ふと何か違和感を感じ、深く落ちていた意識が浮上して目が覚めた。
眠いと訴える身体を無視して薄く瞼を開くといつも最初に目に映るオレンジ色がなく、オレンジ色がないから俺を抱きしめてるぬくもりもなくて…どこか寒さを感じた。外は必要が無ければ外に出るなと言うほどの猛暑なのに寒さを感じるのはおかしいと思うけれど、寒さを感じたものは仕方ない。暑くないようにでも寒すぎない温度に設定されたエアコンのせいでもない。一護が悪い。
いつもは低血圧でゆっくりと起きるまで時間をかけるがいつも起きるまでそばにいる一護がいない事が不満で、頭も身体もフラフラするが無理に起き上がり掛けられたタオルケットを退けてベッドから床に足を下ろす。
「……」
多少後悔した。今すぐベッドに身体を倒したいほど身体がつれぇ…。
「いちご…」
いつもなら呼べば返事するのに、返ってこない。こんだけ帰って来ねえなら、トイレでもねえな。
力の入らない足にグッと無理に力を込めて身体を立たせ、気合いで足を進めて部屋を出る。
扉を開けた瞬間むわっと肌に張り付くような暑い空気に無意識で眉間に皺が寄った。
「朝っぱらから、何やってんだ」
「うぉ!びっくりした!」
後ろからぬっと伸ばされ首に回った腕にビクゥッと身体と心臓が跳ねた。白くひんやりと冷たい腕と全体重掛けてんのかって言いたいほどずっしりと体重を掛けてくる相手に心当たりしかない。
そもそも今日は家に俺と白しかいないから、白なんだけど。
「今日は早起きだな。それも起きてくるなんてどうした?もうちょっと寝てて良いんだぞ?」
肩に頭をグリグリと押し付けてくる白の柔らかな髪を撫でる。
毎朝低血圧と戦ってる白がこんな早い時間に起きてくるのは珍しい。というか、天変地異の前触れかって思うほど今までなかった事だ。
「隣に…お前がいねえから、寝れねえ」
「そ、れは…悪い」
可愛すぎか!!は?もしかして俺がいないから無理に起きてきたのか?え、俺の片割れ可愛すぎね??
突然のデレにキュンを超えてギュンと心臓が高鳴って持っていた物から手を離し、慎重に身体の向きを変えてぐったりする片割れを正面から抱きしめる。
「やる事あるから一緒に寝てやれねえけど、ベッド戻るか?」
「ハァ…さっきから何やってんだ…」
白の辛そうな息遣いに体勢を変えようと白の膝裏に腕を回し姫抱きした。身体を起こしてる事自体辛そうだし、このままベッドに連れて行こう。
「バイト先に誕生日ケーキ作ってくれっていう依頼がきて、それ作ってんだ」
キッチンから出て階段を上りながら白の質問に答えると白の顔が辛さじゃなく嫌そうに歪む。
「そんなもんケーキ屋で買えばいいだろ」
「いや、俺の手作りっていう指名で。一応なんでも屋だから断れなくてよ」
部屋の前に着き、白にドアを開けてくれと頼もうとしたが白が俺の服を控えめに握ってチラッと見上げてきた。
「…俺が嫌だって言っても、断れねえのか?」
「断る」
俺の即答に少し目を見開き、白はふっと柔らかく笑った。普段見れない白の優しさが滲む笑みに俺は抑え切れずに顔を寄せてヒヤリと冷たい唇にキスをした。
依頼失敗!!