みすてりーってなぁに?『一護。ちょっと来い』
「あ?なんだよ突然」
勉強してる最中に突然聞こえてきた声にノートに書いていた手を止め教科書から顔を上げた。
突然じゃなかった事なんてねえけど精神世界から白から来いなんて言われた事が無かったから少し嬉しいと思いながら、シャーペンを手離し椅子から立ち上がってベッドに横になる。そのまま瞼を閉じて深く深く自分の内に沈んでいく感覚に身を委ね、精神世界に落ちていく。
相変わらずの縦横バラバラのビル群の一つで目覚めれば目に痛いほどの晴天で、その光を反射するような白い死覇装が数歩先に立っていた。
「なんだよ、いきなり来いって。俺勉強してただろ」
呼ばれて嬉しかったとか悟られたくねえから渋々来た体にしたけど、少しツンケンした態度すぎたか?と白を見れば白はどこか深刻そうな顔をしてて、恋人の甘い雰囲気じゃねえなって察した俺は気を引き締める。
「それどころじゃねえ。コレ見ろ」
「コレって……は?」
白が指差す場所、ほぼ白の真下を見れば斬月のおっさんがうつ伏せで倒れていた。
「は?」
「斬月サンが死んだ…誰がやったんだ、此処は俺と斬月サンしかいねえってのに」
「お前と斬月のおっさんしかいねえならお前だろ」
よく見りゃ斬月のおっさんの手のとこにダイイングメッセージみてえに赤い文字でシロって書かれてんだよ。何したんだお前。
「クソッ、斬月サンをこんな風にした犯人を探さねえと」
「いや、だからお前だろ」
「一護、犯人探しするぞ。探してボコボコにしてやる」
「いや、だからお前…」
なんだこの茶番…コイツこんなポンコツだったか?え?それとも本当に犯人いんの?…いや、白だろ。俺の精神世界にホイホイ誰かに入られてたまるか。
「…とりあえず斬月のおっさんはなんでこうなってんだ?こうなる前何してた」
斬月のおっさんのダイイングメッセージにシロって書かれてる時点で犯人なんて分かりきってるけど、なんでこうなったかが分からねえ。
「井上織姫の料理を再現してた」
「それだな??」
普通の料理を作れ。なんでそこをチョイスしちまったかなこの相棒は。井上の料理は特殊な訓練を受けた奴じゃないと食えないんだぞ。
「それを斬月のおっさんに食わせたのか…」
「よく分かったな。斬月サンに食わせて少し目を離してる間にこうなってたんだよ」
不思議そうに首を傾げて斬月のおっさんを見下ろす白に体が震えた。純粋無垢な好奇心で死人が出た。井上の料理にもコイツの好奇心にも罪はねえけど知らない事は罪っていうのはこういう事をいうのか。
「お前は食わなかったのか…?」
「俺が、食う?」
おっさんから視線を俺に向け、白はパチパチと何も知らない子供のような顔で瞬いた。
「何かを食うっていう考えは浮かばなかったな。そうか、作ったら食うのか。俺も食えるんだな」
少し嬉しそうに顔を綻ばせる白に俺も嬉しくなって笑った。けど状況を思い出してスンッと感情が冷めた。
とりあえず白が何かを食べるなら井上の料理の本物は当然、再現したものはやめさせないとな。初めての料理でアレは味覚破壊が起こるかトラウマになる。それと多分気絶してるおっさんをどうやって起こそうか悩んでると白が俺の腕を掴んだ。
「そんな事より犯人探しするぞ。俺が目を離した隙に斬月さんをこんな風にしやがって。絶対捕まえてやる」
「だからお前が犯人だって言ってんだろ」