野良猫と引っ掻き傷元々気が合わなかったんだろうとは思う。
元になった奴が必要不可欠な奴と、元になった奴が大嫌いだった奴は波長があまりにも合いやしない。というか合うわけが無い。
正直、これは自分の性格の悪さも相まって出来ている感情だ。
「なんでそんなに構うんだ。ベースになった奴に。」と言ったら喧嘩一直線なのは流石に結末が見えている。
だから、あまり“アイツ”とは話したくないんだ。
♢♢♢
夜明け頃、偶然目が覚めた。
今日は珍しく全員寝てるな、と呑気な事を思っていたら、一つ毛布から抜け出したような跡があった。
(ここは……………あぁ、アイツか。)
アイツ_グリーゼは正直何を考えているのか分からない。
いや、分かる分からない以前に自分が理解しようとしないのがいけないのは重々承知ではあるのだが。
仕方無い。と思いつつ自分も布団から出る。コイツは暫く熟睡だろうし。
「おい。」
バルコニーにいるグリーゼに話しかけた。
グリーゼは一瞬驚いた様な仕草を見せたが、あたしということが分かると態度が変わった。
「あぁ、ルメリか。おはようルメリ。」
「おはよう。と言うか寝たか?お前。」
「うん、まぁ元々少し早い時間に寝たから。」
「……そうか。」
………………続かない。
駄目だ。どう頑張っても相性が悪い奴との会話のキャッチボールは壊滅的なんだ。勘弁してくれ。
これでそれじゃ、と一言言ったらあまりにも非人道的な気もする。気まづさで息をするのも嫌になってきた。
「……ねぇ。」
グリーゼがこちらに向かって少し悲しそうな顔で近づいてきた。
「ねぇルメリ、私達って何時消えるのかな。」
“消える”、自分達に深く関わっている言葉だ。
元々いない存在だった自分達は、時間の問題で消えると推測されている。後何日か、数ヶ月後か、数時間後かもしれない。しかしそれを知ったとて、迫り来る実質的な死には抗えはしない。知らない方がマシだ。
「……さぁな、お前が消えないと望むなら意外と長く此処にいられるんじゃないか。」
「……そっか。」
またグリーゼが悲しそうな顔をする。
やっぱり合わない。いなかった存在がいる事自体異常中の異常なのに、何故コイツはこんなに悲しんでるんだ?神の循環に従うことの何が悪いのか、自分には分かりもしなかった。
「もう少し寝ようかな。ルメリ、おやすみ。」
「……あぁ。」
やっぱり「解りあえない」