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    taihanigate

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    taihanigate

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    義忠×義明
    どっちも河内源氏なのでどっちを受けにするか迷った結果の中身です

    こんな時もあるそれは気付いた時にはそこにある。そして気付いた時には遅すぎるのだ。
    源三郎義忠は溜息をついた。
    自らの中に存在するそれ。果てが無くただ呆然とするしかないような。灰色の空と底の真っ黒な海がどこまでも続いているような。どうすることもできず立ち尽くすしかないような、それ。
    子どもでいられる時期を終え、物事の理や道理のわかる齢になったころから、それはちょくちょく義忠の元へ訪れた。自分ではどうしようもないのだ。ふと唐突に、その感覚に相対していることに気付く。
    誰かに縋りたいような、放っておいてほしいような。誰にも見つからずに消えてしまいたいと思うような、抱きしめてほしいと祈るような。相反する気持ちは自然なまでに共存し、己の中にいつの間にか居座っている。
    一度捕まると逃れるのは中々に面倒だ。食欲が落ち、思考は冷静ではなくなり、目の前の事実より頭の中の理屈や悪い考えを肯定しがちになる。
    深い穴のようなこの感覚に陥った時、対処できる方法は多くはない。何も考えなくてよくなるまで肉体を追い込み頭を真っ白にするか、瞑想でもするか、もしくは寝るか。まとわりつく負の感情から抜け出すには、とにかく強制的に思考を止めるしかない。
    時刻は日を跨ごうとする深夜、鍛練に出るには遅すぎる気もする。どうするか迷っている時だった。

    「ふう、さっぱりしたー」

    従兄弟の源義明が風呂を終えて部屋に戻ってきた。彼が開けた戸から外の空気がふわりと入る。少し重く、湿度が高い。これは雨を連れてくるかもしれない。となれば選択は一つ。

    「なんだ義忠、もう寝るのか」
    「ああ」

    机下から着物を出し、すみやかに中に潜る。義明に短い応えを返し瞼を閉じた。
    眠れるかどうかはわからない。だが眠ることができたなら、今渦巻いているこの気鬱からは逃れられる。
    閉じた瞼がさらに暗闇に覆われ、訝しんだ義忠は目を開けた。
    義明が、覗きこむように覆い被さっている。

    「どうした?」

    近すぎる距離に動じないのは義明がかけがえのない友であると同時に、閨を共にする恋仲でもあるからだ。
    近くに感じる体は風呂から上がりたてのせいか、己の冷えた手足より幾分温かく感じた。
    動物が何かを観察するような不思議な視線が、じっと義忠を見つめてくる。普段賑やかな男が、言葉を発さずひたすらこちらを見る瞳は、少々居心地が悪い。

    「……うん」

    義明はそれだけを呟くと、義忠の身体を掛け布団ごとぎゅうと抱いた。
    苦無を握る皮の厚い手のひらが頭に触れ、がしがしと左右に動く。
    義忠は目を白黒させた。義明が何をしているのか、一体自分が何をされているのかわからない。

    「……なんなんだ?」
    「ん?あれ?ちがう?」
    何をしているのかと問うたつもりだが、逆に義明から問い返され混乱する。
    義明は意味のない行動はしない。周囲から見て不可解に思われる言動や行動は、いつも彼なりの理がある。だがこの状況はさっぱり理解不能だった。
    布団越しの彼の重みと温かさが心地よい。がしりと包んでくる逞しい腕が安心感を連れてくる。
    わけがわからないまま、少し変わった閨の誘いなのかと、義忠は顔を近づけ義明の唇を舐めた。
    すぐに応えがあり、目を開けたまま舌を交わす。官能というよりは、じゃれ合いのようなそれ。
    交わすくすぐったさと吐息と熱が、眠ろうとしていた意志をゆるやかに侵食し、心地良い感覚をじんわり手繰り寄せる。
    やがて義明から唇を塞がれ、義忠は瞼を閉じた。
    やや強い力でがしがしと頭を撫でながら、義明はもう片方の手で額や頬を包み、唇だけでなく顔中に唇を押し当て、舌で舐め、音を立てて、接吻を繰り返す。それは閨でのやり取りというより、まるで親猫が仔猫を毛づくろいでもするかのようで。
    繰り返し繰り返し義明に口づけられて、段々と身体から力が抜けていく。
    散々唇で義忠に触れた後、義明はするりと着物の中へと入ってきた。義忠が舌を差し出せば、咬みつくように唇を奪われ、深い口吸いへとなだれ込む。
    義忠は愛しい男へ腕を伸ばす。しかし、求めた手はがしりと掴まれ布団に縫い付けられた。

    「駄目」

    短く一言、義明が告げる。
    触れるなという事だろうか、義明が触りたいという事だろうか。今夜は本当にわけがわからない。
    義忠は義明の要望を大人しく聞き入れ、夜着を剥ぎ、身体中を這い回る手にゆだねた。
    普段は渇望と快楽に流される男から、もっともっとと強請られるままに触れてしまうため、こんなにも義明が主導で触れてくることは初めてのような気がする。
    与えられる手は力強く、艶めかしさはない。犬が飼い主への愛を表すように甘く噛んだり舐めるだけ。それらは不思議な安堵を運んできた。
    甘えたいような気持ちが、孤独でありたい心を凌駕していく。
    むず痒い快楽に突き動かされ、義忠は思わず彼の名を口にした。

