100日後にくっつくいちじろ34日目
偶然バスブロのサイファーに立ち会えたんだが!みんなやっぱB.Bに沸いてたけど俺は前から二郎のファンなんだよな…
最近学生を中心にL.B人気が高まってる気がする…分かるよ、大人相手でも論理的に立ち向かうスタイルとか最高だよな。二郎推しの俺でも分かる
ネットにあがってる二郎のバトル動画ってあれが最古なのかな?俺はその半年前に撮影したサイファーの動画あるんだけど…ネットにアップするの勿体ない気がして嫌なんだよな
今の二郎、明確に昔と違うよな。成長したし明らかにファンも増えたし。俺は昔のもっと荒々しい猪突猛進なリリックも好きだったけど
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「……………………」
本日、山田家にてコタツが解禁となった。
早速、三方向から下半身を突っ込んで寛ぐ三兄弟。三郎はうつ伏せで耳にイヤホンを装着しスマホゲーム中、テレビを見ていた二郎は途中からテーブルに突っ伏して寝落ちしていて、一郎は仰向けになりスマホでSNSを見ていた。
萬屋ヤマダアカウントで今週のキャンセル待ち枠の募集投稿をして、それからプライベート用のアカウントで推しコンテンツの情報を追ったり、好きな海外ラッパーの動画を漁っていた。
そんな中で見つけた、恐らく二郎推しの古参っぽい男ファンのSNSアカウント。プロフィールからして『バスブロヘッズ』『イケブクロ在住』と見て分かる内容で、目についた二郎を応援する呟きが気になりその人物のホームまで見に行ったのだ。
すると呟きの全てではないが大半が二郎に関する内容で(ファン用のアカウントなのでそれはそうなのだが)、この前、二郎が自身のSNSにアップしていたラーメン屋と同じ場所に行き、所謂聖地巡礼をした写真等もあげていた。
弟達が褒められることは純粋に嬉しいし誇らしい。そうだろうそうだろう、うちの弟達は凄いだろう。そんな気持ちもなくはない。しかし、どこかこう、そこはかとなく古参オタクのマウントアピールを感じる。いや分かる。誰しも走り出しの頃に応援しはじめた推しがどんどん人気になっていけば「俺は最初から好きでしたけどね?」という古参アピールをしたくなるものだ。気持ちは大いに分かる。しかしこの『二郎のことならお任せ』みたいな言い方をされるとモヤつくのだ。二郎だけMCネームではなく本名なのも拗らせオタクポイントが高い。
「いや別にファンが自分のアカウントで何を呟こうが勝手じゃねえか……悪い奴じゃねえだろうし……ありがてぇことだし……」
ぶつくさとごくごく小さな声で呟いて、ごろんと態勢を変えてうつ伏せになる。
じ、っとスマホ越しに二郎を眺めていると、ふとピンときた一郎。むくりと起き上がりコタツテーブルの上に乗っていたティッシュのゴミ等を端に寄せ、今日買ってきた蜜柑をいれた木の皿を真ん中に持ってくるとスマホのカメラを起動させた。
カシャ
軽い音がして、イヤホンをしていた三郎が「ん?」と振り返りながらイヤホンを外す。
「一兄、今なにか撮りましたか?」
「おう、これ載せていいか?」
一郎が三郎に見せた画像はコタツの上に蜜柑が乗っている冬っぽい画像。画面の端に、三郎の背中と突っ伏して寝ている二郎の後頭部が若干見切れている。
「いいと思いますよ」
「あ、待て。三郎の背中が若干、肌見えてるわ。駄目だわトリミングするわ」
「ええ……そんな3cmくらい別にいいのに……」
「絶対駄目」
「はあ……」
結局、二郎の頭が若干見えているが9割コタツの画像となった。一郎はそれを添付し、SNSに文章を投稿した。
『山田家コタツ解禁!』
すぐにヘッズ達によって、いいねやら引用投稿やらコメントやらをされて拡散していく。暫くその流れゆく状況を見ていると例の二郎ファンからもいいねがつき、一郎は妙に満足して鼻を鳴らしたのだった。流石に生まれた時から一緒の実の兄にマウントは取れまい。
「一兄の投稿に、蜜柑段ボールで送りたいってコメントが何件もついてますよ」
「はは、そりゃありがてぇが食いきれねえな」
ちなみにこの投稿は影でファン達から『でた、B.Bの弟匂わせ投稿』『弟マウント』『これは弟匂わせ』『この前はL.Bでやってた』などと囁かれているのだった。
2024.11.26