大人用の椅子に座り床につかない足をぶらぶらさせながら白が置いていった本を開くが白は今日はいつ帰ってくるんだろうとソワソワして何も頭に入らない。元々薄暗い外が真っ暗になっていくのを眺めていると玄関からカチャリという音が聞こえ、俺は椅子からピョンと飛び降り本を卓に置いて玄関に向かった。
「おかえり、しろ」
「おう」
玄関に行くと後ろに撫でつけている髪を片手で崩しながら靴を脱がずに立ってる白に首を傾げた。
いつもならすぐに中に入って長椅子に寝転がるのに。
「一護、出掛けんぞ」
「おでかけ?いいの!?」
「おう」
お出掛けという言葉に、白が誘ってくれた事に俺は嬉しくなって白がお前のだってくれた部屋に走って斬月のおっさんに貰った横掛け巾着を持ち出しそれを肩に掛けて玄関に戻り、待ってくれてる白に焦りながら靴を履いた。俺を待っててくれた白を見上げると白は玄関の扉を開けて一緒に外に出た。
「あう…う…ごめ、なさ」
最初は白の隣を冒険するような気持ちで歩いてたけど段々白の歩く速さについていけなくて小走りになって追いかけてたけど人が多い場所になってくると避けれなくて人の手や足が当たって白も人混みで見えなくなってくる。当たる人に謝りながら必死で追ったけど白が完全に見えなくなってどこに行ったら良いのか分からず俺は立ち止まった。
キョロキョロと周囲を見ても白が見えない。俺が立ち止まった事で当たる人が邪魔だと舌打ちするのが怖くて、目が熱くなって視界が滲む。泣かないように服の裾をギュッと握るけど涙が溢れて流れてしまう。
「う…しろ…」
「鈍臭いなお前」
ひくりと喉が鳴ってせめて声を出さないようにと静かに泣いてるとひんやりとした指が俺の頬を摘んだ。自然と下がっていた顔を上げると滲んだ視界に真っ白な姿が映った。
「しろ?」
「ったく、置いてかれそうなら呼べばいいだろ」
「ごめんなさ…」
裾をぎゅうっと握ると俺の頬をむにむにと摘んでいた白が頬から手を離して裾を掴む俺の手を握った。
「手ぇ握るのと抱き上げんのどっちがいい」
「?」
「あー、手ぇ握んのは身長差で無理だな。抱き上げんぞ」
白の腕が俺の膝裏に回りそのままヒョイっと抱き上げた事で俺の世界は一気に色付いた。
「きれい…」
人がいっぱいで暗い世界からキラキラと煌めく世界。提灯の赤やお店の中から漏れ出る黄色の光。お店を彩る色とりどりの房、楽しそうな人の声。
興奮して白の服をギュッと握りキラキラした世界を見てたけど、でもと俺は白に顔を向ける。
「でも、しろのめがいちばんきれい」
「そりゃドーモ」
機嫌がいいのかクッと笑いながら人混みを進む白にどこに行くんだろうと口を開こうとしたら俺の腹がぐうぅっと盛大に鳴った。
恥ずかしくなってお腹を押さえるけどバッチリ聞こえた白は一瞬驚いた顔をしたがふはっと吹き出し口元を片手で押さえ俺から顔を背け肩を震わせる。
顔が熱い。うぅ…恥ずかしい。
「散歩ついでに晩飯食うか。食いたいものあったら言えよ」
落ち着いたのかはーっと息を吐いた白は綺麗なお店が並ぶ場所から屋台がいっぱい並ぶところに連れて行ってくれた。