    「……義明…」

    途端、義明に抱きしめられる。そうして再び額に、顔に、頭のてっぺんにと唇が降ってきた。
    ほうとため息をこぼせば、耳たぶに甘く歯を立てられ、ゆるりとしゃぶられる。吐息と共に届く、彼の声。

    「いい子だねえ、義忠」
    その呟きで義忠は理解した。どうも自分は彼に甘やかされているらしい。
    お互いに褌しか纏っていない状況に陥ってようやく気づいた義忠だが全ては遅かった。するりと布をずらして兆した部分を露わにされ、彼の咥内に招かれる。

    「っ、あぁ……、」

    義明の口淫は、昂ぶった熱を追いつめたり、享楽を与えるようなものではなかった。
    彼のぬくもりに包まれて、ただ気持ちがいい。実直で素直な愛撫が昼間の彼を思い起こさせ、ひどくいけない事をしているような心地になる。
    気持ちがいいだけの口技に油断していた義忠だが、喰らわれた熱は知らず知らずのうちに硬さを増していく。感じ入る場所を丁度よくすぼめられた彼の唇が、よく笑い普段から明るさを絶やさない口元が、何度も何度も行き来して、ぴちゃりと淫靡な水音が部屋に響く度、呼吸は荒くなっていく。
    不意に包まれていた口内の中、入ってくるものがある。そそり立つ熱に平行するように指が添えられ、義明は指ごと口に含むと唾液を使って湿らせた。
    虚ろになってきた頭の片隅で何をするのかと伺っていれば、濡れた指先が菊門と睾丸の間の小さな道を行き来し始めた。ぬるぬると滑る指先から、未知の感覚が生じて背筋を泡立たせる。
    普段触れられることのない柔らかな場所。確か蟻の門渡りというのだったか。熱の渦巻く身体に引きずられまいと思考を巡らせるが、努力は実を結ばなかった。
    竿ははぐりと彼に喰らわれたまま。ともすれば尻穴に触れんばかりに行き来する指に翻弄され、愛撫され、形容しがたい刺激が、快楽が身体を襲う。義忠は両手で口を覆った。そうしないととんでもない声が漏れそうだったからだ。
    ひたむきな義明の口淫と手淫を身に受けながら、義忠の中に一抹の不安が浮かぶ。
    数えきれないほど枕を共にしてきた相手だが、ここまで一方的に翻弄されるのは無かった経験だ。
    今や義忠の昂りは完全に天を仰ぎ、足の付け根は震えがくるほど。義明の愛撫は未だに止まない。もしやこのまま喰われてしまうのだろうか。溶ける身体と頭にそんな考えがちらちらと過ぎる。
    だが、施されるだけのぬるま湯のような悦楽に、不安と焦りは段々となるようになれ、といった気持ちに変わっていった。
    義明がいいと言うので、毎回義忠が男役をして彼と交わっているが、たまには逆も悪くないのかもしれない。
    義忠の逸物は義明の口の中で、いまやはちきれんばかりに存在を主張する。義明は散々舐めて、啜って、慈しんだ後、ようやく義忠を解放した。
    のしりと覆いかぶさる影が、義忠の視界を遮る。
    痛いほど突き刺さる視線に義明は息を飲んだ。爛々と輝く強い瞳の色はただひたすら自分だけに向けられ、犬のような短い呼吸は、触れられてもいない義明が義忠を翻弄していただけで欲情している証でもあった。
    これは覚悟を決めるしかない。私はこの男に喰われるのだ。準備などしていないが、うまくいくだろうか。不安に思いながらも義忠は腹をくくった。
    しかし、次に襲ったのは別の感覚。きっさきに押し付けられる義明の双丘、ぬるりと湿り気を帯びた秘所が、鋭敏な先端をこすりつけるように行き来し、思わず吐息がこぼれ出る。

    「ぅ、は、……」
    「ぁ……」
    上から聴こえた声は随分と蕩けていて、快楽に堕ちているのは自分だけではないと知る。
    ゆるゆると幾度かなじませるように腰が揺れた後、義明の手が動いた。利き手で交わる場所を割り開き、もう片方の手は義忠の昂りを固定する。
    よく知る蜜壺がゆっくりと、重みを伴って降りてきた。

    「あぁー……、っ」
    「ぁ、ぁ」

    艶かしい嬌声に思わず溢れた声が被る。
    そこは初めから湿り気を帯び、義忠を容易く飲み込んでいった。
    定まらない思考が浮かんでは消える。寝るつもりだったのに、交わる気などなかったのに、何故こんなことになったのか。なぜ義明の身体は支度がしてあるのか。なぜ自分は彼に逆らえないのか。
    浮かんでは消える疑問は、生まれる快楽が薙ぎ払っていく。強烈な心地よさに頭がどうにかなりそうだ。
    ゆるゆると降りて来た愛しい男は、最後まで義忠を飲み込むとゆっくりと呼吸を繰り返した。そうしてにやりと笑ってみせる。

