かまって「なぁ」
「ん?」
「何時までそれかかるんだ?」
それとはハックの修理。
そして今日は2人揃ってのオフ。
なのに恋人はずーっと俺様を放置して機械とデート中だ。
「…あと少し」
「そう言って2時間は放置されているかわいそうな恋人がここにいますが?」
「2時間は言いすぎだろ」
「なんか言ったか?」
「…なんでもない」
はじめはコーヒーいれたり、静かに作業を眺めたりしていたが時間が経つにつれ我慢ができなくなりついに声をかけた。
そして今に至る。
ずっと一緒にいたい!だなんて年はもう過ぎた。けれど今日は本当に久々に2人揃っての休みだったのだ。
少しくらいわがまま言ってもバチは当たらないはず。
「なぁー、クリプちゃーん」
「待てだ、ウィット。本当にあと少しだから」
だと言うのに此奴は全く聞き入れてくれねぇ。
むぅと唇を尖らせて睨みつけても何にも響いてねぇ。
「わーったよ!そんなにその機械が大事なら今日はもうずっとそうしとけ!ばーか!」
「おいウィット!」
こどもみたいな捨て台詞を残してクリプトの部屋を出る。
向かった先は寝室。
シーツに包まればあいつの香りがして悔しいけど喜んでいる自分がいる。
ついでにクリプトの枕にぎゅっと抱きついてふて寝を決めこむ。
あいつの体温が恋しい。
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頭を撫でられる感触。
「か、あさん?」
そっと離れていく掌。
「行かないで、母さん!」
はっと目を開いた先にはクリプトがいて、俺は再びシーツに包まる。
するとシーツごと力強く抱きしめられる。
求めていた体温が布切れ越しに伝わる。
くそっ泣いてなんかいねぇ。
安心してなんか…
「ウィット」
「…」
拗ねて出ていった手前顔が向けられないなんて、我ながら女々しくて笑えた。
「ウィット、こっち向いてくれ」
なのに、そんな優しい声色で俺を呼ぶから、俺を呼ぶその人が大好きだから。
「泣くなウィット。俺がいる」
「ないてねー。ほったらかしにしたくせに」
「悪かった。お前に甘えていた」
濡れた頬を拭ってくれる掌が優しい。
向けられる表情は愛情いっぱいで。
そうだ、こいつはこんなにも優しいんだ。
「…わがまま言ってごめん」
すると顔をふるふると横に振るクリプト。
「こんなの、わがままに入らない。いいからほら、そんなもん抱えてないで、来い」
抱えていたクリプトの枕はどこかへ放り投げられて空いた空間を埋めるように目の前の存在に抱きついた。
あぁ、なんだかやっと帰ってこれたみたい。
不思議と息もしやすい気がする。
重症だな、俺。
「今日はなにをしたかったんだ?」
優しく撫でられる髪が心地よい。
「なんでもいい。お前がいればもうそれでいい」
ぐっと唸る声が頭上から聞こえてきてくすりと笑う。
「あんまりかわいいこと言うな」
痛くない力で頬をつねられる。
そのままだらしない顔で笑う俺に、クリプトもつられて笑う。
この時間が欲しかったんだ。
「テジュン」
「っなんだ?」
「お前が欲しい」
「喜んで」
今度こそ2人、甘い時間を。