より30若ければ、とは思いはしねぇが……)
     海千山千、天下の闇医者ドクターテツは危ない橋を渡りもしたし、死にかけたこともある。人生における大概の苦難と規格外の苦難を大方乗り越え、もう並大抵のことでは動じることも無い。
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    SakuraK_0414

    DOODLE譲→テツで、譲介くんがクエイドに行くぞ!となる話。細かいところはもう色々捏造してます。時間とか季節のこととかめちゃくちゃです。朝倉先生が診療所に来た頃のイメージで、遅れてきた七夕ネタでもあります。
    コンビニ店内でかかってる曲はモー娘。22の「Chu Chu Chu 僕らの未来」、譲介君がこの歌詞僕のことだ…ってなってるのはモー娘。19の「青春Night」です。参考しながら読むと楽しいかもしれない
    青春Nightに僕らの未来「……モー娘の新曲だな」
     コンビニの店内、隣に立つ譲介が、あの和久井譲介が呟いたので黒須一也はぎょっとして彼を見つめた。店内には確かに女子グループアイドルの楽曲が流れているが、こんな難しそうな曲、しかもワンフレーズを聞いただけでそれが分かったのか、と一也はますます目を見開く。
    「……なんだよ」
     じろりと譲介が睨んだ。あのハマー乗りの闇医者そっくりの長い前髪の合間から覗く左目の迫力に気圧されて一也は黙り込む。
    「お前だってモー娘。くらい知ってるだろ、僕らは世代だし、どこ行ったって流れてたし、ラブマシーンとか」
    「あ、いや、その、譲介はアイドルとか興味ない、というか好きじゃないと思ってたから」
    「別に興味はないし好きでもないぞ」
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    SakuraK_0414

    DONE譲テツのなんかポエミーな話です。
    譲テツと芸術と27階時代からアメリカ寛解同居ラブラブ時空の話になりました。
    最初のジャズは You’d Be Nice to Come Home Toです。裸婦画はルネサンス期の任意の裸婦画、文学は遠藤周作「海と毒薬」のイメージです。引き取ったなりの責任として旅行とか連れて行ってたテツセンセの話です。
    ムーサ、あるいは裸のマハ。副題:神の不在と実在について。ムーサ:音楽、韻律の女神。ブルーノート東京にて。

     いつだったかの夏。
     学校から帰ってくるなり来週の診察は譲介、お前も付いて来い、と言われた。家を出るのは夕方からだと聞かされてちょっと安心したものの熱帯夜の続く8月の上旬のこと、内心うんざりしたが拒否権は無かった。この間の期末テストで学年1位だったご褒美だ、と言われたからだ。
     成績トップのご褒美が患者の診察についていく権利って何だよ、と思いはしたがこのドクターTETSUという様々な武勇伝を引っ提げた色々とんでもない身元引受人が医学を教えるという約束を反故にしないでいてくれたのが嬉しかったのもある。
     当日の夕方の移動中ドクターTETSUは僕に患者の状態などを説明してくれたが、内心落ち着かず、どこに連れていかれるのか気になって話はあまり聞けていなかった。これを着ていけ、と上から下まで真新しい服一式を渡されたからだ。サックスブルーと白のボーダーシャツにネイビーの麻のサマージャケットをメインに、靴は通学に使うのとは違うウィングチップの革靴まで差し出されたのだ。普段は政界・財界に影響力を持つ患者の対応をいつもの制服で対応させるこの人がこんな服を持ってくるなんてよっぽどの患者なのか、と身構えてしまった。多分それは横にいる大人にはバレていたのだけれど、彼は指摘して叱るようなことはしなかった。
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