    「義忠、私だけ、みていろ」

    半ば命令にも近い、熱に浮かされた上擦った声。それが耳の奥まで届いて、沈む。
    義明が腰を動かし、ずるりと吐き出し、再び飲み込む。お互いの呼吸を奪い合ってのぼりつめるような激しいものではなく、ただひたすら生きている事の、熱と、存在を伝えるような動きだった。
    あれほど義忠を苛んでいた底なし沼の淵に佇むような感覚が、義明のもたらす熱によって蒸発する。
    時折喰い締めるようにびくりと唸る締め付けが、彼の快楽を義忠に伝える。義忠に跨る義明の雄の印は逞しく上を向いてそそり立ち、淫靡な踊りを舞う身体は普段の陽の光や土の匂いを纏うそれとは違い、月明かりの仄かな光の元で酷くいやらしく義忠の目に映った。
    まるで自分の方が包まれ、抱かれているようだ。
    義明の命令通り、義忠は義明だけを見て、義明だけに集中した。
    さきほど湧き上がった多くの問いが、答えを伴い、すぅと自分の中へ落ちる。義明は聡い。空気は読まないが鼻が利いて鋭い。義忠でも気づくのが遅れた何かを見通して、おそらくこの行為に至っている。
    息が途切れて、頭がぼやける。快楽に引き摺られ、目の前のことしか考えられない。
    交わった部分からたまっていく悦楽に、義忠は思わず義明ごと腰を突き上げた。

    「ぁあっ!」

    叫びと共に義明の視線が義忠から外れる。
    義忠は義明の腰を掴み、中を抉るようにして腰を回した。
    振動に義明は前のめりになり布団に片手をつく。もう片方の手は自らの隆起に添え、義忠が腰を回すタイミングに合わせて上下に扱きはじめた。

    「あ、あ、あ!気持ぃ、っあ、んぁっ、」

    義明の動きが義忠のためでなく、己の快感を追うものに切り替わる。
    義忠もそれに合わせてがつがつと身体を揺らしながら、終いには腰が自身の制御を離れ、痙攣のように義明を穿った。
    頭が白色で埋め尽くされ、叩きつけるようにして果てに行き着く。愛しい男の身体の中に達した証が迸った。

    「!っ、……っぁ、」
    「はぁ、はぁ……ぁー」

    半ば陶酔したように義忠の熱を受けた義明は、肩で息をつく義忠をひたりと見据えて、口端を上に持ち上げた。
    後ろに銜えたままの義忠を貪るように再び腰を揺らし、添えた手と共に動き出す。後を追うようにして義明も到達し、義忠の肌に自身の熱をぶちまけた。
    放った残滓で汚れるのも構わず、ゆっくりと倒れ込んできた身体を受け止める。
    はぁはぁと互いに息を切らせ、忙しなく血を巡らせる鼓動が落ち着くのを待つ。しばらくそうしていると、義明が顔を上げた。
    義忠の顔を、やはり犬のように舐め、口づける。
    愛おしさとくすぐったさから義忠は彼の唇が来そうな方向へ顔を向けて、その口吸いを受け止めた。
    ぬるぬると舌を絡め、吸い、熱い咥内を味わっている内、彼の中に埋めたままのそれが再び熱を取り戻しそうになり、あわてて引き抜く。
    ほっと息をつけば、上からまじまじと覗き込む視線。義明が再び瞳をまっすぐ覗き込んでくる。
    頭の中まで見透かされそうなひたむきな視線を、義忠も同じように見返した。
    一体この男は何を見ているのか。彼の目には何が映っているのか。それを知ることはできないだろうかと考えながら視線を返せば、義明が頷いた。

    「ん、大丈夫そうだな」
    「何がだ」
    「気付いていないのか。まぁこんな時もあるということだ」

    義明は義忠の戸惑いをよそに勝手になにやら納得している。
    心当たりのある義忠はそれ以上問いただすことができず黙り込んだ。代わりに口にしたのは、問いでも礼でもない何気ない軽口で。

    「正直、喰われるかと、思った」
    「なんだ、喰っていいのか」
    「いや、まぁ……」

    藪蛇だったと言い淀めば、からりと笑って義明が言う。

    「その気になったらいつでも言うといい。義忠なら喜んで喰ってやる」

    義明は手ぬぐいで義忠の身体の汚れを拭い、ひょいと放り投げる。自分の腕を枕にするよう義忠の頭の下に差し込むと、そのまま抱き寄せた。
    面映ゆい心地に浸りながら、義忠は背中に廻した手で汗ばんだ肌を確かめ、自分を護るように抱きしめる愛しい男の存在を確認する。
    あれだけ心に巣食っていた影のようなものが、浮かび上がることなどできなくなるのではないかと思う程の気鬱が、もうすっかりとどこかへいってしまった。
    ああ、確かにこんな時もある。
    義明の零した言葉を噛みしめながら、義忠は彼の腕の中にいる今この瞬間に、ただ安堵のため息をついた。
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